フェノールスルホン酸亜鉛

フェノールスルホン酸亜鉛とは

フェノールスルホン酸とは、フェノールにスルホ基 (-SO3H) が結合した芳香族化合物です。

フェノールスルホン酸亜鉛は、フェノールスルホン酸が亜鉛の塩となった化合物を指します。つまり、ベンゼン環に1つの-OH基が結合したフェノールに、さらにスルホ基 (-SO3H) が結合し、亜鉛 (Zn) の塩になった化合物がフェノールスルホン酸亜鉛です。

消防法や労働基準法などの国内法規で指定されていませんが、特定の化粧品への配合量は所定濃度以下に規制されています。

フェノールスルホン酸亜鉛の使用用途

フェノールスルホン酸亜鉛の主な使用用途は、化粧品の配合成分です。具体的には制汗剤の有効成分として幅広く利用されています。薬機法上の化粧品だけでなく、医薬部外品 (薬用化粧品) にも配合されます。

また、皮脂による皮脂臭を抑える物質として注目されています。いわゆるデオドラント製品に配合されて使用される成分です。例えば、比較的皮脂臭が強い中年男性をターゲットにした製品に配合されます。

皮脂臭は、汗や皮脂を栄養源にする雑菌の増殖によって引き起こされるため、汗や皮脂の分泌を抑制し、雑菌の増殖を抑制することで皮脂臭を防げます。フェノールスルホン酸亜鉛は、汗や皮脂の分泌を抑制する効果、および、雑菌の増殖を抑制する効果 (殺菌効果) を併せ持つため、汗の臭いや皮脂臭を抑制可能です。

フェノールスルホン酸亜鉛の性質

フェノールスルホン酸亜鉛は、毛穴を引き締めて皮脂の分泌を抑制する収れん性を有します。収れん性とは、皮膚組織や毛細血管などを縮める作用です。アストリンゼント効果といわれる場合もあります。

発汗を抑える作用や皮脂の異常分泌を抑える作用も有するため、ニキビ予防の効果も期待できます。フェノールスルホン酸亜鉛は、医薬部外品の有効成分の1つとして配合される場合があります。

なお、制汗成分としては、塩化アルミニウム (アルミニウムクロリド) 、クロルヒドロキシアルミニウムなどが知られています。フェノールスルホン酸亜鉛は、これら成分よりも制汗力が低いと考えられていますが、安全性は高いです。

フェノールスルホン酸亜鉛の構造

フェノールスルホン酸亜鉛は、ベンゼン環に1つのヒドロキシ基 (-OH) と、1つのスルホ基 (-SO3H) が結合した分子構造を有します。スルホ基 (-SO3H) の部分は、亜鉛の塩 (-SO3)2 Znの状態です。亜鉛は2価 (Zn2+) であるため、1つの亜鉛と2つのフェノールスルホン酸がイオン結合しています。

フェノールスルホン酸亜鉛は、化学式Zn ( HOC6H4SO3 ) 2です。フェノールスルホン酸亜鉛にはいくつかの種類が存在します。フェノールの-OH基に対するスルホ基の位置によって、o-フェノールスルホン酸亜鉛、p-フェノールスルホン酸亜鉛、m-フェノールスルホン酸亜鉛があります。これらのうち、最も一般的に利用されているのはp-フェノールスルホン酸亜鉛です。

なお、亜鉛の塩となる前のフェノールスルホン酸は、例えば医薬中間体、電気メッキ助剤、金属表面処理剤などの用途で使用されます。

フェノールスルホン酸亜鉛のその他情報

1. フェノールスルホン酸亜鉛の配合規制

フェノールスルホン酸亜鉛は、直ちに洗い流す石けんやシャンプー等には配合規制がありませんが、それ以外の化粧品では100g中2.0gまでしか配合できません。

2. フェノールスルホン酸亜鉛の他成分との組み合わせ

フェノールスルホン酸亜鉛は、他の殺菌成分などと組み合わされて化粧品に配合される場合があります。例えば、イソプロピルメチルフェノールまたはシメン-5-オールなどと組み合わせてフェノールスルホン酸亜鉛を化粧品に配合すると、制汗作用や防臭作用などを向上できると報告されています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0865JGHEJP.pdf

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