亜セレン酸ナトリウム

亜セレン酸ナトリウムとは

亜セレン酸ナトリウム (英: Sodium selenite) とは、組成式Na2SeO3で表される無機化合物であり、亜セレン酸のナトリウム塩です。

無水和物の他、五水和物が常温常圧において安定に存在しています。CAS登録番号は、それぞれ10102-18-8 (無水和物) 、26970-82-1 (五水和物) です。無水物や五水和物の状態で安定に存在します。常温常圧では白色の粉末状固体で、天然に動物の体内などに存在しています。

亜セレン酸ナトリウムの使用用途

1. 産業

産業における亜セレン酸ナトリウムの主な使用用途は、 ガラス・顔料原料 (ガラスの脱色剤など) 、アルカロイド試薬、軽金属の表面処理、陶磁器の着色などです。また、製薬業界や飼料業界で栄養強化剤としても使用されます。

2. 臨床

臨床における亜セレン酸ナトリウムは、低セレン血症治療薬として、注射薬の剤形で使用されます。セレンは、生体における必須微量元素であり、セレンは肉類や卵など様々な食材に含まれているため、一般的に健康な人では欠乏することはありません。

静脈栄養剤や、腎不全、摂食障害など、何らかの原因で体内におけるセレンが欠乏する「低セレン血症」は、血清セレン濃度を測定することにより診断されます。血清セレン濃度の低下が原因で起こる「セレン欠乏症」の 症状は、爪の白色化や変形、筋肉痛、筋力低下、不整脈や頻脈を引き起こす心筋障害などです。

特にセレン欠乏による心筋障害に伴う心不全は致命的になる場合があることから、早期に低セレン血症を診断し、亜セレン酸ナトリウム注射液を用いて治療することが重要とされています。

亜セレン酸ナトリウムの性質

亜セレン酸ナトリウムの基本情報

図1. 亜セレン酸ナトリウムの基本情報

亜セレン酸ナトリウムは、式量172.94、融点710℃ (分解) であり、常温では白色の結晶性粉末です。密度は3.1g/mLであり、水への溶解度は89.8g/100gとやや溶けやすいものの、エタノールには不溶です。

亜セレン酸ナトリウムの種類

亜セレン酸ナトリウムは、主に研究開発用試薬製品や、低セレン血症の治療薬 (亜セレン酸ナトリウム注射液) 、産業用原材料として一般に販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、亜セレン酸ナトリウムは、1g、5g、25g、100g、500gなどの容量の種類があります。アルカロイド試薬などの用途が想定されている製品です。25℃以下の冷所保存が必要です。

2. 医薬品

医薬品としては、亜セレン酸ナトリウムは、亜セレン酸ナトリウム注射液として販売されていることが一般的です。低セレン血症に適応があり、食事等により十分にセレンを摂取できない患者に使用することとされています。

3. 産業用原材料

亜セレン酸ナトリウムは、産業用途ではガラスの脱色剤や釉薬などを想定して販売されています。25kgのファイバードラムなど、工場で扱いやすい比較的大きな単位で販売されることが一般的です。

亜セレン酸ナトリウムのその他情報

1. 亜セレン酸ナトリウムの合成

亜セレン酸ナトリウムの合成

図2. 亜セレン酸ナトリウムの合成

亜セレン酸ナトリウムは、二酸化セレンと水酸化ナトリウムの反応によって合成されます。また、水和物は40℃で水和水を失って無水物となります。

2. 亜セレン酸ナトリウムの有害性と法規制情報

亜セレン酸ナトリウムの有害性

図3. 亜セレン酸ナトリウムの有害性

亜セレン酸ナトリウムは、下記のような人体への有害性が知られています。

  • 飲み込むと生命に危険 (経口摂取)
  • 皮膚刺激
  • 強い眼刺激
  • 遺伝性疾患のおそれの疑い
  • 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い
  • 中枢神経系、呼吸器、心臓、肝臓、腎臓、消化管の障害
  • 長期にわたる、又は反復ばく露による皮膚、毛、爪、歯、中枢神経系、血液系、肝臓、腎臓、生殖器 (男性)の障害

毒物及び劇物取締法では毒物に指定されている他、労働安全衛生法では、 名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物、危険性又は有害性等を調査すべき物に指定されています。

労働基準法では、疾病化学物質です。法令を遵守して正しく取り扱うことが重要とされます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10102-18-8.html

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