臭化カリウム

臭化カリウムとは

臭化カリウムとは、カリウムと臭素から構成される化合物で、白色の結晶体です。

臭化カリウムの融点は734°C、沸点は1,435°Cです。工業的に臭化カリウムは、水酸化カリウムと臭素の反応で生成した臭素酸カリウムを還元することで製造されています。臭化水素と水酸化カリウムの反応から生成することも可能です。

臭化カリウムの飽和水溶液に、エタノール等を加えて急速に結晶化させると、結晶ルミネセンスによる発光が見られます。

臭化カリウムの使用用途

臭化カリウムの単結晶は、赤外線に対して透明であるため、赤外線分光測定用のプリズムとして利用可能です。

臭化カリウムは生体内において、大脳皮質の中枢の興奮を抑制する効果があります。そのため臭化カリウムは医療分野で、神経鎮静剤や抗てんかん剤の原料として使用される他、錠剤の媒質としても多用されています。

また、写真用臭化銀の製造原料、現像液の原料、化学用試薬、石鹸など、その他幅広い分野でも使用可能です。

臭化カリウムの性質

臭化カリウムはアルコールには溶けますが、エーテルには難溶です。吸湿性が高く、潮解性を持つため、乾燥した容器中に保存する必要があります。

臭化カリウムは水に溶けやすく、水溶液中ではカリウムイオンと臭化物イオンに電離します。水溶液は中性を示し、pHは7です。

また臭化カリウムと硫酸が反応すると、臭素が遊離します。臭化銅(II)のような金属ハロゲン化物との反応によって、錯塩を形成します。

臭化カリウムの構造

臭化カリウムはカリウムの臭化物であり、化学式はKBrです。モル質量は119.002、密度は2.75g/cm3です。結晶構造は塩化ナトリウム型で、配位構造は八面体形を取っています。

臭化カリウムのその他情報

1. 臭化カリウムの合成法

臭化鉄 (Fe3Br8) と炭酸カリウムの反応による臭化カリウムの合成は、伝統的な方法です。水中で過剰の臭素 (Br2) と鉄くずを反応させることで、臭化鉄が生成します。

2. 臭化カリウムの光学的な応用

臭化カリウムは近紫外や遠赤外領域 (0.25〜25μm) に透過性を有し、プリズムや光学窓として用いられます。屈折率は1.0μmでおよそ1.55です。臭化カリウムは赤外吸収スペクトル (英: infrared spectroscopy) において、測定領域内に妨げになるピークがありません。臭化カリウムの粉末と試料を混合して、ペレット状に押し固めて、赤外吸収スペクトルを測定します。

固体核磁気共鳴 (英: Solid-state NMR) では、13C測定時のマジック角 (英: magic angle) の調整に利用されています。マジック角のずれに79Brの信号が鋭敏に影響するほか、共鳴周波数も13Cに近いです。

3. 臭化カリウムの医学や獣医学における応用

臭化物塩はてんかん (英: Epilepsy) に効果がある治療薬として、最初の報告例とされています。現在はドラベ症候群 (英: Dravet syndrome) において、クロバザム (英: Clobazam) 、スチリペントール (英: Stiripentol) 、トピラマート (英: Topiramate) 、バルプロン酸 (英: Sodium valproate) などと組み合わせて、臭化カリウムが使われています。

さらに臭化カリウムは、イヌへの抗てんかん薬としても使用可能です。フェノバルビタール (英: Phenobarbital) のみで効果がない場合の補助薬として用いられていますが、第一選択薬として利用される例も増えています。

4. 臭化カリウムの銀塩写真への応用

臭化カリウムはブロムカリとも呼ばれ、以前は銀塩写真の現像処理に多用されていました。現像液助剤における現像抑制剤として弱感光部への過度な現像作用を抑制できますが、最近は処方されない場合が多いです。ただし天体写真などには使用されることがあります。また定着液主剤に臭化カリウムが利用されていましたが、現在ではチオ硫酸ナトリウムが使用されることが多いです。

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