オキサゾールとは
図1. オキサゾールの基本情報
オキサゾール (Oxazole) とは、複素環式芳香族化合物のアミンの一種に分類され、化学式C3H3NOの有機化合物です。
CAS登録番号は、288-42-6です。分子量は69.06、融点-87〜 -84℃、沸点69-70℃であり、常温では無色からうすい黄色の液体です。密度は1.05 g/mL、共役酸のpKaは0.8となっています。
引火点が19℃と低いことから、引火性の高い液体や蒸気です。そのため、消防法では「危険物第四類・第一石油類・危険等級Ⅱ」に指定されており、労働安全衛生法では「危険物・引火性の物」とされます。また、危険物の規制に関する規則でも「引火性液体類」、航空法では「引火性液体」という指定がされている物質です。
オキサゾールの使用用途
オキサゾールは、耐熱性高強度ポリマーの原料として有益であることから多方面での活用が図られている物質です。用途の一例には、建築養生シートなどがあり、特に耐熱耐圧が要求される「産業用シート材」への利用があります。
その他、エレクトロニクス分野では、耐熱性に優れていることから半導体チップに使われている絶縁膜や「電子デバイス用ヒートシンク」に使用される接着ポリマーフィルムなどが挙げられます。
オキサゾールの性質
図2. オキサゾールの反応の例
オキサゾールは芳香族化合物の一種です。ただし、チアゾールよりは芳香族性が少ないとされます。イミダゾールの窒素が酸素に置換した異性体ですが、オキサゾールは弱い塩基性を示します。
オキサゾールの共役酸のpKaは0.8であり、イミダゾールの共役酸のpKaが約7であることと対照的です。反応性の上では、オキサゾールのC2位を脱プロトン化すると、開環したイソニトリルが生成することがあるとされます。また、オキサゾールのジエン構造に対してディールス・アルダー反応が進行すると、酸素を失ってピリジン体が生成します。
4-アシルオキサゾールは、熱による転位反応であるコンフォースによってアシル残基がC5位に転位することが知られている化合物です。また、オキサゾール類は種々の酸化反応を起こすことが知られている化合物群です。例えば、4,5-ジフェニルオキサゾールに3当量の硝酸セリウムアンモニウム (CAN) を加えることにより、ホルムアミドと安息香酸が生成することが報告されています。
なお、この反応では平衡半反応によりオキサゾール1当量あたり3当量の水が消費され、4当量のプロトン・4当量の電子から4価のセリウムが誘導されます。
オキサゾールの種類
オキサゾールは主に研究開発用の試薬製品として販売されています。容量の種類は1g , 10gと少量での提供となっており、高価な化合物です。
大量に入手したい場合は、別途メーカーへの個別見積もりが必要になります。室温で取り扱われることも、冷蔵で保管されることもある試薬です。
また、非ハロゲン化ヘテロ環ビルディングブロックとしてオキサゾールの類縁体は、試薬として多くのものが販売されています。具体例としては、2,4,5-トリメチルオキサゾール、ベンゾオキサゾールやその誘導体を挙げることができます。
オキサゾールのその他情報
オキサゾールの合成
図3. オキサゾールの合成の例
オキサゾールの合成法には種々の報告があります。古典的な合成方法として、以下が挙げられます。
- 2-アシルアミノケトンの脱水反応によるロビンソン・ガブリエル合成反応
- シアノヒドリンとアルデヒドを原料とするフィッシャーのオキサゾール合成反応
- α-ハロケトンとホルムアルデヒドより合成するブレデレク反応等
また、オキサゾールの誘導体の合成方法としては、プロパルギルアミドの環化異性化反応や、ベンゾイルクロリドとイソニトリルの反応によって合成する方法などが報告されています。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/82558-50-7.html