紫外線硬化型接着剤とは
紫外線硬化型接着剤とは、紫外線の照射によって硬化する接着剤のことです。
UV (ultraviolet) 硬化型接着剤とも呼ばれ、一般的な乾燥硬化型接着剤と比較して、速硬化性に優れており、硬化時の体積変化が小さいことが特徴です。また、熱を加える必要がないので、耐熱性の低いプラスチック材料の使用に向いています。
一方で、紫外線が照射される部分しか硬化しないため、入り組んだ複雑な構造物への使用には向いていません。また、使用する接着剤が多い場合、充分に硬化しないことがあります。
紫外線硬化型接着剤の使用用途
紫外線硬化型接着剤の利点は、瞬間的な硬化と高い接着強度、透明性、耐候性、耐熱性、耐薬品性があります。また、溶剤を含まないため、環境にも優しいとされています。
ただし、使用する際には紫外線照射装置が必要です。また、紫外線が届かない部分は硬化しません。
1. 電子機器・電子部品
プリント基板の接着やコンポーネントの固定、ワイヤーの保護、液晶ディスプレイの組み立て等。
2. ガラス・光学
ガラスの接合や補強、レンズやプリズムの組み立て、光ファイバーの接続等。
3. 自動車業界
ヘッドライトやテールライトの製造、内装部品の固定、エンブレムの接着等。
4. 医療・歯科
歯科用の充填材やセメント、医療機器の組み立てや修理等。
5. プラスチック・樹脂
合成樹脂やプラスチックの接着や成形、成型品の補修等。
6. 宝飾品・アクセサリー
金属やガラス、石の接着や装飾品の修理等。
紫外線硬化型接着剤の原理
紫外線硬化型接着剤には、モノマーやオリゴマー、光重合開始剤、添加剤などの成分が含まれています。紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射すると、光重合開始剤が紫外線を吸収し、光重合開始剤の種類によって、ラジカル、カチオン、アニオンのいずれかを発生させます。
この開始剤が発生させる重合種によって、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれかで、分子量の小さなモノマーやオリゴマー同士が結合し、分子量の大きなポリマーになることで硬化する仕組みです。
ラジカル重合タイプは硬化速度が速く、一般的に広く使用されています。カチオン重合タイプやアニオン重合タイプと比べて、モノマーやオリゴマーの合成が容易であるため、要求される性能に応じて樹脂の成分を変化させることが可能です。
一方で、カチオン重合タイプやアニオン重合タイプは硬化時の収縮が小さいことが特徴で、材料を加圧して形状を整えられない場合や精度が要求される場合に効果的です。
紫外線硬化型接着剤の種類
紫外線硬化型接着剤は、構成するモノマーの種類に応じてさまざまな特性を持つものが作れます。紫外線硬化型接着剤に含まれるモノマーを以下に記載します。
紫外線硬化型接着剤に使用されるアクリル系モノマーの例として、単官能アクリレートや2官能、3官能などの多官能アクリレートが挙げられます。
1. 単官能アクリレート
単官能アクリレートは、2官能や3官能アクリレートと比較して重合反応部位が少ないので、樹脂の架橋密度を低減できます。それにより、樹脂の粘性を減少させる、重合反応性を増加させるなどの効果が期待できます。
単独で使うよりも他のモノマーやオリゴマーと混ぜて、接着剤の性質を調節する目的で使用します。
2. 2官能・3官能アクリレート
二次元的な架橋構造を作ることができるので、接着剤の強さが向上します。また、耐溶剤性や硬度を高めることができます。これらのアクリレートは反応部位が多く、短い時間で硬化するので、作業性の面で効率が良いです。
しかしながら、2官能や3官能アクリレートの添加量が多すぎると、その分反応部位が多くなってしまうので、全体の重合率が悪くなる可能性があります。また、重合反応時の接着剤の収縮が大きくなってしまい、基材への密着性が悪くなる、基材が湾曲するなどの問題が生じることがあります。
紫外線硬化型接着剤のその他情報
1. 紫外線硬化型接着剤の使い方
広く使用されている熱硬化型接着剤と同様に、塗布したい箇所に適量塗布します。次にUVライトなどの紫外線照射装置を使って、接着剤を塗布した部分に紫外線を照射すると、すぐに硬化が始まります。
短時間で硬化反応が終了し、接着完了です。このように、紫外線硬化型接着剤の使い方は非常に簡単なので、誰でも気軽に使うことができます。
2. 紫外線硬化型接着剤の注意点
紫外線硬化型接着剤の使用上の注意点は、主に2つあります。1つ目は、使用する紫外線の照射強度を適切に設定する必要があることです。強度が大きい場合、接着剤の硬化反応がすぐに進行しますが、過度に大きいと接着剤の表面のみで硬化反応が進行し、内部が充分に硬化しないことがあります。
そのため、接着強度が小さくなる可能性が考えられます。また、強度が小さすぎると、照射により発生したラジカルの量が少なく、空気中の酸素と反応してしまうため、硬化が不充分となることがあります。
2つ目は、接着剤を塗布した箇所に紫外線を到達させる必要があることです。接着剤の特性上、塗布される部分のほとんどが入り組んだ部分や接着するもの同士の間です。そのため、硬化に必要な紫外線が接着剤まで届かず、硬化が不充分となることがあります。接着剤を塗布した部分にしっかりと紫外線が照射されるように工夫が必要です。
参考文献
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