酸化マンガンとは
マンガンは様々な酸化数をとることができる酸素とマンガンの化合物です。
酸化マンガンにもさまざまな種類が存在し、主にMnO、Mn3O4、Mn2O3、MnO2、Mn2O7などが知られています。酸化数の低いMnOは塩基性酸化物、酸化数の高いMn2O7は酸性酸化物、中間のMnO2などは両性酸化物です。
中でも特に重要な二酸化マンガン (MnO2) は、黒褐色の粉末です。加熱すると、酸素を発生して四酸化三マンガンを生じます。塩酸と反応させると、塩素を発生して塩化マンガンを生じます。
酸化マンガンの使用用途
酸化マンガンは、アルカリ乾電池の正極材に使用されます。リチウムイオン二次電池の正極材である、マンガン酸リチウムの原料としても用いられます。
また、強い酸化作用を持っているため、有機溶剤を製造する際の酸化剤として使われることも多いです。
そのほか、磁性材料であるフェライトの原料や、花火・マッチの原料や、ガラスの着色などにも利用されています。フェライトは、酸化鉄を主成分とした磁性体で、テレビやパソコンなどの家電製品に使われています。
酸化マンガンの性質
酸化マンガンの性質は種類ごとに異なります。
1. 酸化マンガン (II) (MnO)
酸化マンガン (II) は緑色の固体です。分子量は70.93、CAS番号は1344-43-0、比重は5.43〜5.48です。水に溶けません。神経機能障害を引き起こす可能性があり、特化則の特定化学物質 (管理第2類物質) に位置付けられています。
2. 酸化マンガン (Ⅱ,Ⅲ) (Mn3O4)
酸化マンガン (Ⅱ,Ⅲ) は褐色の固体です。分子量は228.79、CAS番号は1317-35-7、比重は4.856、融点は1705 ℃です。です。水にはほとんど溶けません。
3. 酸化マンガン (Ⅲ) (Mn2O3)
酸化マンガン (Ⅲ) は黒色の固体です。分子量は157.86、CAS番号は1317-34-6、比重は4.5、融点は1080 ℃です。水には溶けません。神経機能障害、呼吸器系障害を引き起こす可能性があり、MnOと同様に特化則の特定化学物質 (管理第2類物質) に位置付けられています。
4. 二酸化マンガン (酸化マンガン (Ⅳ)) (MnO2)
二酸化マンガンは黒褐色の固体です。分子量は86.94、CAS番号は1313-13-9、比重は5.03、融点は535 ℃、沸点は1962 ℃です。水にはほとんど溶けませんが、無機酸には溶けます。二酸化マンガンを触媒として、過酸化水素が酸素と水に分解する反応はよく知られています。
5. その他の酸化マンガン
上記以外に酸化マンガン (VI) (無水マンガン酸)、酸化マンガン (VII) があり、マンガンは様々な価数の酸化物が存在します。一般的な過マンガン酸塩としては、過マンガン酸カリウム (KMnO4) がよく知られています。過マンガン酸カリウムは強力な酸化剤であり、金属の表面処理、無機酸・有機酸の精製、浄水・下水の処理、などに用いられます。
酸化マンガンの種類
酸化マンガンは様々な鉱物に含まれます。
- ハウスマン鉱 (英: Hausmannite)
黒マンガン鉱とも呼ばれ、正方晶系で組成はMn3O4です。 - 軟マンガン鉱 (英: Pyrolusite)
正方晶系で、組成はβ-MnO2です。二酸化マンガンの中でも最も安定です。 - ラムスデル鉱 (英: Ramsdelite)
斜方晶系で、組成はγ-MnO2です。 - 緑マンガン鉱 (英: Manganosite)
等軸晶系で、組成はMnOです。 - ビクスビ鉱 (英: Bixbyite)
等軸晶系で、組成はMn2O3です。
酸化マンガンの構造
二酸化マンガン (MnO2) の結晶構造は以下が知られています。
- α型 (ホランダイト型)
- β型 (ルチル型)
- γ型
- δ型
- λ型 (スピネル型)
- R型 (ラムスデライド型)
オルソロンビック型の結晶構造を有します。
酸化マンガンのその他情報
1. 二酸化マンガンの製造方法
二酸化マンガンの鉱石を粉砕し、一酸化マンガンへ還元、硫酸へ溶解、精製で得られた高純度マンガン液を電気分解し、析出させます。電解以外の方法として、化学合成法によって得る方法があります。
2. ガラス中の酸化マンガン
ガラス組成に酸化マンガンが加わることで、紫色となります。原料は二酸化マンガンを主に用いますが、ガラス中ではMnO2またはMn2O3の形で入ります。
参考文献
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/tsusho_boeki/tokushu_boeki/pdf/021_02_01.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11305000/000654447.pdf