トリアセテートとは
トリアセテート (英: tri-acetate) とは、繊維の原料として有名な化合物で、半合成繊維 (英: semi-synthetic fiber) の一種です。
半合成繊維の原料は植物由来の木材パルプや動物から天然繊維として採取し、工場などで化学的に処理します。トリアセテートの原料は植物由来であり、環境にもやさしく加工が容易な繊維として注目されています。
トリアセテートの使用用途
植物由来であるトリアセテート繊維は衣類や生活用品などに使用されています。和服、シャツ、ネクタイ、スカーフ、洋服の裏地、傘の羽の部分、カーテン、小物類がトリアセテートを使用した代表的な製品です。
タバコのフィルター部分にもトリアセテート繊維が使用される場合もあります。トリアセテート繊維の吸湿性によって口にくわえている状態でもタバコの葉が湿気るのを防ぎます。
トリアセテートの特徴
トリアセテートは木材パルプを原料とし、酢酸による化学処理で生成します。木材パルプの基本骨格であるセルロースの水酸基 (-OH) を酢酸基 (-OCCH3) に置換した化学構造を持っており、厳密には92%以上が酢酸基に置き換わっています。
吸湿性、保湿性、繊維の中でも軽い、絹のような光沢性、高い弾力性、熱可塑性、染色しやすい点などがメリットです。とくに光沢性があるため弾力性により高級感を持つ衣類を製造可能です。撥水性も高く、アウトドア製品の素材にも向いています。
デメリットは耐アルカリ性、耐熱性、強度などが低く、排気ガスにより変色し、マニキュアの除光液などに溶ける点です。除光液や排気ガスがトリアセテート繊維に付着して内部に染み込むと染料分子が分解し、色落ちや変色に繋がります。
トリアセテートの構造
アセテート繊維 (英: acetate fiber) にはトリアセテート、ジアセテート、アセテートがあります。トリアセテートやジアセテートは酢酸基の数が違います。
1. トリアセテート
アセテート繊維に3個の酢酸基が結合しています。
2. ジアセテート
アセテート繊維に2個の酢酸基が結合しています。
3. アセテート
酢酸基が1個だけ付いたアセテート繊維です。ただしアセテートは繊維の名称としても使用され、アセテートにトリアセテートやジアセテートも含まる場合もあります。アセテートはジアセテートを示すことも多いです。
トリアセテートの選び方
トリアセテートにはジアセテートと共通した特徴や異なる特徴があり、ジアセテートとはメリットとデメリットが違います。
1. 発色性
アセテートには染色しやすい繊維が多く、トリアセテートの発色性はジアセテートよりも優れています。淡色から濃色まで、色の幅が広いです。光沢感がありドレスのような高級感を持つ衣料品やインテリア資材に使用されます。
2. 強度
トリアセテートは強度が必要な衣料品に向いています。ジアセテートより化学繊維としての要素が強いためです。セルロースから作られる繊維は水を吸いやすく、水分を含むと強度が低下する場合があります。ジアセテートと比べてトリアセテートの吸水性は半分程度で、濡れても強度が下がりにくくシミにもなりにくいです。
3. 弾力
トリアセテートの肌触りは柔らかく弾力があります。化学繊維としての要素が強いトリアセテートはジアセテートと比較してシワになりにくいです。
4. 耐熱性
ジアセテートよりもトリアセテートには耐熱性があり、加工の幅が広く、熱セット性に優れています。アセテート繊維は熱により変形するため、シワ加工にも適しています。
5. デメリット
トリアセテートにペンキ屋除光液が付くと繊維が溶けます。ストーブや車から出るガスに弱く、変色や退色の原因になります。アルカリに弱いため、アルカリ性の粉末洗剤や石鹸は使用できません。着用時にはシワができにくいですが、洗濯で脱水してもシワが取れにくいです。