タッパとは
タッパは、鋼材などにネジ穴を加工するためのタップをつかみ、固定する機構をもつ工具です。
JIS C 9745-2-9では、めねじの切削を意図した手持ち形電動工具としてタッパが定義されています。よって、規格としてのタッパは手に持つことができ、電気を使用した工具のことを指します。
ただし、工作機に取りつけて加工を行うことを目的とするものや、手で回すハンドドリルタイプのもの、圧縮空気を使用して先端に取り付けたタップを回転させる工具なども含めて、広い範囲をタッパと呼ぶこともあります。タッパー、タップホルダなど多様な呼び方の揺らぎがありますが、タップを保持するアダプタがある点はすべてのタッパに共通しています。
タッパの使い方
使用するタップのシャンク部を、タッパの差込口に固定します。固定方法は各タッパにより異なりますが、手持ち電動工具としてのタッパはドリルチャックなどの取付方法があります。
よくあるドリルチャックの固定方法には、キー付きとキーなしがあります。キー付のドリルチャックでは、チャックハンドル(チャックキー)を3箇所ある側面の穴に差し込んだ状態で回転させ、チャック部分を開閉させます。開いた状態でタップのシャンク部を入れ、均等に3箇所の爪でチャックできるように、チャックハンドルを回転させて固定します。キーレスドリルチャックではチャックハンドルを使用せず、タップのシャンク部を挿入してからリングを回転させるだけで固定させることができます。
タップが固定できたら先に下穴を空けてあるネジ穴の加工予定位置に、タップ先端がまっすぐに当たるよう軽く押し付けてタッパを動作させると、ネジ穴を加工できます。必要以上に力強く押し付けるとネジ穴が潰れたり、タップが破損したりするため注意が必要です。
タッパの選び方
手持ち形電動タッパについて、選定の際に気を付けるべき点には、以下のようなものがあります。
- タッピング能力
各タッパで加工可能なネジ穴サイズは異なります。機械構造用炭素鋼 (S45C)へのネジ穴を加工することを想定した切削トルクなどから決まっています。加工したいネジサイズが対応しているかは必ず確認するようにしましょう。
また、タップ自体に被加工材によっては材質変更が必須となる場合があるのと同様に、タッパも推奨していない被加工材のある機種もあります。特殊な金属などへの加工を想定しているのであれば、購入前にメーカーへ問い合わせをしておきましょう。
- 対応できるタップシャンク寸法
タップを固定するためにシャンク部分の形状は重要になります。使用タップのシャンク寸法に対応しているタッパであることの確認は必須です。JIS規格でないタップを使用する場合は、特注の対応が必要になる場合もありますので特に注意してください。 - 回転速度
切削条件を確認し、許容される回転数のタッパであるかは確認しておきましょう。回転数は、切削速度とタップ形状から計算できます。これに比べて、切削速度は、被加工材によって、切削にある程度の目安が存在しています。アルミや鋳鉄、プラスチックなどよりもステンレス鋼の場合には、切削速度を遅くする必要があります。
つまり、特にステンレス鋼では、回転速度を遅くする必要が出てくるため、注意が必要です。回転速度の調整機構のあるタッパもありますので、不安であれば調整機構の有無を確認しておきましょう。
- 下穴加工の有無
ネジ穴の加工の前には下穴の加工が必須ですが、下穴の加工に対応していないタッパもあります。別途下穴用のドリルが用意できない場合は、下穴の加工に対応できるかという点も考慮するべきでしょう。 - 電動の必要性について
そもそも電動である必要があるかという点は購入前におさえておきましょう。サイズがM6程度までのネジ山の潰れ対応などが主であれば、手動でネジ穴をあけるタップドリルセットなどで十分であることもあります。また、電気が使えない場所での使用であれば、もちろん電動タッパは購入の検討対象にはできません。別動力のタッパを検討しましょう。