グリーンレーザーとは
グリーンレーザーとは、可視光領域である波長532nmの光を発振できるレーザーの総称です。
目で見ると緑色の光に見えるのが特徴です。基本波長で生成されたレーザー光が非線形結晶を通ると532nmの波長となります。
結晶を通すとエネルギーが落ちますが、緑の波長は集光性に優れているため、微細加工やマーキングなどによく使用されます。Nd:YAG、Nd:YVO4、Yb:YAGの結晶を使用した個体レーザー、もしくは半導体レーザーが多く用いられます。
グリーンレーザーの使用用途
グリーンレーザーは、建築現場などで平行、垂直な基準線を投射する墨出し器、会議などで使うレーザーポインターに使用されています。
理科学分野では、ラマン分光、蛍光分析、レーザー干渉計、ホログラフィーなどです。工業分野では、ダイシング、ドリリング、スクライビングといった微細加工、ウエハマーキング、PCBカッティング、マーキングなどにグリーンレーザーが搭載された加工機がリリースされています。
グリーンレーザーの原理
532nmの波長は第二高調波 (英: Second Harmonic Generation) とも呼ばれます。第二高調波は非線形光学の波長変換作用です。ある周波数の光をある物質に入れると、整数倍の振動数の光が放出される現象を利用して532nmの光を生成しています。
基本波長となる1,064nmを発生させ、その光を非線形結晶 (LBO結晶) を通すと1,064nmの半分の値である532nmの波長となって放出されます。基本波長である1,064nmは、Nd:YAGレーザー (ネオジムがドープされたイットリウム・アルミニウム・ガーネットの結晶を用いた固体レーザー) や、Nd:YVO4レーザー (ネオジムがドープされたイットリウム・四酸化バナジュームの結晶を用いた固体レーザー) でなどで生成されます。
非線形結晶を通した場合の変換効率は100%ではありません。そのため、532nmの光のエネルギーは低下します。しかし、この波長の吸収率が良い素材 (金属) に対する加工の面や、基本波よりもビームが絞りやすいという面から、微細加工や半導体分野でも活躍しています。
グリーンレーザーのその他情報
1. LBO結晶
前述したLBO結晶は、三ホウ酸リチウムと呼ばれる物質でできています。LBO結晶は160nm〜2,600nmと広範囲の透過波長範囲を持った物質です。レーザー光は可視光領域と比較しても長い長波長の光ですが、透過波長範囲内のため透過可能です。
レーザー光は基本波長である場合、物質に照射すると整数倍の周波数となって出力される特徴があります。LBO結晶は非線形結晶です。非線形結晶に対して光を入射されると、入射光と結晶内の原子が相互作用することで2倍のエネルギーを持つ光が出力されます。
このとき、位相は入射光から保たれたまま出力されることが大きな特徴です。レーザーでは出力される光が同位相であることが強度を出すために重要なため、LBO結晶が使用されています。
元の2倍のエネルギーを持った出力光は波長は半分になっています。そのため、基本波長が入力光の場合、出力光は緑の可視光領域の光です。
2. 銅加工の特徴
レーザーは銅を加工する際にも使用されます。グリーンレーザーは、他波長のレーザーと比較して正確な銅加工が可能です。
基本波長のレーザーを銅に対して照射した場合、照射後にできるスポット径は同じ条件であってもバラつきがあります。対して、グリーンレーザーでは照射後のスポット径のバラつきは少ないです。
これは銅が持つ光の反射率が基本波長の場合は98.5%以上と非常に高い値を取る一方で、グリーンレーザーでは60%程度と低い値を取ることに起因します。上記の理由からバラつきの少ない銅加工が可能です。
参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/marker/lasermarker/basics/principle.jsp
https://www.hikalikk.jp/2020/06/25/harmonic/