シアノホス

シアノホスとは

シアノホス (英: Cyanophos) とは、シアノ基(-C≡N)を有するリン系化合物で、農薬の主成分です。

外見は黄色または赤みを帯びた黄色の透明な液体です。シアノホスは、乳剤、水和剤および粉剤として加工され農薬や殺虫剤として市販されています。適用される農作物は、野菜類、果樹類、豆類および花き類です。

太陽光によって分解される性質がありますが、水生生物への急性毒性等が確認されている有害物質です。日本、アメリカ、ヨーロッパ等にて、主要な農作物に対して残留基準が設定されています。

シアノホスの使用用途

シアノホスの主な使用用途は、農薬・殺虫剤です。

殺虫効果を発揮する一例は以下のとおりです。

  • アオムシ
  • アブラムシ
  • ヨトウムシ
  • コナガ
  • タマナギンウワバ
  • フキノメイガ
  • キスジノミハムシ成虫
  • マメシンクイガ
  • アザミウマ
  • テントウムシダマシ
  • インゲンテントウ

そのほか、害虫の卵に対する殺卵効果もあります。

シアノホスの性質

化学式 C9H10NO3PS
日本語名 シアノホス
英語名 Cyanophos
CAS番号 2636-26-2
分子量 243.22g/mol
融点/凝固点 14-15 ℃
沸点 119-120 ℃

 

シアノ基を有する有機リン系の化学物質であり、昆虫の体内に取り込まれるとオキソン体となり、昆虫のアセチルコリンエステラーゼと結合して酵素活性を低下させます。

その結果、正常な神経伝達機能が阻害されて殺虫効果が発現します。日本では1966年に農薬として登録されて以来、農業の現場で広く使用されてきました。

シアノホスのその他情報

1. シアノホスに関する法規制

シアノホスは有機シアン化合物の1種ですが、毒物及び劇物取締法においては「劇物・除外品目」に指定されています。航空法および船舶安全法では「毒物類・毒物」に指定されているため、運搬には適切な手続きが必要です。

また、シアノホスは水質汚濁防止法における有害物質、土壌汚染対策法における「特定有害物質」に指定されています。

2. シアノホスの安全注意情報

シアノホスは、経口摂取および皮膚接触での有毒性、神経系・心血管系・呼吸器への障害および水生生物に非常に強い毒性が確認されています。シアノホスは水中で急速に分解されるため、長期間における水生環境有害性は低く、さらに生物蓄積性も低いとされています。

農薬としてシアノホスが含有された商品を扱う場合は、粉じんやガス、ミストを吸引したり皮膚に付着させたりしないように、呼吸器の保護具および保護手袋・保護衣・保護メガネ・保護面を着用してください。また、農薬標準品としてシアノホスを実験室等で取り扱う場合には、保護具を着用しよく換気された環境下で使用します。

火災等で引火した場合は、シアノホスが分解され有毒なガスが発生する可能性があります。シアノホスの使用および保管時は、着火源を近付けないように注意してください。

シアノホスは冷暗所での保管が推奨されています。また、毒性のある化合物であるため、施錠して保管する必要があります。

3. 廃棄処分方法

シアノホスは特別管理産業廃棄物に該当します。シアノホスを廃棄処分する場合は、特別管理産業廃棄物処理基準に従って処理を行うか、特別管理産業廃棄物の許可業者に運搬と処分を依頼してください。

4. シアノホスの別名

シアノホスの別名はチオリン酸O-4-シアノフェニル-O,O-ジメチル、CYAPなどです。

農薬の成分として表記される場合は、略称であるCYAPが主に使用されています。シアノホスは乳剤、水和剤および粉剤として加工されて農薬として販売されていますが、この場合は例えば「CYAP 50%」のようにシアノホスの配合量が農薬のパッケージに記載されています。

厚生労働省による職場の安全データシートで使用されているのは、シアノホスの正式名称であるチオリン酸O-4-シアノフェニル-O,O-ジメチルです。また試薬メーカー各社が残留農薬検査用の標準物質としてシアノホスを販売していますが、この場合はシアノホスという名称が主に用いられています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/2636-26-2.html
https://www.env.go.jp/content/900540847.pdf

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