ステンレスヘアライン加工とは
ステンレスヘアライン加工とは、ステンレス板表面に髪の毛のように細いラインをつける加工です。
ステンレスヘアライン加工によって、金属表面につや消し効果を得ることができます。また、周囲にあるものを映り込みにくくしながら、金属としての光沢やある程度の反射など、金属らしい質感を保てることが特徴です。ステンレス鋼の表面処理には、鏡面処理もあります。
しかし、鏡面処理は技術的に難しいうえに、誤って傷をつけてしまうと消すのが至難の業です。その点ヘアライン加工は鏡面処理とは異なり、傷が目立ちにくく、つや消し効果によって高級感が増す効果も期待できます。そのため、ステンレスエアライン加工は、ステンレス製品の需要拡大に大きく貢献しています。
ステンレス鋼はもともと錆びにくい金属ですが、耐食性をより高めるために、さまざまな表面処理が施されており、ステンレスヘアライン加工もその一つです。またステンレスヘアライン加工には、「オーステナイト系」というSUS300番台のステンレスがよく使われています。
ステンレスヘアライン加工の使用用途
ステンレスヘアライン加工は優れた点が多く、幅広く利用されています。具体的には、鉄道車両、建材、精密機械、家電、キッチンやインテリア製品などです。
ステンレスヘアライン加工の優れた点の一つに、キズがついても目立ちにくいことがあります。その特性を生かしたのが、自動ドアのフレームや腕時計のフレームなどです。
その他、つや消し効果で高級感を出したい指輪をはじめ、装飾品関係でも好んで使われています。また、装飾品の分野では、研磨の仕方を変えることで割合簡単にデザイン性向上が図られることもヘアライン加工の魅力です。
加工の手間がベルト研磨機を使うことで軽減され、製作側にとってもコスト的にメリットが大きく、利用拡大につながっています。
ステンレスヘアライン加工の原理
ステンレスヘアライン加工の原理は、旋盤や研削盤、ベルト研磨機やサンドペーパー、研磨剤を用いた手作業などによって、ステンレス板の表面に模様をつけることです。平坦な金属表面に細かい凹み傷をつけることによって、金属表面の光沢を抑えながら模様を与えています。
また、ステンレスヘアライン加工では加工に使われる研磨剤や研磨方法によって分類されています。まず研磨剤で見ると、一般的なステンレス研磨に使用される研磨剤は「アルミナ系」や「青棒系」「グリーンライム系」です。どの研磨剤を使うのかは、製品の使用目的に合わせて選択します。
次にバフ研磨剤を使う場合、バフ研磨剤には固形と液状があります。特にエマルジョン系液状バフ研磨剤が、よく使用されています。その他にも、電解研磨やバレル研磨などもあります。それぞれ表面処理には、一長一短あり、使用目的やコストを勘案して選定されます。
ステンレスヘアライン加工の種類
ヘアライン加工は、仕上がったヘアラインの粗さや方向、加工の順番によっても分類されます。
1. ヘアライン
通常のヘアライン仕上げです。1方向にまっすぐの模様が与えられています。
2. スクラッチヘアライン
通常のヘアラインよりも短い線状の模様をつけたヘアライン加工です。スクラッチヘアラインは通常のヘアライン加工よりも、少し表面が粗いイメージを与えます。
3. ヘアライン・クロス
ヘアラインの模様を1方向だけでなく、直交させてつけた加工をヘアライン・クロスといいます。見た目に和紙のような印象を与えることができます。
4. デザインヘアライン
ヘアラインを織物状に加えたものをデザインヘアラインといいます。加工メーカーによりさまざまなデザインが行われています。
5. ウェーブヘアライン
ヘアラインを波状の曲線にしたものです。
6. アングルヘアライン
ヘアラインを矢羽根状につかたものです。製品をスタイリッシュに見せる効果があります。
いずれの加工でもステンレスヘアライン加工は、単一方向へ規則正しく加工する必要があります。そのために加工の難度は、やや高めと言えるでしょう。