アミノピリンとは
図1. アミノピリンの基本情報
アミノピリンとは、ピラゾロン (英: pyrazolone) 誘導体の一つで、無色または白色の結晶です。
別名、アミノフェナゾン (英: Aminophenazone) やアミドピリン (Amidopyrine) とも呼ばれます。13Cで標識されているアミノピリンを使用した呼気検査は、肝機能試験でシトクロムP450 (英: Cytochrome P450) の代謝活性の非観血的方法として用いられています。
アミノピリンの使用用途
アミノピリンは、ドイツのヘキスト社 (英: Hoechst) により解熱鎮痛剤として販売され、広く使用されていました。アミノピリンが作用する主な理由は、発熱や痛みを引き起こす生理活性物質であるプロスタグランジン (英: prostaglandin) の合成を阻害できるためです。また、視床下部に作用するため鎮痛作用を有します。
しかし、アミノピリンによって、無顆粒球症を引き起こすなどの強い副作用が報告されました。さらに、発がん性物質であることが示唆されたため、現在は解熱鎮痛剤として使用されなくなりました。
アミノピリンの性質
アミノピリンは、クロロホルムとエタノールによく溶け、エーテルや水にも溶けます。融点は、107〜109℃です。わずかな苦味がありますが、においはありません。
光で変化します。還元性を有し、酸化剤が存在すると、青~紫色を呈します。また、ピラゾロン骨格を有しています。化学式はC13H17N3Oで表せます。分子量は231.29358です。
アミノピリンのその他情報
1. アミノピリンの合成法
アミノピリンの合成の歴史は、1884年にルートヴィヒ・クノール (英: Ludwig Knorr) によって、アンチピリン (英: antipyrine) 、塩酸、亜硝酸ナトリウムから、4-アミノアンチピリンが合成されたことで始まりました。
その後、1896年から1897年にかけて、ヴィルヘルム・フィレーネ (英: Wilhelm Filehne) が、4-アミノアンチピリンからアミノピリンを創製しました。
2. アミノピリンによる効能の比較
アンチピリンと同じく、アミノピリンには解熱効果があります。その効力は、アンチピリンのおよそ3倍です。
鎮痛作用は、アンチピリンやイソプロピルアンチピリンより強いです。
3. アミノピリンの副作用
1922年に頸部疾患が発症し、原因が無顆粒球症だと報告されました。アミノピリンが原因の血球減少は、因果関係が認められていましたが、その後も広く一般的に使われました。無顆粒球症の発生率は、日本人の場合は非常に稀です。ただし発生した場合の死亡率は、20〜50%です。
アミノピリンによって、消化管内でニトロソ化反応が起こります。この反応が発癌に繋がる可能性が指摘されたため、使用を禁止する国が増えました。1977年に日本でも経口での利用が禁止され、1979年に日本薬局方から削除されました。現在では一部の動物用医薬品としてのみ、注射剤が用いられています。
4. アミノピリンの薬物動態学
図2. ルバゾン酸の構造
グルクロン酸抱合によって、体内でアミノピリンは尿素と結合して、ルバゾン酸 (英: Rubazonic acid) などに変わって、尿中に排泄されます。このとき尿は赤色を呈します。
5. アミノピリンの関連化合物
図3. ピラゾロンの構造
アミノピリンは、ピラゾロン誘導体です。ピラゾロンとは、カルボニル基を持っており、複素環式化合物に分類される5員環のラクタムです。ピラゾリン (英: pyrazoline) の1個の水素基がカルボニル基に変換された構造であり、3-ピラゾロンや5-ピラゾロンが存在します。
アンチピリンやイソプロピルアンチピリンも、ピラゾロン誘導体です。