石膏鋳造

監修:有限会社モールドモデル

石膏鋳造とは

石膏鋳造

図1. 石膏鋳造の様子

石膏鋳造 (英: Plaster mold casting) とは、石膏で型を作って鋳造する方法のことです。

金型を使わない鋳造法の一種で、石膏型に溶解したアルミニウムやマグネシウム、亜鉛等の金属を流し込み、製品を作ります。最も多く使用されている材料はアルミニウムです。ダイカスト等による量産を前提とした製品の試作や、小ロット生産での複雑な形状や精度が要求される製品の製作に適した工法です。

金型を使用しないため、製作期間の短期化、低コスト化、また図面変更や設計自由度の向上が実現できます。石膏鋳造は減圧鋳造により行われ、薄肉部やピン形状部にも金属の充填が可能です。また、石膏のきめ細かさから、複雑な形状から面粗度の滑らかさが要求されるものまで鋳造できます。

石膏鋳造の使用用途

石膏鋳造を用いた金属加工法は形状が複雑な金属製品の試作や小ロット生産に使用されます。ダイカスト並みの精度、滑らかな面祖度、また、ダイカスト量産と同じ素材で製作できるため、自動車関連部品を代表として、電機機械部品、医療機器などの分野で使用されるほか、工芸品等の分野でも使用されています。

石膏鋳造の原理

石膏鋳造は図面を入手し、コンピュータ支援設計 (CAD) やコンピュータ支援製造 (CAM) によって作られた鋳物粗材形状の3Dデータに基づいてマスターモデルを作成します。

型枠を作成してシリコーンを流し込んでマスターモデルを転写し、一次型を作成します。一次型を二分割して型枠にセットし、シリコーンを流し込んで一次型を転写すると二次型を作成可能です。石膏型に溶融したアルミニウムを流し込んで鋳物を製作し、型ばらしやバリ取りのような仕上げ作業を行います。これらの工程を経て、例えば自動車のミニチュアなどを製作することができます。

石膏鋳造の構造

使用する石膏には乾燥強度、鋳造性、浸透性、生強度を向上させる添加剤が含まれています。成分比率は石膏が70~80%で、添加剤が20~30%です。滑石 (英: Talc) や酸化マグネシウム (英: Magnesium oxide) を添加するとひび割れが防止でき、硬化時間を短縮可能です。石灰やセメントは焼成中に膨張を抑制し、ガラス繊維は強度を高め、砂は充填材として働きます。

石膏の最高使用温度は1,200℃程度のため、石膏鋳造はアルミニウム、マグネシウム、亜鉛のような融解温度が低い非鉄金属にのみ使用されます。また、石膏に含まれる硫黄は鉄と反応するため、鉄系の材料の鋳造にも向いていません。

石膏鋳造の選び方

石膏鋳造の例

図2. 石膏鋳造の例

石膏鋳造ではダイカスト並みの美しい鋳肌や寸法精度が得られます。精密試作、多品種小ロット生産に適しており、追加注文においても即時対応が可能です。

精密かつ美しい鋳肌の製品を安価かつ短納期で製作できます。機械加工では製作が困難な薄肉や中空形状の造型も可能で、抜き勾配ゼロやアンダーカットも可能です。金型を用いる鋳造法とは異なり、金型のイニシャルコストがかからずに製品の改良が行えます。

製作費や納期を考慮すると、1~3個であれば切削加工による製作が適していますが、複数個以上の製作であれば石膏鋳造による製作が有利になります。ただし数百個以上となると製作費用や納期でダイカストによる製作が有利になります。

石膏の特性上、溶湯の冷却が徐冷となるため、ダイカスト製品と機械的性質が異なる場合がありますが、必要に応じて熱処理等を行うことで、ダイカスト製品と同等の機械的性質を得ることができます。

石膏鋳造のその他情報

石膏鋳造の工程

石膏鋳造の工程

図3. 石膏鋳造の工程

製品の図面データから鋳物素材形状の図面を作成し、ABS樹脂等でマスターモデルを製作します。

マスターモデルは、製品形状、もしくは製品の転写形状を作成します。製品形状のマスターモデルに対しては、シリコンで転写し、1次型を作成します。さらに1次型を転写し、2次型となるシリコン型を作成します。製品の転写形状のマスターモデルに対しては、シリコンで転写し、シリコン型を作成します。シリコン型に石膏を流し、固めたものが石膏型となります。

石膏型を乾燥後、溶融金属を流し込み鋳物を製作します。その後、型ばらし、仕上げ作業を行います。

本記事は石膏鋳造を行う有限会社モールドモデル様に監修を頂きました。

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