ビリルビンとは
図1. ビリルビンの基本情報
ビリルビン (Bilirubin) とは、有機化合物の一種でヘム (ヘム鉄) の分解代謝物です。
化学式C33H36N4O6で表され、4つのピロール環が直鎖状につながったチェーン状の分子構造をしています。人体・動物では胆汁または尿から排出されます。CAS登録番号は635-65-4です。
分子量584.66、融点192℃であり、常温では赤黄色から黄赤色の粉末です。水にはほとんど溶けず、ベンゼン、クロロホルム、クロロベンゼン、二硫化炭素、酸、アルカリには溶けます。エタノール、エーテルにはわずかに溶解します。
ビリルビンの使用用途
ビリルビンの数値は、血液検査において肺機能の指標として用いられています。なお、肝臓で処理される前のビリルビンを間接ビリルビン、処理された後のビリルビンを直接ビリルビン、両方をあわせたものを総ビリルビンと呼びます。
総ビリルビンの基準値は0.2~1.2mg/dLで、この値を超えると、黄疸のほか、肝炎、肝硬変、肝がんの病気が疑われます。ビリルリンは、赤血球中のヘモグロビンが壊れてできる色素です。肝臓で処理 (抱合) されて、胆汁として十二指腸に排泄されますが、肝臓の機能が障害されるとビリルビンを処理できなくなるため、血液中にビリルビンが大量に残ります。これが、皮膚が黄色くなる“黄疸”です。
ビリルビンは色素分子ですが、色素としての利用はあまりありません。動物の胆汁一般に広く含まれることから、各種研究に用いられることはあります。
ビリルビンの特徴
ビリルビンは、4つのピロール環を有する開環したチェーン状の構造を持ち、テトラピロールの一種に分類されます。この構造はヘムにおいては4つのピロールが大きなポルフィリン環を形成しているのと対照的です。
色素分子としての機能を持ち、吸収極大波長は451~455nmです。ビリルビンは、光を吸収するために海藻類で利用されている色素である、フィコビリンと大変良く似た構造をしています。
また、光に晒すとビリルビンの二重結合が異性化して水溶性が向上することが知られており、このことは新生児の黄疸における光線療法に利用されています。
ビリルビンの種類
生体内におけるビリルビンは、肝臓に運ばれる前と肝臓で処理された後で種類が分けられており、前者が間接ビリルビン、後者が直接ビリルビンです。直接ビリルビンは、胆管、肝臓が障害を受けると増えます。2種類を総称して総ビリルビンと呼んでいます。
生体内物質であるビリルビンですが、製品として販売されてもいます。一般的には、研究開発用試薬製品として販売されており、冷凍 (-20℃) での保管・輸送が必要な試薬です。容量の種類には、100mgや1gなどがあります。
ビリルビンのその他情報
ビリルビンの代謝
図2. ビリルビンの代謝
古くなったり損傷を受けたりした赤血球は、脾臓で分解されます。ビリルビンは、その際に分解されるヘムの分解生成物です。
ヘムは、ヘムオキシゲナーゼ (HMOX) によりビリベルジンに分解され、ビリベルジンがビリベルジンレダクターゼの働きにより還元されることにより、ビリルビンは生成されます。
図3. 抱合型ビリルビンの構造
ビリルビンは、血漿中のアルブミンであるタンパク質と結合して肝臓に運ばれますが、肝臓では肝臓においてグルクロン酸転移酵素によりビリルビンはグルクロン酸の抱合を受けます。
抱合により、ビリルビンはより水に溶けやすくなります。この反応を媒介するのは、ウリジン二リン酸-グルクロン酸転移酵素 (UDPGUTF) です。ビリルビンはこの形で肝臓から胆汁として分泌されます。