モノシラン

モノシランとは

モノシラン (Monosilane, SiH4) とは、常温常圧で特異臭を持つ無色の気体です。

ケイ素の水素化物をシランと言い、ケイ素数が1、2、3のものをそれぞれモノシラン、ジシラン、トリシランと呼びます。モノシランを指してシランという場合もあります。極性が小さいため、一般的な有機溶媒に可溶です。

モノシランは、労働安全衛生法で名称等を表示・通知すべき有害物質、リスクアセスメントを実施すべき危険有害物、危険物・可燃性のガス、変異原性が認められた既存化学物質に指定されています。

モノシランの使用用途

モノシラン (SiH4) は、高い反応性を持つ無機化合物であり、さまざまな用途で利用されています。特に半導体産業での利用が代表的です。

具体的には、CVDでシリコン膜を形成する用途で用いられます。CVDとは、大気圧中に特殊ガスを噴射して被膜を形成するコーティング技術です。噴射したガスにエネルギーを加える方法や、複数種類のガスを相互作用させる方法などがあります。モノシランを使ったCVDでは、噴射したモノシランに電気エネルギーを与える被膜形成などが行われています。

この技術はシリコンウェハーの製造や、金属酸化物半導体 (MOS) デバイスのゲート酸化膜の成長などの工程で利用されます。この用途に加えて、モノシランは研究や開発の分野でも使用されており、新しい応用が開拓されています。

 ただし、モノシランは大気に触れただけで自然発火をするため、取り扱いには注意が必要です。

モノシランの性質

モノシランは、ケイ素と水素から構成される無機化合物で、シランの最も単純な形態です。モノシランの化学式はSiH4であり、分子量は32.12g/molです。

無色、無臭で、常温・常圧では気体の状態を保ちますが、極めて低い沸点 (-112℃) と融点 (-185℃) を持っています。また、水にはほとんど溶けず、非極性の性質を示します。

空気中の酸素と反応して自然発火するほど、非常に反応性が高く、不安定です。また、水とも激しく反応し、ケイ素および水素ガスを生成します。

SiH4 + 2H2O → SiO2 + 4H2

このような反応性・可燃性の高さと爆発性から、取り扱いには十分な注意が必要です。また、吸入や皮膚接触による健康リスクも考慮する必要があります。モノシランは、半導体産業での化学気相成長法 (CVD) において、ケイ素を成膜するためのガス源として広く使用されています。また、太陽電池の製造においても、アモルファスシリコンの製造に用いられます。

モノシランの構造

モノシランは、1つのケイ素原子と4つの水素原子から構成されており、ケイ素原子を中心に、周囲を4つの水素原子が等方的に取り囲む原子配置をしています。

ケイ素原子は、sp^3混成軌道を持ち、水素原子とそれぞれσ結合で結合しています。そのため、Si-H間の結合角は、ほぼ正四面体構造に近い109.5°になります。また、その結合長は約1.48 Åです。

モノシランのとる正四面体構造により、4つのSi-H結合の電気陰性度の差がそれぞれ相殺されるため、モノシラン全体としては非極性分子となります。

モノシランのその他情報

モノシラン の製造方法

モノシランにはいくつかの製造方法が存在しますが、工業的に最も一般的な製造方法は粉砕したシリコンを用いる方法です。

この方法では、表面積を増やし反応速度を上げるためシリコンを粉末状にし、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属と混ぜ合わせます。その後、混合物に塩酸ガスを通して反応させることで、モノシランが生成されます。

Si + 4HCl + 4Na → SiH4 + 4NaCl

生成されたモノシランは、ガスとして分離・精製されます。その他、シリコンと水素を高温・高圧の条件下で直接反応させることで、モノシランを生成する方法もあります。ただし、この方法は生成効率が低く、エネルギー消費が大きいため、現在ではあまり用いられていません。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0806.html

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