DMA測定

DMA測定とは

DMA測定 (英: Dynamic mechanical analysis) とは、材料の研究や特性の評価に使用される技術の一種です。

動的粘弾性測定とも呼ばれ、主に高分子材料の粘弾性挙動を研究する際に使用されます。高分子材料に振動荷重を周期的に与えて発生する応力や位相差で温度の関数として粘性と弾性を測定し、ガラス転移や緩和などのポリマーの運動や構造の情報が得られます。

引張り、圧縮、3点曲げのような複数の変形モードがあり、材料の機械的特性や熱的特性を評価可能です。例えば引張り変形をファイバー、フィルム、複合材料などに与えると弾性率や減衰特性を測定できます。一般的にTg (英: Glass transition temperature) はTMA (英: Thermomechanical Analysis) やDSC (英: Differential Scanning Calorimetry) などを用いて測定されますが、TMAやDSCのような熱分析では測定できないわずかな変化もDMA測定では観測されます。

DMA測定の使用用途

DMA測定は製品開発に必須です。製品開発では歪みや応力の依存性が強いため、使用状況と異なる条件のデータを材料特性として正確に反映できません。製品が十分な変位や荷重性能で実際に受ける負荷を再現できれば、樹脂やゴムを代表とする、フィルム、ガラス、金属、セラミック、カーボンのような幅広い材料で有用です。

具体的には高分子の構造と運動の情報が得られ、ガラス転移点、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接、温度依存性、周波数依存性などを評価できます。温度分散の測定により弾性率の温度依存性を分析でき、温度分散や周波数分散を測定するとガラス転移などの緩和現象を観測可能です。

DMA測定はゴムの反発性や振動減衰能の検討などに向いています。非晶性樹脂ではウィリアムズ・ランデル・フェリーの式 (英: Williams–Landel–Ferry Equation) により外挿を行います。WLF式とも略され、時間温度重ね合わせの原理の経験式です。実際に測定不可能な周波数によるデータも得られます。

DMA測定の原理

DMA測定は粘弾性体に振動を与える試験方法です。

一般的な材料は粘性や弾性と呼ばれる性質を有し、粘弾性体とは粘性と弾性の中間的な性質を持った材料や温度で粘性と弾性の両方の性質を持つ材料を指します。時間で振動する歪みや応力を試料に与えて生じる歪みや応力を観測し、力学的な性質を測定するため、温度の関数として振動荷重による試料の力学的な性質を調べる熱分析の技法です。

それに対して静的粘弾性測定は時間で変化しない一定の歪みや応力によって試料の歪みや応力の変化を観測する方法であり、温度の関数として静的粘弾性測定を行うとTMAに対応します。

例えば引張りモードのDMA測定では試料が測定ヘッドにクランプされ、ヒーターで加熱されて荷重発生部からプローブを通って、設定された測定条件での周波数による正弦波力として歪振幅が一定となる応力を与えています。

変位検出部は正弦波力で発生した試料の変形量を観測し、粘性率や弾性率などの粘弾性量を計算して温度や時間の関数として出力可能です。このとき応力は振動運動のため三角関数で表されますが、歪みは複素数で表示されます。複素数の式を計算すると試験片の弾性的要素と粘性的要素の応答に分解でき、周波数分散や温度分散で得られるデータから弾性率やTgを計算できます。

DMA測定の種類

高分子のDMA測定には主に2種類のモードがあり、周波数分散と温度分散です。動的応力-歪み試験 (英: Dynamic stress–strain studies) もありますが、あまり利用されません。

周波数分散は同じ温度で周波数を変化させる測定方法です。tan(δ)とE”のピークがガラス転移を表しますが、Tgは温度や歪み速度に影響して二次遷移が観察される場合があり、マクスウェルモデルに正弦波応力を適用すると実際の高分子材料は異なる分子運動によって複数の緩和時間を有する場合もあります。

温度分散は同じ周波数で温度を変える測定方法です。一般的な温度分散の試験では高分子のTgがtan(δ)のピークとして見られ、二次遷移も観測され、連鎖運動の温度依存性の活性化に起因します。半結晶性高分子では結晶と非晶質の部分で個別の遷移が見られ、ブレンドでは複数の遷移が観測できます。

DMA測定の選び方

試料の形状や大きさ以外にも試料に加わる力の種類によりモードを選べて、圧縮、引張り、3点曲げ、両持ち曲げ、せん断などの測定モードによって広範囲の材料に適用可能です。必要な試料の長さ、厚さ、幅、適した材料は異なります。例えば圧縮はゴムやスポンジに、引張りはフィルムや単一材料に、両持ち曲げは複合材や板に適しており、測定の目的、試験片の形状、弾性率に合わせて試料の粘弾性特性を測定可能です。

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