チラミンとは
図1. チラミンの基本情報
チラミンとは、フェネチルアミン(フェニルエチルアミン)の誘導体の一つです。
別称として、p-チラミン、ウテラミン、トコシン、チロサミン、シストゲンなどがあります。チラミンを含む食品は、高血圧発作の原因になります。具体例は、熟成チーズ、赤ワイン、カカオ製品、発酵食品、漬け物類、燻製食品などです。
チラミンは動物や植物の生体内に広く分布し、酵素によって作られます。モノアミンオキシダーゼ (英: Monoamine Oxidase) によって代謝されて不活化します。
チラミンの使用用途
チラミンはモノアミン類の一種として、血圧上昇を代表とするさまざまな生理作用があります。例えば、血管収縮作用などです。
蛍光色素で標識され、免疫蛍光分析でペルオキシダーゼの基質として使用されます。
チラミンの性質
チラミンは白色〜薄褐色の結晶性粉末です。エタノールや水に溶け、アセトンにほとんど溶けません。チラミンの融点は164.5°C、沸点は325.2°Cです。
チラミンを多く含む食べ物と抗結核薬のイソニアジドを同時に摂取すると、発汗、頭痛、腹痛、血圧上昇などの副作用を起こす場合があります。鼻炎治療薬の塩酸フェノールプロパノールも、同様の副作用が起こる可能性があります。
チラミンの構造
チラミンはフェネチルアミン誘導体の一つで、フェネチルアミンのフェニル基の4位にヒドロキシ基を有します。そのため4-ヒドロキシフェネチルアミン (英: 4-Hydroxyphenethylamine) やp-ヒドロキシフェネチルアミン (英: p-Hydroxyphenethylamine) とも呼ばれます。
チラミンの化学式はC8H11NO、モル質量は137.179であり、密度は1.103g/cm3です。
チラミンのその他情報
1. チラミンの生合成
図2. チラミンの生合成
チラミンは動植物に広く分布します。チラミンなどのカテコールアミン類は、ヒトではL-フェニルアラニン (Phe) から生合成されます。生体内でフェニルアラニン-4-モノオキシゲナーゼと補酵素のテトラヒドロビオプテリンによって、フェニルアラニンからチロシン (Tyr) を合成可能です。芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼの作用によってチロシンが脱炭酸して、チラミンが生じます。食物中のタンパク質が微生物により分解すると、腐敗アミンとして産生されます。
2. チラミンの作用
チラミンは血管収縮作用のあるノルアドレナリンの遊離を促進し、血圧を上昇させるため、片頭痛発作や心拍数上昇の要因になる可能性があります。ただし短時間でチラミンを反復投与した場合には、ノルアドレナリンの生合成が間に合わないため、ノルアドレナリンが枯渇して作用が弱まります。
チラミンを多く含む食べ物は、ココアやチョコレートのようなカカオ製品です。チラミンが多量に含まれているココアを飲むと、チラミンによる血管収縮作用が消える数時間後に、血管が拡張する反動によって頭痛を起こすときもあります。
3. チラミンの関連化合物
図3. チラミンの関連化合物
チラミンはメチル化すると、N-メチルチラミン、N,N-ジメチルチラミン、N,N,N-トリメチルチラミンなどのアルカロイドを生成します。アルカロイド (英: alkaloid) とは、窒素原子を有する天然由来の有機化合物の総称のことです。N,N-ジメチルチラミンはホルデニン (英: Hordenine) 、N,N,N-トリメチルチラミンはカンディシン (英: Candicine) とも呼ばれます。
チラミンはモノアミン神経伝達物質と構造が類似した化合物です。モノアミン神経伝達物質の具体例として、アドレナリン、ノルアドレナリン、ヒスタミン、ドーパミン、セロトニン、アセチルコリンなどが挙げられます。生理的にはアドレナリンと類似の作用を示し、子宮収縮作用、血圧上昇作用、末梢神経収縮作用を有します。