アリルアミン

アリルアミンとは

アリルアミンの基本情報

アリルアミンとは、化学式C3H7Nで表される有機化合物です。

国際純正・応用化学連合 (IUPAC) の命名法による名称は、プロパ-2-エン-1-アミンおよび3-アミノ-1-プロペンであり、CAS登録番号は107-11-9です。アリルアミンは常温で無色〜薄い黄色の液体であり、強い刺激臭があります。水・エタノールアセトンに極めて溶けやすい点が特徴です。

高い反応性を持つアリルアミンは、農薬原料や医薬品中間体として重要な役割を果たしています。

アリルアミンの使用用途

アリルアミンやその誘導体は、以下のような用途に使用されています。

1. 農薬

農薬はアリルアミンの使用用途の1つです。農薬原料に求められる性質の1つとして、有効成分の徐放性が挙げられます。作物の成長に合わせて徐々に有効成分が溶け出せば、長期間持続的に害虫や雑草の発生を防げるためです。アリルアミンはポリマー化しやすい性質を持ち、農薬への徐放性の付与に寄与します。

2. 医薬品中間体

アリルアミンの主な用途の1つが医薬品の中間体です。医薬品は原料から複数のプロセスを経て製造されており、中間体は原料から最終的な薬の間で作られる物質のことです。中間体は自身の構造を変換させて薬になるため、反応性が高いことが求められます。

アリルアミンは反応性が高く、自身の官能基を交換させやすいため、医薬品中間体として適した化合物です。アリルアミンの誘導体のなかには、抗真菌薬として販売されている薬剤があります。

3. 高分子化合物の改質材・分散剤

アリルアミンは反応性とポリマー化容易性が高く、塗料の改質材や顔料分散剤としても使用されています。アリルアミンはさまざまな官能基を持たせられ、安定して粒子を分散できる機能付与が可能です。塗料の前処理材にも使用されており、基材と塗料の密着性を向上できます。

アリルアミンの性質

アリルアミンは、以下のような農薬原料や医薬品中間体に適した性質を有しています。

1. 高反応性

アリルアミンの主な性質の1つは、高い反応性を有することです。アリルアミンは、反応性の高いアリル基(CH2=CH-CH2-)とアミノ基(-NH2)の両方を持つ化合物です。どちらの官能基も多様な化学反応に対応でき、官能基を交換させられるため、農薬や医薬品の合成に役立ちます。

2. ポリマー化のしやすさ

ポリマー化しやすい点もアリルアミンの性質の1つです。アリルアミンは反応性が高いことに加え、高分子化に必要なラジカルが安定しやすい構造です。ラジカルが安定しているため、アリルアミンの重合反応が容易に進行します。

3. 抗菌作用

アリルアミンの誘導体であるテルビナフィン塩酸塩は、抗真菌薬として使用されています。テルビナフィン塩酸塩は真菌の細胞膜に作用し、菌の増殖を抑制する薬剤です。皮膚糸状菌やカンジダ属、スポロトリックス属のような皮膚真菌症などに適応があります。

アリルアミンの構造

アリルアミンは化学式C3H7N (分子量57.09) 、示性式CH2=CHCH2NH2の化合物であり、アリル基とアミノ基を持った構造です。

アリル基は、別名2-プロペニル基とも呼ばれており、炭素二重結合に隣接する炭素の位置をアリル位といいます。アリル位で発生したラジカルは安定化しやすく、アリルアミンの重合反応が進行しやすい性質と関連しています。

アリルアミンのその他情報

1. アリルアミンの化学反応

アリルアミンは、亜硝酸と反応してアリルアルコールを生じ、ヨウ化メチルによって窒素原子のメチル化が可能です (N-アリルメチルアミンの生成) 。酸性溶液中で臭素と反応すると、アリルアミンのアルケンへの付加反応が起こり、2,3-ジブロモプロピルアミンが生じます。

2. アリルアミンの法規制情報

アリルアミンは、毒物及び劇物取締法において毒物に指定されている物質です。毒物以外でも、消防法で「危険物第四類・第一石油類・危険等級Ⅱ・水溶性」、航空法で「輸送禁止」とされています。化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) では「第1種指定化学物質・第1種-No. 26」と位置づけられており、法令を遵守した取り扱いが必要です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-1176JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_107-11-9.html

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