エチレングリコール

エチレングリコールとは

エチレングリコールとは、水やエタノールなどに溶けやすいという特徴を有した水溶性の有機化合物です。

空気中で酸化されにくく、安定しています。エチレングリコールは、室温においてやや粘性のある無色透明の液体であり、比重が1.11、沸点が197℃です。引火点が111℃、発火点が398℃です。消防法上では、第4類危険物 (第3石油類) に指定されています。

仮に、エチレングリコールを誤飲して体内で代謝されると、毒性を有するしゅう酸が生じるため人体に悪影響をおよぼします。したがって、取り扱いに注意を要する化合物です。

エチレングリコールの使用用途

エチレングリコールは、水に溶けやすく融点も低いため、水と混合されて不凍液の用途で多用されます。エチレングリコールの融点は約-13℃です。水の融点0℃よりもさらに低い温度にならないと凍結しない、不凍液を得ることができます。

また、エチレングリコールは、さらなる合成反応のための原料として使用されます。エチレングリコールを出発原料にして合成される化合物はいくつかあります。

エチレングリコールは、工業用原料として多量に使用されており、例えば日常生活でも多量に使われているPET樹脂の主原料の一つがエチレングリコールです。エチレングリコールから作られたPET樹脂は、合成繊維の一種であるポリエステル繊維などへと加工されます。

エチレングリコールの構造

エチレングリコールの構造 (分子構造) は、比較的単純です。具体的には、2つの炭素にそれぞれ-OHが結合した構造をしています。言い換えると、2つの炭素からなるエチレン部分と、エチレン部分に結合した2つのヒドロキシ基とで構成されています。

エチレングリコールは分子内に2つの-OH基を有する二価アルコールの1種です。別名で「エタン-1,2-ジオール」または「1,2-エタンジオール」と呼ばれる場合もあります。工業的には、エチレンオキシドから合成されます。

なお、エチレングリコールを分子構造式で表した場合、HO-CH2-CH2-OHで表されます。

エチレングリコールの性質

エチレングリコールの作用を発揮する原理は、分子構造に起因します。すなわち、疎水基であるエチレン部分と、親水基である2つのヒドロキシ基が分子中に同時に存在することに起因します。分子中に疎水基および親水基の両方を有するため、有機化合物でありながら水に溶解しやすい性質を有しています。

エチレングリコールは、さらに他の原料と反応させることが可能です。別の化合物を合成するための出発原料としてエチレングリコールを使用できます。分子中の-OH基をさらに化学反応させることが可能であるため、エチレングリコールから別の化合物を合成できます。

エチレングリコールのその他情報

エチレングリコールの危険性

世の中で汎用されているポリエステル繊維の主な原料がエチレングリコールであることから、工業分野においてエチレングリコールは多量に使用されています。他にも、エチレングリコールは塗料の溶媒 (セロソルブなど) を合成するために使用されます。エチレングリコールから合成された溶媒は、さまざまな物質を溶解させやすいです。

エチレングリコールを誤って飲み込むと、体内でシュウ酸などへ変化します。シュウ酸は尿管結石症を引き起こし、腎臓障害の原因となり、最悪の場合は死に至る可能性もあるため、注意が必要です。エチレングリコールの致死量は、年齢や体重によって変わりますがヒトの場合で約100g程度といわれています。

なお、エチレングリコールは若干の甘さを有するため、不凍液等に含まれているエチレングリコールをペットが誤ってなめてしまう場合があります。致死量を超えるエチレングリコールを飲み込むと大変危険なので、家庭内においてはエチレングリコールを含む不凍液の徹底した管理が求められます。

参考文献
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-1/hor1-1-14-1-0.htm
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/E0105

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