ブロッティング装置

ブロッティング装置とは

ブロッティング装置とは、電気泳動後にゲル上の生物分子 (DNA、RNA、タンパク質など) を転送するための装置です。

主に生物学や分子生物学の研究において使用されます。電気泳動とは主にタンパク質やDNAの分離に用いる解析手法で、電圧をかけると移動する性質を使って分離させることです。

ます。まず、ウェスタンブロッティングでは、タンパク質の分離と同定が可能です。電気泳動後、膜上にタンパク質を転送し、特定の抗体で標識して検出します。

ブロッティング装置の使用用途

ブロッティング装置は、主に生物・生化学の実験のために使用されますが、種類によって使用用途が異なります。

1. ウェスタンブロッティング

ウェスタンブロッティング (英: Western blotting ) は、電気泳動で分離したタンパク質を膜に転写し、抗体を用いて目的のタンパク質を検出する手法です。

作業の流れは、まず目的のタンパク質に対する抗体を入手し、電気泳動でタンパク質を分離します。その後、得られたバンドを膜に転写してブロッキングと抗体反応を行い、目的のタンパク質が含まれるバンドを検出します。

具体的には、膜に密着させたタンパク質を電圧をかけてゲルから転写し、一次抗体と呼ばれる目的のタンパク質に対する抗体と反応させます。次に二次抗体として標識された酵素と反応させ、化学発光法や発色法を用いて目的のバンドを検出します。

2. サザンブロッティング

サザンブロッティング (英: Southern blotting) は、DNAの特定の塩基配列を検出する手法です。

主に分子生物学的な実験で利用されます。DNAサンプルをアガロースゲルで電気泳動させ、それを膜に転写 (ブロット) します。その後、目的のDNA配列を持つ分子を検出し塩基対を形成するために、標識されたプローブが使用されます。

プローブは通常、放射性同位体標識や発色酵素標識されており、目的のDNA配列と結合することで可視化します。特定の塩基配列をもつDNAを定性的・定量的に検出できるため、ゲノムマッピングや個人識別、親子鑑定などにも利用されることがあります。

3. ノーザンブロッティング

ノーザンブロッティング (英: Northern Blotting) は、RNAの特定の配列を検出する手法です。主に遺伝子の発現パターンや機能を調査する際に使用され、DNAがどのようにmRNAへ転写され、実際に機能するかを調べることができます。

ノーザンブロッティングの手順は以下の通りです。

  1. 細胞からDNAとRNAを抽出する
  2. DNaseを用いてRNAのみを残し、アガロース電気泳動でRNAを分離する
  3. 分離されたRNAをメンブレンに転写する
  4. 検出したいRNA配列に相補的なプローブを使用して結合させる
  5. 標的RNAの量とサイズを検出する

RNAの動きを分析することで、生物が異なる発現型を示す理由や、発育段階による制御メカニズムを理解する際に役立ちます。

ブロッティング装置の原理

ブロッティング装置の原理は以下の通りです。

1. 電気泳動

サンプルに含まれる生体分子を電場の中でゲル上を移動させ、サイズによって分離します。ゲルは種類によって組成が異なり、DNA、RNA、タンパク質それぞれに適したものが使用されます。

2. 転写

電気泳動で分離された生体分子は膜上に転写され、ゲル上の分離パターンがメンブレンに複製されます。ろ紙の間にメンブレンとゲルを交互に重ね、2つの電極の間に設置します。電極間に電圧をかけると、電圧によって発生した電流に従ってタンパク質がメンブレンへ移動します。

3. ブロッキングと抗体反応

ブロッキングでは、メンブレン上の非特異的な結合を防ぐために特定の物質を用いて表面を覆い、後の抗体反応での誤検出が抑えます。抗体反応では、目的の生体分子に対して特異的に結合する抗体が導入され、標識物質によって目的の分子が可視化されます。これらの組み合わせにより、生体分子の高感度な検出が可能になります。

4. 検出

検出では、抗体やプローブに結合したラジオアイソトープなどの標識物質により、目的の分子が明るい帯状に浮かび上がります。そこで発光や発色反応が生じ、酵素反応では基質の反応によって目的の分子が視覚化されます。

最終的に検出装置やカメラによって得られた画像が解析ソフトウェアで処理され、分子の存在、量、サイズなどを定量的・質的に評価します。

5. 結果の解析

結果の解析は、得られた画像やデータを処理して生体分子を評価します。解析にはバンドの位置や強度の測定、バックグラウンドの補正、標準曲線の作成、統計的解析、生物学的解釈などが含まれます。目的の分子の存在、量、サイズなどを詳細に把握することが可能です。

ブロッティング装置の選び方

ブロッティング装置を選ぶ際は、主に下記の点に留意して選択することが大切です。

1. 使用目的

DNA、RNA、タンパク質など、対象分子によってブロッティング手法異なるため、目的を満たす装置を選ぶことが大切です。

2. サンプル数とサイズ

サンプル数とサイズは研究の規模や対象によって異なるため、同時に処理できる範囲を確認します。大きなDNAフラグメントや高分子のタンパク質を扱う場合は、それに合うサイズのゲルを処理できる装置が必要です。

3. 分解能と感度

装置の分解能や感度が実験の要件を満たしていることを確認します。特に、低濃度の目標分子を検出する場合は高い感度が求められます。分解能はゲルの濃度、転送方式、および検出手法に影響され、感度は検出方法、使用する標識物質や装置の設計に依存します。

4. 転送方式

転送方式の項目では、サンプルをゲルからメンブレンに転送する方式 (セミドライ、ターボブロット、ウェットブロットなど) を選定します。効率的で均一な転送が可能かどうかが主な基準となります。

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