水酸化マンガンとは
水酸化マンガンとは、マンガンの水酸化物です。
水酸化マンガンには、水酸化マンガン (II) 、水酸化マンガン (III) 、水酸化マンガン (IV) などが知られています。水酸化マンガン (II) のCAS登録番号は18933-05-6です。天然で水酸化マンガン (II) は、キミマン鉱 (英: pyrochroite) として得られます。
塩化マンガンの希薄水溶液に水酸化カリウム水溶液を加えて、水素を通じながら加熱した後に冷却することで、結晶が析出して、水酸化マンガン (II) を合成することが可能です。
水酸化マンガンの使用用途
2価の水酸化マンガンは白色で水には不溶で、水中溶存酸素の定量法であるウィンクラー法 (英: Winkler’s method) に用いられます。
2価の白色粉末に対して、3価の水酸化マンガンは、灰色、褐色、黒色などの粉末で、色素や顔料に用いることが可能です。また、4価の水酸化マンガンは、褐黒色や黒色の粉末で、顔料やワニスなどの乾燥剤、染色などに用いられます。
水酸化マンガンの性質
水酸化マンガン (II) は水には不溶です。空気中で容易に酸化されます。酸化によって3価や4価の水酸化物を生成し、褐色に変化しやすいです。
水酸化マンガン (II) はわずかに水に溶解します。室温における水への溶解度は、0.0005g/100cm3です。その一方で水酸化マンガン (II) は、希酸やアンモニウム塩水溶液には、容易に溶解します。溶解度積はKsp = 1.6 × 10-13です。溶解度積は他の重金属水酸化物と比較するとやや大きく、塩基性も強いです。
水酸化マンガン (II) は、ほとんど希アルカリ水溶液に溶解しません。ただし、熱濃アルカリ水溶液には溶解して、マンガン (II) 酸塩を生成します。
水酸化マンガンの構造
水酸化マンガン (II) の化学式はMn(OH)2で、モル質量は88.9527g/molです。酸化マンガン (II) 一水和物とも呼ばれています。
水酸化マンガン (II) は六方晶系の、ヨウ化カドミウム型構造を取っています。密度は3.26g/cm3で、格子定数はa = 3.34Å、c = 4.68Åです。
マンガン(IV)を含む水酸化物には、褐色の粉末であるMn3O4・nH2Oや黒色の粉末のMnO2・nH2Oなどが存在します。Mn3O4・nH2Oは2MnIIO・MnO2・nH2Oと書くことも可能です。
水酸化マンガンのその他情報
1. 水酸化マンガン (III) の反応
Mn(OH)2の沈殿が空気酸化によって、Mn2O3・nH2Oとなります。Mn2O3・nH2Oを100℃で乾燥すると、Mn2O3・H2Oになります。Mn2O3・H2OはMnO(OH)と書くことも可能です。MnO(OH)のCAS登録番号は1332-63-4、分子量は87.94です。
水酸化マンガン (III) には、斜方 (α形) と単斜 (γ形) の2変態が存在します。α形の密度は4.2~4.4g/cm3、γ形の密度は3.26g/cm3です。
天然で水酸化マンガン (III) は、スイマンガン鉱 (英: Manganite) として産出されます。また、水酸化マンガン (III) は、Mn(OH)3という形では得られません。
2. 水酸化マンガンの関連化合物
水酸化マンガンは水酸化鉄と比較されることもあります。水酸化鉄は鉄の水酸化物で、鉄の酸化数によって水酸化鉄 (II) や水酸化鉄 (III) が存在します。水酸化鉄 (II) の化学式はFe(OH)2、水酸化鉄 (III) の化学式はFe(OH)3です。
水酸化マンガン (II) は水酸化鉄 (II) と比べると還元作用が弱いものの、塩基性で還元作用を示します。水酸化鉄 (II) の標準酸化還元電位はE° = -0.556Vで、水酸化マンガン (II) の標準酸化還元電位はE° = -0.25Vです。