分留装置

分留装置とは

分留装置

分留装置とは、2種類以上の液体の混合物から蒸留の工程を繰り返すことで、沸点の異なる液体を分離する装置です。

物質は固有の沸点を持ちます。この性質を利用して一度液体を蒸発させ、再び凝縮させることで物質を分離できます。この蒸留操作を複数回行うことで、より純度の高い液体を得るられます。

多段の分流管から構成され、低沸点成分を効率的に取り出すことが可能です。

分留装置の使用用途

分留装置は、一般的に石油や液体空気の成分分離に使用されることが多いです。原油は、石油ガスやナフサ、灯油、軽油、重油などから構成されており、それぞれ異なる沸点を持っています。分留装置により分離し、燃料や石油化学製品の原料などの様々な用途に使用されます。

大気中に存在する窒素、酸素、アルゴンなどの液化ガスも空気から分離して製造されており、沸点の違いを利用して分留します。この操作により、高純度のガスを大量に得ることが可能です。

その他にも、医薬品製造や化学製品製造など、多岐にわたる分野で分留装置は活用されています。

分留装置の原理

分留とよく似た意味の操作に蒸留があります。蒸留も複数の物質の混合物を、沸点の違いを利用して分離する操作です。蒸留の場合、混合物の中身の状態 (固体、液体、気体) や数は特に決まっておらず、沸点の違いで分離を行う操作全般を指します。

一方で、分留は2種類以上の液体の混合物から、液体を分離する操作のことです。代表例として、原油から軽油、灯油、重油などを得るプロセスがあります。

水・エタノールや水・塩化水素のように共沸混合物を形成する場合には両者を完全に分離できません。共沸とは、混合物が沸騰する際に、気相の組成比が液相と同じになる現象です。共沸混合物の場合は、石油化学などで広く利用される分離精製法を使用します。

分留装置の構造

分留装置は多段の分留管から成り、蒸留フラスコの先端と接続します。フラスコからの蒸気が分留装置の内部を上昇するにつれて、高沸点成分から徐々に凝縮し始めます。凝縮した液体は再びフラスコの内部に戻り、低沸点成分のみが上昇を続けます。分留装置の中では、このような工程が複数回繰り返される仕組みです。

構造に応じて、分留管はビーグロー分留管やヘンペル分留管、シュナイダー分留管などを使用します。ビーグロー分留管は、簡単な分留管で溶媒精製によく用いられています。ヘンペル分留管は、中にらせん状のガラス板が入っており、ビーグロー分留管と同様に簡単な分留管です。シュナイダー分留管は管の数か所が絞られ、中空のガラス玉が封入されています。飛沫の混入を著しく抑えることができます。

分留装置のその他情報

1. 原油の分留工程

原油は、地中から採掘された後、精製所に運ばれます。原油を加熱して蒸発させ、沸点の違いから留出する成分を分離するのが目的です。具体的な工程を説明します。

加熱 (加熱炉)
タンクから原油が加熱炉に送られ350℃以上の高温に加熱されます。原油は様々な物質の混合物であり、それぞれの成分は異なる沸点を持っています。加熱により、原油は蒸気状になります。

分留 (分留塔)
加熱された原油は、分留塔と呼ばれる分留装置に送られます。分留塔の下部から原油の加熱蒸気が導入されます。分留塔の上部に上がるに従い温度が下がっていくため、沸点の高い物質はより下部で、蒸気から液体に液化されて分離されます。このように沸点が低い成分ほどより上段、高い成分ほどより下段で液化して分離されます。

2. 原油の分留により分離できる成分

重油を分留すると、分留塔の各段ごとに沸点の高さに従った成分が得られます。

分留塔の下部
分留塔の下部からは留出しきれなかった成分やより高沸点の成分が残ります。この部分からは、重油やアスファルトの原料などの重い石油製品が得られます。

分留塔の中部
分留塔の中部までは、比較的高い沸点の成分が蒸気として上昇します。これらが冷却され液化されることで、軽油や灯油、ジェット燃料などが含まれます。

分留塔の上部
分留塔の上部までは、比較的低い沸点の成分が蒸気として上昇します。これらが冷却され液化されることでガソリンやナフサが得られます。ナフサは様々な石油化学製品の原料になる成分です。

ガス成分
分留塔の上部までに液化せずに、ガスとし回収される成分ででLPガスなどが含まれます。

参考文献
https://www.kiriyama.co.jp/dcms_media/other/

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