けい酸カルシウムとは
けい酸カルシウムとは、けい酸のカルシウム塩です。
構成元素の組成の違いから、20種類以上の化合物が存在します。その中でも、「オルトけい酸カルシウム」「けい酸三カルシウム」「メタけい酸カルシウム」の3種類が代表的です。略称としてケイカルとも呼ばれています。
けい酸カルシウムは、酸化カルシウムと二酸化けい素 (石灰石、珪藻土) の微粉を混合し、高温で反応させることで合成可能です。けい酸カルシウムは健康への害が見られず、食品添加物として認められています。
けい酸カルシウムの使用用途
けい酸カルシウムは、軽量、保温性、断熱性、不燃性、耐火性などの特徴から、建築材料として広く利用されています。また、農業分野においては、肥料の成分としても幅広く用いることも可能です。
けい酸カルシウムは、窯業の焼成において、収縮・気体発生・ひび割れ等を防止する添加材としても使用されています。さらに、ゴムの張力・剛性・耐熱性を改善するための添加材や塗料の耐久性を向上するための添加剤などとしても利用可能です。
けい酸カルシウムには、そのほか食品添加物の用途があり、ケーキングの防止剤として、ベーキングパウダーや食塩に添加して使用されている場合もあります。
けい酸カルシウムの性質
けい酸カルシウムの水和物は、加熱された際に水和水が脱水します。脱水のときの気化熱のために、材料の温度上昇を遅らせる効果があります。それに加えて、けい酸カルシウムには、不燃性や耐火性といった性質もあります。
けい酸カルシウムの構造
けい酸カルシウムは、けい酸塩類の1種です。二酸化けい素、酸化カルシウム、水などが、多種多様な割合で結合している組成物の総称です。
けい酸カルシウムは、微細構造をしており、結晶内部に多くの空隙を有しています。けい酸カルシウムの構造は軽量で、保温性や断熱性があります。
けい酸カルシウムのその他情報
けい酸カルシウムの化学組成の具体例
オルトけい酸カルシウム (Ca2SiO4) 、けい酸三カルシウム (Ca3SiO5) 、メタけい酸カルシウム (CaSiO3)n 以外にも、多種多様な化学組成のけい酸カルシウムがあります。
例えば、3CaO・SiO2、Ca3SiO5、2CaO・SiO2、Ca2SiO4、3CaO・2SiO2、Ca3Si2O7、CaO・SiO2、CaSiO3などが存在します。
1. オルトけい酸カルシウム
オルトけい酸カルシウムは、セメントクリンカー (英: cement clinker) の1〜4割に当たる主成分の1つです。セメントクリンカーはクリンカーとも呼ばれ、セメント原料が焼成されて、一部が溶融して硬く焼きしまって、粒状や塊状を形成したもののことを指します。
オルトけい酸カルシウムは、セメント業界ではけい酸二石灰 (英: belite) と呼ばれています。化学式はCa2SiO4、分子量は172.24です。四面体型構造の独立したSiO4で構成されています。
2. けい酸三カルシウム
けい酸三カルシウムは、五酸化けい素三カルシウムとも呼ばれます。化学式はCa3SiO5で、分子量は228.32です。固体中に四面体型の独立したSiO4とOを含んでおり、けい酸塩の酸化物と見なされます。
けい酸三カルシウムは、セメントクリンカーの4〜7割を占めている主成分です。セメント業界では、けい酸三石灰 (英: alite) と呼ばれています。
3. メタけい酸カルシウム
メタけい酸カルシウムの分子式は(CaSiO3)nで、分子量は116.16×nです。室温で安定なβ相の密度は2.9g/cm3です。
β相は天然にけい灰石 (英: wollastonite) として、α相は擬けい灰石 (英: pseudowollastonite) として産出します。β相は1,190℃に熱すると、α相へ変化します。