ダイアジノンとは
ダイアジノン (化学式: C12H21N2O3PS) とは、殺虫・殺ダニ剤の有機リン系の殺虫剤に分類される農薬の1種です。
神経の情報伝達を行う興奮性神経伝達物質の1種であるアセチルコリンの分解酵素の作用を阻害します。その結果、害虫やダニに興奮を与え続けることになり、殺虫効果が発現します。
ダイアジノンは土の中にいる害虫からイモムシ類、アブラムシなど多くの害虫に効果があり、家庭菜園の方からプロの農家まで広く利用されています。さらに、他の有機リン系の殺虫剤と比較して、人など哺乳類に対する毒性が低いのが特徴です。
ダイアジノンの使用用途
ダイアジノンは、害虫の防除を目的に使用されています。使用方法や使用時期のバリエーションが多く、栽培体系や害虫の特徴に合わせて使用できることが特徴です。
特に効果を感じられる害虫は、ケラやネキリムシ類、コガネムシ類の幼虫など土の中に潜んでいる害虫です。土の中に潜む害虫は土壌害虫とよばれ、土の中にいることが多く、特定が難しく防除が困難と言われています。
ダイアジノンを土壌に散布し、鍬やトラクターなどで耕うんし土と混ぜます。土壌でガス化するため、直接害虫と接触した部分だけではなく、広範囲に害虫に対しての殺虫力を示します。
また、他の有機リン酸エステル系殺虫剤などによって薬害を生じやすい農作物においても、薬害が発生しにくいです。そのため、イチゴやニンジン、ダイコン、トウモロコシ、トマト、ウリ類など多くの農作物において防虫、殺虫剤として使用されます。
ダイアジノンの特徴
長所
- 幅広い農作物に、多くの使用方法で使用することができます。
- 散布後時間をあけずに定植や植え付けができる農作物もあるので、作業がスムーズになります。
- 土壌と混和するタイプでは、浸透移行性がなく農作物が根から農薬成分を吸収することはないので、安心して農作物を食べることができます。
短所
- 薬剤や散布機などのコストがかかります。コストに見合う成果がでるか検討して選ぶことが大切です。
- 形状や成分量の違いで異なる商品があります。商品によって登録作物や使用方法が異なるため、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。
ダイアジノンの種類
ダイアジノンは形状によって、次のような種類に分けることができます。
1. ダイアジノン粒剤
ダイアジノン粒剤は、形状が粒状になっています。ネキリムシ類やコガネムシ類の幼虫など土壌害虫に対する高い効果と幅広い農作物に登録があることが特徴です。
浸透移行性がないため、農作物の根から吸収されることはなく、散布された土壌内で効果を発揮します。散布方法は土壌混和や土壌表面散布、種類によっては無人ヘリコプター散布を行えるものもあります。
2. ダイアジノン水和剤
ダイアジノン水和剤は、形状が粉状になっています。水和剤なので、水に希釈して使用します。水に希釈すると不透明な液体になり、放置しておくと沈殿ができることが特徴です。
多くの果樹類に登録があり、アブラムシ、コナカイガラムシ、シンクイムシ、アメリカシロヒトリに高い防除効果があります。散布方法は希釈して農作物に散布を行います。
3. ダイアジノン乳剤
ダイアジノン乳剤は、形状が液体になっています。乳剤なので、水に希釈して使用します。水に希釈すると白色の乳濁液になります。
キャベツ、ナス、キュウリなどの野菜類に登録があり、アブラムシ、アザミウマ、コナガなどのイモムシ類に対して防除効果が高いです。また、芝にも登録があるため芝の害虫に使用できるのが特徴です。散布方法は、希釈して農作物に散布を行います。
ダイアジノンその他情報
ダイアジノンの使用上の注意点
- 1回の栽培において、使用できる回数が決まっています。また、同じダイアジノンが成分の農薬では総使用回数が決まっているので、全体の農薬使用回数にも注意が必要です。
- 散布時は手袋やマスクを着用し、目や鼻、肌に直接かからないよう注意が必要です。
- 解毒剤として硫酸アトロピン製剤およびPAM製剤があります。