酸化ガリウムとは
酸化ガリウムとは、白色の粉末の無機化合物です。
酸化ガリウムの化学式はGa2O3、分子量は187.44で、CAS登録番号は12024-21-4です。推奨保管条件下では化学的に安定した物資とされ、国内の消防法をはじめとした法規でも特に指定はありません。
推奨保管条件としては、「ガラス」を安全な容器包装材料とし、「直射日光を避け、換気のよいなるべく涼しい場所に密閉して保管する」とされています。
酸化ガリウムの使用用途
酸化ガリウムは、これまでの照明器具に使われていた蛍光灯や電球にとって代わりつつあるLED (英: Light-Emitting Diode: 発光ダイオード) に使用する基板の原料以外にも、緑色の蛍光体の原料として用いられています。
そのほか、酸化ガリウムを使ったパワー半導体素子 (電力変換用スイッチング素子など) は、従来、使用されていた炭化ケイ素からなる半導体チップと比較して、導通時の抵抗が小さいことから小型化かつ低損失化が図れると期待されています。
酸化ガリウムの性質
酸化ガリウムは塩酸などの多くの酸に溶けますが、水にはほとんど溶けません。
酸化ガリウム (III) は、α、β、γ、δ、εの5つの異なる形を取っています。その中でもβ-酸化ガリウム (III) の融点は1740℃であり、β-酸化ガリウム (III) が最も安定した形です。
酸化ガリウムの構造
酸化ガリウム (III) の中で、最も安定しているβ-酸化ガリウム (III) は、歪んだ立方最密充填構造の配列を取っており、歪んだ四面体構造や八面体構造を持っています。Ga-Oの結合距離は、それぞれ1.83Åと2.00Åです。β-酸化ガリウム(III)の安定性は、このような構造の歪みに起因しています。
酸化ガリウムのその他情報
1. 酸化ガリウムの合成法
酸化ガリウム (III) は酸性や塩基性のガリウム塩溶液を中和することで、沈殿として得られます。空気中で金属ガリウムを加熱したり、硝酸ガリウム(III)を200-250℃で熱分解しても生成します。
β-Ga2O3は酢酸ガリウム (III) 、硝酸ガリウム (III) 、シュウ酸ガリウム (III) 、その他ガリウム (III) の有機誘導体を、1,000℃で加熱して得ることが可能です。
2. 酸化ガリウムのその他の結晶構造
α-Ga2O3はβ-Ga2O3を、65kbar、1,100℃で1時間加熱して得られます。α-Ga2O3の水和物は、500℃で水酸化ガリウムを分解することにより生成します。
γ-Ga2O3は水酸化ガリウムのゲルを、400から500 ℃で急速に加熱すると得ることが可能です。δ-Ga2O3は硝酸ガリウム(III)を、250℃で加熱して得られます。
ε-Ga2O3はδ-Ga2O3を、30分間550℃で加熱することで生成します。
3. 酸化ガリウムの触媒
β-酸化ガリウム(III)は、触媒の製造においても非常に重要です。例えば、Ga2O3-Al2O3触媒の合成に必要です。
Ga2O3-Al2O3触媒は、硝酸ガリウム (III) の水溶液と酸化アルミニウムを反応させて、393Kで蒸発乾固させた後に、空気中4時間823Kで、化合物を熱分解することによって合成されています。
4. 酸化ガリウムのナノ構造
酸化ガリウム (III) のナノリボンやナノシートは、Ga0と水を高温で反応させるか、高温の酸素雰囲気下で窒化ガリウムを蒸発させると合成できます。酸化ガリウム (III) のナノリボンやナノシートの構造は、純粋な単結晶で、構造のずれは見られません。
具体的には走査型電子顕微鏡 (SEM)、透過型電子顕微鏡 (TEM)、X線回折装置 (XRD)、エネルギー分散型X線分析 (EDS)などを用いて、熱蒸発反応によって得られた反応物が分析されました。分析結果からも、反応物は灰色の綿状構造であると示されています。
SEMにより反応物はワイヤー状構造やシート状構造であることが示され、TEM写真によって酸化ガリウム (III) がリボン状構造であることが明らかになりました。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0107-0453JGHEJP.pdf
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200