アリルアミン

アリルアミンとは

アリルアミンの基本情報

図1. アリルアミンの基本情報

アリルアミン (Allylamine) とは、化学式C3H7N、示性式CH2=CHCH2NH2で表される有機化合物です。

IUPAC命名法による名称は、プロパ-2-エン-1-アミン、及び3-アミノ-1-プロペンであり、その他の名称には、3-アミノプロペン、3-アミノプロピレン、モノアリルアミン、2-プロペンアミン、2-プロペン-1-アミンなどがあります。CAS登録番号は107-11-9です。

分子量57.09、融点-88℃、沸点55℃であり、常温では無色からうすい黄色の澄明な液体です。密度は0.76g/mLであり、強い刺激臭を呈します。水・エタノールアセトンに極めて溶けやすいです。

引火点が-28℃と非常に低いため、引火性の高い液体や蒸気であることも特徴です。消防法では「危険物第四類・第一石油類・危険等級Ⅱ・水溶性」に指定されています。

アリルアミンの使用用途

アリルアミンは、農薬の原料、高分子化合物の改質剤や、医薬中間体として使用されています。また、その誘導体の中にはアリルアミン系抗真菌剤として使用されているものもあります。

例えば、テルビナフィン (商品名ラミシール) は、抗真菌薬として、皮膚糸状菌、カンジダ属、スポロトリックス属、ホンセカエア属による皮膚真菌症などに適応がある薬剤です。また、誘導体の一種であるジアリルアミンは工業的合成の上で重要な中間体として利用されています。

アリルアミンの性質

アリルアミンに含まれる2-プロペニル基 (-CH2CH=CH2) をアリル基 (allyl group) と呼び、二重結合に隣接する炭素の位置をアリル位と呼びます。芳香族基を示す「aryl group」はアリール基と字訳されますが、異なる構造であるため注意が必要です。

アリル基はアルコールやアミンの保護基として用いられ、パラジウム触媒などで脱保護されます。アリルアミンにおいても、パラジウムを用いることによりアリル基を除去することが可能です。

アリル位におけるカルボカチオン、カルボアニオンやラジカルは、共鳴により安定化される性質があります。そのため、アリルアミンはポリマー化しやすく、ホモポリマー (ポリアリルアミン) またはコポリマーを形成します。このポリマーは、逆浸透膜などに使用されている物質です。

アリルアミンの種類

市販されているアリルアミン関連物質の例

図2. 市販されているアリルアミン関連物質の例

製品として販売されているアリルアミンには、主に研究開発用試薬製品や、工業用薬品などの種類があります。試薬製品の容量には25ml , 50mL , 500mL , 5g , 25gなどの種類があります。常温で取り扱い可能な試薬製品です。

また、関連する化合物では、アリルアミン塩酸塩やポリ(アリルアミン)溶液なども試薬製品として販売されています。ジアリルアミンやN-アリルメチルアミンなど、各種誘導体もまた有機合成用試薬製品として多くの化合物が販売されています。

アリルアミンのその他情報

1. アリルアミンの合成

アリルアミンの合成

図3. アリルアミンの合成

アリルアミン (モノアリルアミン) 、ジアリルアミン、トリアリルアミンの混合物は、塩化アリルをアンモニア水もしくはヘキサアミンで処理することで得られます。また、純粋なアリルアミンはアリルイソチオシアネートの加水分解によって合成可能です。

2. アリルアミンの化学反応

アリルアミンは、亜硝酸と反応してアリルアルコールを生じます。また、ヨウ化メチルによって窒素原子のメチル化が可能です (N-アリルメチルアミンの生成) 。酸性溶液中で臭素と反応するとアルケンへの付加反応が起こり、2,3-ジブロモプロピルアミンを生じます。

3. アリルアミンの法規制情報

アリルアミンは、毒物及び劇物取締法において毒物に指定されている物質です。労働安全衛生法では、「危険物・引火性の物」、危険物の規制に関する規則では「毒物類・毒物」に指定されます。

その他、航空法では「輸送禁止」とされており、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) では「第1種指定化学物質・第1種-No. 26」と位置づけられている化合物です。法令を遵守した取り扱いが必要とされています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-1176JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_107-11-9.html

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