プロピオン酸カルシウム

プロピオン酸カルシウムとは

プロピオン酸カルシウムとは、2つのプロピオン酸と1つのカルシウムがイオン結合した有機酸塩の1種です。

英語表記の通り、カルシウムプロピオネートと呼ばれることもあります。常温では固体状で、白色粉体の状態で販売されることが多いです。水に溶けやすく、水に溶解させて水溶液にしてから使用される場合があります。

常温の条件で保存された場合の安定性は高いですが、高温および直射日光を避ける方が好ましいとされています。主要な国内法規に該当する物質ではありませんが、眼に対して刺激を有する物質であるため、取り扱う際にゴーグルなどの保護具の着用が推奨されます。

プロピオン酸カルシウムの使用用途

プロピオン酸カルシウムの主な使用用途は、プロピオン酸と同様に、カビや芽胞菌の発育を抑える保存料です。しかし、必ずしもすべての微生物に対して抗菌作用を発揮できません。例えば、カビや芽胞菌の生育を阻害できますが、酵母の生育をあまり阻害できません。

しかし、パン類は酵母を利用して作られるため、パン類に添加される保存料は酵母に対する効果が弱い方が好都合です。よって、酵母に対する効果が弱いプロピオン酸カルシウムは、パン類の保存料として最適です。プロピオン酸カルシウムは、パン類以外にチーズや洋菓子の保存料 (防腐剤) として利用されます。

プロピオン酸カルシウムは、食品への配合量や配合できる食品の種類が定められています。プロピオン酸またはプロピオン酸塩の使用が認められている食品はチーズ、パン、および洋菓子のみです。

配合できる使用量は、カルシウム塩になる前のプロピオン酸量に換算して計算され、チーズの1kgあたり3.0g以下、パンまたは洋菓子の1kgあたり2.5g以下です。プロピオン酸カルシウムをソルビン酸と併用する場合は、プロピオン酸およびソルビン酸の合計量が基準値以下になる量と使用基準が定められています。

プロピオン酸カルシウムの性質

プロピオン酸カルシウムの主な特徴は、比較的水に溶解しやすいという点です。10mLの水に1g溶解します (水溶解度は1g/10mL) 。

プロピオン酸カルシウムのようなプロピオン酸塩は、生物の体内に存在する物質です。例えば、微生物の代謝に伴って微量に産生されます。プロピオン酸は人間の腸内細菌によっても産生されます。

プロピオン酸カルシウムは、わずかな量で食品等に添加されて使用されます。微量であるため摂取した場合の毒性は低いと考えられています。しかし、プロピオン酸カルシウムを溶解させた水溶液の取り扱いには注意が必要です。

水溶液をスプレーで散布するときに目に入ると、危険であり有害です。また、霧状となった水溶液を直接吸い込むと同様に危険性があります。

プロピオン酸カルシウムの構造

プロピオン酸カルシウムの分子構造は、有機酸の1種であるプロピオン酸の2つが、1つのカルシウムに結合した構造です。詳しくは、カルシウムが2価の陽イオンであり、プロピオン酸が1価の有機陰イオンであるため、1つのカルシウムイオンに2つのプロピオン酸がイオン結合した状態です。

(CH3CH2COO)2Ca という分子式で表されます。なお、カルシウム塩になる前のプロピオン酸の分子構造は、酢の主成分である酢酸の分子構造と類似しています。酢酸の炭素数が1つ増えるとプロピオン酸になります。プロピオン酸の炭素がさらに1つ増えると酪酸 (らくさん) になります。

プロピオン酸カルシウムのその他情報

プロピオン酸カルシウムの応用

プロピオン酸カルシウムは、牛などの家畜の飼料またはペットフードに添加物として配合される場合もあります。防腐の目的で飼料やペットフードに添加される他に、栄養素としてのカルシウムを与える目的でも添加されます。

農業分野では、乳牛の乳熱という病気を予防する目的でも利用されることも多いです。乳熱という病気は、分娩後の乳牛において血中カルシウム濃度が低下して、意識が低下する等の症状を発症する病気です。

そこで、餌である飼料にプロピオン酸カルシウムを添加して、分娩後の乳牛にカルシウムを補給することができます。

参考文献
https://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?dr_ja:D09875
https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB6194031.htm

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です