アンギュラベアリングとは
アンギュラベアリングとは、軸と平行な方向の荷重(アキシアル荷重)と、1方向の軸と直角方向の荷重(ラジアル荷重)とを同時に支持できるベアリングのことを言います。
深溝ベアリングと類似していますが、違いがあります。深溝ベアリングの外輪の溝は、軸方向に左右対称ですが、アンギュラベアリングは、ある角度で外輪の溝が斜めの方向になっています。これにより、アキシャル・ラジアルの両荷重を支持できます。
アンギュラベアリングは、ポンプ・各種コンプレッサ・プレス機・エレベーター巻上機などの軸支持に使われます。
アンギュラベアリングの使用用途
アンギュラベアリングは、複数個をセットにして使用します。この場合、複数の組み合わせ方を変えて、単一の方向もしくは両方向のアキシアル荷重を支持できるように設計します。
1. 単列型
2個のベアリングを対向させ、内部すきまを調整して使用します。ラジアル荷重と1方向のアキシアル荷重を支持できます。軸受の剛性と回転精度が要求される工作機械の主軸などの用途に適しています。また、ポンプ・各種コンプレッサー・スクリュー冷凍機・エレベーター巻上機などにも使用されます。
2. 複列型
1個のベアリングの中に、一対のアンギュラベアリングを背面組合せ相当とした構造です。両方向のアキシアル荷重が支持できます。また、モーメント荷重を支持できるので、固定側ベアリングとして使用します。コンプレッサー・プレス機・無人搬送車・ベルトコンベアなどで使われます。
3. 組合せ型
単列タイプのベアリングを複数組み合わせます。外輪の正面を合わせた正面組合せ・背面を合わせた背面組合せ・同じ向きの並列組合せがあります。アキシアル荷重が単一方向ならば大きな負荷の支持が可能です。用途は、ポンプ・コンプレッサー・スクリュー冷凍機・エレベーター巻上機などです。
アンギュラベアリングの原理
アンギュラベアリングは、接触角を有することで、ラジアル荷重とアキシアル荷重をともに受けることが可能です。接触角とは、ベアリングにラジアル・アキシアルの両荷重がかかるとき、軸に直角な方向と、軌道輪と転動体との間にかかる荷重方向との角度を言います。
接触角が大きいほど、アキシアル荷重を大きく受けることができ、接触角が小さいほど、使用範囲が高速まで広がります。
ラジアル荷重がかかることによって、軸方向の負荷であるアキシアル荷重に分力が発生するため、複数のベアリングを合わせて用いて分力に対応しています。
アンギュラベアリングのその他情報
1. アンギュラベアリング向き・組付け
アンギュラベアリングは接触角があるため、複数で使用します。組付け方法は、背面組合せDB形・正面組合せDF形・並列組合せDT形・そのほかの3個以上の組合せなどがあり、それぞれ特性があります。
DB形は、ベアリングの背の面同士を合わせて組付ける方法で、一番多く用いられている組合せです。ラジアル荷重と両方向のアキシャル荷重に対応できます。組合せの中で一番大きなモーメント荷重を受けることができます。
また、ベアリングが与圧タイプの場合、内輪をナットでセットするだけで適切なすきま調整が可能です。DF形は、ベアリングの正面同士を合わせて組付ける方法で、ラジアル荷重と両方向のアキシャル荷重に対応できます。モーメント荷重を受ける能力はDB形の方が優れています。
与圧対応の場合、外輪を押さえることで適切な隙間が得られます。DT形は、ベアリングを同じ向きに重ねる方法で、ラジアル荷重と1方向のアキシャル荷重に対応できます。アキシャル荷重を2個のベアリングで受けるので、片側方向のアキシャル荷重が大きい場合に使います。
2. 与圧
アンギュラベアリングのように2個のベアリングを対向させて使う場合、アキシャルすきまを負のすきまで使うことがあります。このような状態を「与圧を与える」といい、より大きなモーメントに対応できます。
特に、DB形(背面組付け)でこの効果が望めます。2つのアンギュラベアリングを背面組付けにすると、それぞれの接触角が開くため作用点の距離が大きくなり、モーメントに耐えることができるからです。
与圧は、モーメント対応力が大きいほかに、高速回転に適応できる、軸受の位置決め精度・回転精度が向上する、振動・異音が抑制される、などの効果があります。予圧レベルは通常、軽・中・重予圧の3種類があります。
予圧はリング端面を研磨することにより、内外輪の間に段差を設けることで設定します。また、内外輪スペーサの幅を段差加工することにより予圧の増減が可能です。
参考文献
https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html
https://www.nsk.com/jp/products/ballbearing/angularcontact/
https://www.jbia.or.jp/about/a_01_2.html
https://kashima-kagaku.com/column/1811-2/