テトラクロルエチレン

テトラクロルエチレンとは

テトラクロルエチレン (英: tetrachloroethylene) とは、常温で無色の液体です。

分子式C2Cl4で表される平面構造の化学物質で、分子量は165.83です。エチレンの水素基が塩素基に置換された構造をとっています。

IUPAC命名法による名称はテトラクロロエテン (四塩化エチレン) ですが、その他の略称としてパークロロエチレン (過塩化エチレン) 、パーク (perc) 、PCEなどがあります。CAS登録番号は、127-18-4です。1982年にマイケル・ファラデーが、ヘキサクロロエタンを加熱することで、初めて合成に成功しました。

テトラクロルエチレンの性質

1. 特性

テトラクロルエチレンの融点は-22℃、沸点は121℃、比重は1.62g/mLです。エタノールアセトンなど多くの有機溶媒に混和しますが、水にはほとんど不溶です。テトラクロルエチレンの粘性は、水の0.89cP (25℃) に対して0.84cP (25℃) と少なく、この水より重く、水より浸透しやすい性質が、深く広く土壌地下水汚染を引き起こす原因となっています。

不燃性ですが、高温面や炎に触れると分解し、有毒で腐食性のガス (塩化水素、ホスゲン塩素) を生成します。水分と接触すると徐々に分解し、トリクロロ酢酸や塩酸を生じます。

2. 人体への影響 

テトラクロルエチレンは空気中に蒸発しやすく、1ppm以下の低濃度でも感じられるほど鋭く甘い悪臭を持ちます。他のハロゲン系の炭化水素と同様に、中枢神経を麻痺させる作用があるため、取り扱いには注意が必要です。蒸気を吸い込んだ場合、めまい、頭痛、眠気などを起こし、症状が重い時には、言語障害、歩行困難、意識不明などに陥り死亡する場合もあります。

テトラクロルエチレンの使用用途

テトラクロルエチレンの主な用途は、溶媒としての使用です。ほとんどの有機化合物を溶かすことができ、油を落とすような作用があるため、ドライクリーニングや自動車の部品など金属製工業製品の洗浄に使用されることが多いです。映画フィルムの洗浄などにも使われます。他に、HCFC-134aなどの冷媒を製造する際の中間体としても使用されています。

テトラクロルエチレンは、さまざまな場所で使用されていますが、土壌汚染の危険性があります。地下水を汚染する場合もあるため、工場などでは、廃液などの取り扱いにも注意が必要です。

テトラクロルエチレンのその他情報

1. テトラクロルエチレンの製造法

テトラクロルエチレンは、エチレンから 1,2-ジクロロエタンを経て生産されています。1,2-ジクロロエタンを塩素の存在下で 400℃に加熱すると、塩化水素とテトラクロルエチレンが生成します。副生成物のトリクロルエチレンは、有用な化合物のため、蒸留により分離精製、回収されることが多いです。

テトラクロルエチレンは、他の化学合成過程からの廃棄物質である、部分的にクロロ化された軽炭化水素からも製造することが可能です。これらのクロロ炭化水素を過剰量の塩素と加熱すると、テトラクロルエチレン、四塩化炭素、塩化水素の混合物が得られます。

2. 法規情報

テトラクロルエチレンは、毒物および劇物取締法や消防法において非該当です。労働安全衛生法で「第二類物質特別有機溶剤等」、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 (化審法) で「第二種特定化学物質」に指定されています。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密閉し、涼しく乾燥し換気の良い場所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • ミストや蒸気、スプレーを吸入しない。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 使用後は適切に手袋を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、石鹸と多量の水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。刺激が続く場合は医師に相談する。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/127-18-4.html

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