トリゴネリン

トリゴネリンとは

トリゴネリン (英: trigonelline) とは、無色の固体です。

IUPAC名は、1-メチルピリジン-1-イウム-3-カルボキシラート (英: 1-methylpyridin-1-ium-3-carboxylate) 、また別名としてカフェアリン (英: Caffearine) やN-メチルニコチン酸 (英: N-Methylnicotinate) とも呼ばれます。

化学式C7H7NO2で表され、分子量137.14の窒素原子を含んだ有機化合物であるアルカロイドの1種です。なお、CAS登録番号は535-83-1です。

トリゴネリンの使用用途

トリゴネリンは、抗糖尿病効果や抗酸化効果、抗炎症効果および神経保護効果など、さまざまな効果を持ちます。トリゴネリンを主成分の1つに持つ植物のフェヌグリークは、中国の伝統的なハーブやインドの香辛料として知られ、古くから糖尿病や咳、母乳分泌の増加、抗炎症作用などに使われていました。

現在では、認知症やアルツハイマーの改善効果が高い物質として注目されています。また、血管内で一酸化窒素を発生させることで、血管を収縮や拡張を促進してしなやかな血管を維持することが可能です。動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞を予防する物質としても、注目されています。

トリゴネンの性質

トリゴネリンは熱に弱く、200℃を超えると分解してしまいます。トリゴネリンの機能を維持するためには、200℃以下で加熱するか、加熱前にトリゴネリンを抽出して、加熱後に戻す作業が必要です。

加熱によりトリゴネリンは、ニコチン酸に変化します。この物質はタバコに含まれるニコチンとは種類が異なり、脳のエネルギー代謝を促進し、コレステロールを低減する効果があります。

ニコチン酸はビタミンB3の1種で、糖質や脂質がエネルギーに代わるのをサポートします。なお、トリゴネンは一分子内にプラスとマイナスの両荷電を持つ、ベタイン構造を有します。

一水和物の融点は218°Cで融解と共に分解します。常温で固体です。水に非常によく溶け、アルコールにも可溶、エーテル、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶剤にはほとんど溶けません。

トリゴネリンのその他情報

1. トリゴネリンの製造法

トリゴネリンは、オシロイバナの種子やコーヒー豆に多く含まれています。マメ科植物のフェヌグリークから最初に単離されました。

植物体内では、ニコチン酸-N-メチルトランスフェラーゼ (EC番号 2.1.1.7) により、ニコチン酸 (英: nicotinic acid) から生合成されます。工業的には、ニコチン酸を酸化銀存在下、ヨウ化メチルと共に加熱することで合成できます。

また、トリゴネリンは、水やアルコール類の溶媒から再結晶によって精製することが可能です。

2. 取り扱い及び保管上の注意

トリゴネリンは、加熱して分解すると有害な窒素酸化物 (NOx) の蒸気を発生させます。蒸気を直接吸い込まないよう、局所排気装置であるドラフトチャンバー内で使用することが大切です。火災が生じた場合は、水噴霧、ドライケミカル、フォーム、二酸化炭素の消火器を使用します。

皮膚刺激性があるため、皮膚に付着しないよう注意が必要です。使用時は必ず白衣や作業着などの保護衣や保護手袋を着用します。保護衣の袖は決して捲らず、皮膚が暴露しないようにします。万が一皮膚に付着した場合は、石けんと大量の水で洗い流すことが重要です。痛みなどの症状が続く場合は、医師の診療を受けることをおすすめします。

また、眼に対して強い刺激性を持ちます。重篤な損傷を起こす可能性があるので、使用時は必ず保護メガネまたはゴーグルの着用が重要です。万が一眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗います。コンタクトを着用している場合で簡単に外せるときは外し、しっかり洗浄します。

なお、保管する際は容器を密閉し、直射日光を避け、涼しく換気の良い場所で保管します。4℃程度での保管が望ましいです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/62/10/62_KJ00001708480/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nogeikagaku1924/61/2/61_2_183/_pdf/-char/ja
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Trigonelline#section=Collision-Cross-Section
https://www.glpbio.com/quotepdf/sds.php?sku=GN10289

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