酸化リチウム
酸化リチウム (英: Lithium oxide) とは、組成式Li2Oで表されるリチウムの酸化物です。
分子量29.881、融点1,570℃、沸点2,600℃であり、常温での外観は無色結晶となっています。なお、CAS登録番号は12057-24-8です。
酸化リチウムの使用用途
酸化リチウムの主な使用用途は、導電性ガラス、電池、固体電解質の製造などです。釉薬にも用いられ、銅と混合して青色に、コバルトと混合してピンクを出すのに用いられています。
熱遮蔽コーティング (Thermal barrier coating; TBCs) においては非破壊的発光分光分析検査や劣化の評価に用いられる場合があります。また、ジルコニアコーティングにおいては、酸化イットリウムと共にドーピング剤として用いられる物質です。
酸化リチウムの性質
酸化リチウムは、リチウムイオンLi+と酸化物イオンO2−からなるイオン結晶です。密度は2.013g/mLであり、水と反応して (発熱反応) 水酸化リチウムを生成します。酸化リチウムは、他のアルカリ金属酸化物よりも熱力学的に安定な物質です。
結晶構造は、立方晶系の逆蛍石型構造を取ります。この構造は、酸化カリウムおよび酸化ナトリウムと同様のものです。リチウムイオンLi+は正四面体4配位、酸化物イオンO2−は立方体8配位となっており、格子定数はa = 4.61Åです。
酸化リチウムの種類
酸化リチウムは、一般的には主に研究開発用試薬製品として販売されています。容量の種類には、5g、10g、25g、100g、500gなどがあり、実験室で取り扱いやすい容量での提供が一般的です。
水との反応性が高く吸湿性も高い物質ではありますが、適切な保管環境においては安定であり、通常は室温で保管可能な試薬製品として扱われています。アルゴンを封入した状態で販売されている場合もあります。
酸化リチウムのその他情報
1. 酸化リチウムの合成
酸化リチウムは、金属リチウムを空気中または酸素中で燃焼させることによって合成可能です。本反応のような酸素との反応では、過酸化リチウムLi2O2および超酸化リチウムLiO2は生成しません。
その他の方法では、銀箔に包んだ無水水酸化リチウムをニッケルボート中で減圧下675℃に加熱することで分解生成物として合成したり、炭酸リチウム (700℃で50時間減圧下で加熱) や、無水過酸化リチウム (ヘリウム中で450℃で6時間加熱) などの分解反応で合成することもできます。
2. 酸化リチウムの化学反応
酸化リチウムは、水蒸気および二酸化炭素を吸収しやすい性質がある物質です。二酸化炭素との反応によって炭酸リチウムを生成します。また、水とは徐々に反応して、水酸化リチウムを与えます。
光によって変質する恐れがあるため、保管環境においては高温と直射日光を避ける必要があります。また、強酸化剤は混触危険物質であり、想定される危険有害な分解生成物は金属酸化物です。
3. 酸化リチウムの有害性と法規制情報
酸化リチウムは、GHS分類において以下に指定されています。
- 急性毒性-吸入 (粉じん/ミスト) : 区分3
- 皮膚腐食性/刺激性: 区分1
- 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性: 区分1
- 生殖毒性: 区分1A
- 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分1
上記のように、人体への有害性が高い物質です。取り扱いの際は、保護メガネ、保護手袋や防塵マスクなどの適切な個人用保護具を用い、使用環境ではよく換気を行います。
また、取扱い後には顔や手など、 ばく露した皮膚を洗う必要があります。目に入った場合は、コンタクトレンズの着用有無に関わらずまず水で数分間注意深く洗浄することが必要です。
毒物及び劇物取締法や、消防法、労働安全衛生法などでの指定はありませんが、危険物船舶運送及び貯蔵規則や、航空法では、腐食性物質に指定されています。法令を遵守して適切に取り扱うことが必要です。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0112-0606JGHEJP.pdf