スルホンアミド

スルホンアミドとは

スルホンアミドとは、アルキルスルホン酸のアミド体です。

塩化スルフリルアンモニア、またはアミンの反応により合成されます。化学式はR-SO2-NR’R”で、スルホン酸のヒドロキシ基をアミノ基で置換した化合物です。カルボン酸のアミド体に比べて、酸や塩基による加水分解、ヒドリド還元などに対して安定です。

スルホンアミド誘導体は、炭素同士が鎖状に連なった脂肪族が結合したものと、ベンゼンなどの芳香族が結合したものに分類されます。

スルホンアミドの使用用途

スルホンアミドは、加水分解やヒドリド還元に安定であることから、アミノ基を保護する目的で用いられます。また、スルホンアミド誘導体には、抗菌薬・化学治療薬のサルファ剤、人工甘味料のサッカリン、可塑剤のp-トルエンスルホンアミドなどがあります。

サルファ剤は、グラム陽性・陰性細菌、真菌、プラスモジウム属 (マラリア原虫) 、トキソプラズマ属原虫に効果的な抗菌薬です。微生物の葉酸の生合成を阻害することで、DNA合成を阻害します。

サルファ剤の1種であるスルファメトキサゾールは、トリメトプリムと併用 (ST合剤) され、ニューモシスチス・カリニ肺炎の治療に使われます。サラゾスルファピリジンは、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に使われます。また、サルファ剤には外用薬も存在しており、主に熱傷や皮膚、膣、眼の感染症に効果的です。

人工甘味料であるサッカリンは、ショ糖の500倍の甘みを持ち、ダイエット食品の甘味料として使われます。p-トルエンスルホンアミドは、蛍光顔料、樹脂改質剤、熱硬化性樹脂可塑剤として使用されます。

スルホンアミドの性質

スルホンアミドは、白色から微黄色の結晶性粉末です。常温で安定、融点が高い性質をもち、加熱するとアンモニアを放出して分解されます。また、水、熱エタノールアセトン、酢酸エステルに溶けやすく、水溶液は弱酸性を示します。

スルホンアミドのその他情報

1. スルホンアミド耐性

スルホンアミド系薬剤は抗菌薬であ、標的となる菌がスルホンアミドに対して耐性を獲得する可能性があります。耐性を獲得する原因は、作用部位である葉酸生合成酵素のアミノ酸変異です。

スルホンアミド系の1つの薬剤に対して耐性を獲得すると、スルホンアミド系全薬剤の効果が下がると言われています。

2. 薬物動態

スルホンアミド系薬剤は、経口および外用で速やかに吸収され、全身に分布します。アルブミン上のビリルビン結合部位に競合的に結合した後、主に肝臓で代謝され、腎臓から排泄されます。

3. 使用上の注意点

妊娠中・授乳中におけるスルホンアミド系薬剤の服用は、治療による効果がリスクを上回る場合のみ可能です。ただし、出産予定日直前は投与を控える必要があります。

新生児黄疸を発症、または重症の場合、核黄疸を発症して脳を損傷するリスクがあるためです。原因は非抱合型ビリルビンの上昇です。

また、スルホンアミド系薬剤のいずれかにアレルギーを持つ方や、ポルフィリン症の方は、スルホンアミド系薬剤の使用はできません。ポルフィリン症の方にスルホンアミド系薬剤を投与すると、腹痛や嘔吐などの急性発作を引き起こす可能性があります。

なお、スルホンアミド系薬剤の副作用は、過敏反応 (発疹や スティーブンス-ジョンソン症候群、アナフィラキシー) 、結晶尿・乏尿・および無尿、血液学的反応 (無顆粒球症や血小板減少) 、光線過敏症などです。結晶尿は、水分摂取が不足している時に生じやすい副作用です。毎日水分を1,200〜1,500mL程度摂取することで予防できます。

4. スルファニルアミド骨格

スルファニルアミドは、スルホンアミドに4-アミノベンゼンが結合した化合物です。スルファニルアミド骨格を持った薬剤には、チアジド系利尿薬やスルホニル尿素系糖尿病薬があります。

スルホンアミド系薬剤に対してアレルギー症状を有する方は、チアジド系利尿薬やスルホニル尿素系糖尿病薬も服用することはできません。

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