塩化バリウム

塩化バリウムとは

塩化バリウム (英: Barium chloride) とは、バリウムの塩化物で、組成式BaCl2で表される無機化合物です。

無水物のほかに一水和物や、二水和物が知られています。二水和物が最も広く販売されている物質です。CAS登録番号は、無水物が10361-37-2、二水和物が10326-27-9です。

塩化バリウムは、GHS分類において、急性毒性 (経口) 、皮膚腐食性及び皮膚刺激性、眼刺激性、特定標的臓器毒性 (単回及び反復ばく露) が認められています。

塩化バリウムの使用用途

塩化バリウムの主な使用用途は、有機顔料、製紙充填剤、金属熱処理剤、レントゲン造影剤原料、蛍光体原料などです。

1. バリウム塩原料

最も広く用いられている用途は、他のバリウム塩の原料としての使用です。例えば、塗料、ゴムなどの増量剤やX線造影剤として知られている硫酸バリウムは、工業的には重晶石から得られた硫化バリウムを硫酸ナトリウムと反応させて得られます。塩化バリウムの水溶液と硫酸ナトリウムを用いて共沈反応によって製造する手法も有効です。

2. 硫酸塩の比濁分析

硫酸塩の比濁分析も塩化バリウムの重要な用途の1つです。比濁分析とは、塩化バリウムが硫酸イオンと反応して不溶性の硫酸バリウムを生成する反応を利用して、硫酸イオンの定性および定量分析を行う手法です。

塩化バリウムの性質

1. 塩化バリウム (無水物) の基本情報

塩化バリウム (無水物) の基本情報

図1. 塩化バリウム (無水物) の基本情報

塩化バリウムの無水物は、分子量208.23、融点961℃、沸点1,560℃であり、常温での外観は、白色の固体です。密度は3.9g/mLであり、水によく溶けます (溶解度: 37.0g/100g (25℃)) 。

一方で、アルコールに対する溶解度は低い物質です。水溶液では電離してバリウムイオン (Ba2+) と塩化物イオン (Cl) に電離します。通常の取り扱いにおいて安定な化合物です。

2. 塩化バリウム (二水和物) の基本情報

塩化バリウム二水和物の基本情報

図2. 塩化バリウム二水和物の基本情報

塩化バリウムの二水和物は、分子量244.26、融点962℃、沸点1,560℃であり、常温での外観は白色結晶もしくは白色結晶性粉末です。ただし、121℃で無水物となります。

密度は3.097g/mLで水に溶けやすく、エタノールに極めて溶けにくい物質です。

塩化バリウムの種類

市販されている塩化バリウムの製品には、研究開発用試薬製品や工業用薬品があります。どちらの場合も、塩化バリウム二水和物として販売されている場合が最も多く、メーカーによっては少数ながら無水物や一水和物も販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬では、塩化バリウム二水和物として販売されている場合が多いです。少数ながら無水物製品も販売されている他、10w/v%の溶液として販売されている場合もあります。

純粋な物質では、容量の種類は25g、100g、500gなどで、主に実験室で取り扱いやすい容量での提供が一般的です。室温で保管可能な試薬製品とされることが多いです。

2. 工業用薬品

工業用薬品としては、ほとんどが二水和物として販売されている他、メーカーによっては一水和物製品も提供があります。工場などでの用途を一般的とする25kgなどの大型容量からでの提供が一般的ですが、各メーカーへの個別の問い合わせが必要です。

塩化バリウムのその他情報

1. 塩化バリウムの合成

塩化バリウムの合成方法 (1)

図3. 塩化バリウムの合成方法

塩化バリウムは、水酸化バリウムや炭酸バリウムと塩酸を反応させることによって合成が可能です。工業的な製造方法としては、重晶石 (硫酸バリウム) を塩化カルシウムと溶融する方法や、硫化バリウム塩酸を反応させる方法などが用いられています。

2. 塩化バリウムの法規制

塩化バリウムは有害な物質であるため、各種法令による規制の対象となっています。例えば、労働安全衛生法においては、名称を表示すべき危険有害物、、名称を通知すべき危険有害物、及びリスクアセスメントを実施すべき危険有害物に指定されています。

また、毒物・劇物取締法における劇物です。法令を遵守して正しく取り扱うことが重要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10361-37-2.html

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