ゆるみ止めワッシャー

監修:株式会社ティ・カトウ

ゆるみ止めワッシャーとは

ゆるみ止めワッシャーとは、ボルト、ネジ、ナットのゆるみを防止し、2つの部材の結合を強固に保つ機能が強化された特殊なワッシャーの総称です。

ワッシャーは2つの部材をボルト (またはネジ) とナットを使って結合する際に、ボルトの頭側とナットの内側に挟み込む薄い金属の輪っかです。ワッシャにはボルトとナットのゆるみを防いだり、回転させて締め付けるボルトとナットの間に挟まれて、部材の表面に傷がつくのを防ぐ役割があります。

ゆるみ止めワッシャーにはノルトロックワッシャー、リブドロックワッシャー、スプリングワッシャー、ばね座金、皿ばね座金、ギザ付き皿ばね座金など、いくつかの種類があります。

ゆるみ止めワッシャーの使用用途

ゆるみ止めワッシャーの使用用途は、主に建設機械や車両などの、振動が激しい機器での使用が挙げられます。振動によってボルトやナットが緩むと故障や事故の原因になります。そこで、ノルトロックワッシャーやリブドロックワッシャーなどの高性能な緩み止めワッシャーを使用して回転緩みや非回転緩みを防ぎます。

また、電気機器や精密機器などの接触抵抗が重要な機器での使用も挙げられます。接触抵抗が高くなると電気的な信号や電流が伝わりにくくなります。そこで、リブドロックワッシャーやギザ付皿ばね座金などの緩み止めワッシャーを使用してボルトやナットの頭と母材に食い込ませ、接触面積を増やし接触抵抗を低減します。

また、屋外や湿気の多い環境で使用される機器にも使用されます。湿気による錆や腐食によってねじやナットが固着するとメンテナンスや交換が困難になります。そこで、ステンレス製やチタン製などの耐食性の高い緩み止めワッシャーを使用してボルトやナットと被締結物の間に隔たりを設け、錆や腐食を防ぎます。

ゆるみ止めワッシャーの原理

ボルト (またはネジ) とナットを使って結合された2つの部材において、その結合が緩む原因は大きく分けて2つあります。

1つ目は、激しい振動の連続によってボルトまたはナットが締め付け方向と逆方向に回転してしまうことによって起こる締め付けのゆるみです。2つ目は木材などの部材を結合していて、水分の蒸発などにより、部材が細ることによって発生する締め付けのゆるみです。

種類による原理は下記の通りです。

1. ノルトロックワッシャー

ノルトロックワッシャーは、ボルトやナットが締め付け方向と逆方向に回転して発生する締め付けの緩みを防ぐために使われます。2枚1組が向きあった形の構造を持つワッシャーです。2枚の外側の面は、細かいノコギリ状の歯がついており、この刃がボルトヘッドや相手材の表面に食い付き回転を防ぎます。

2枚のそれぞれの内側にもノコギリ形状にギザギザが刻まれています。そのため内側同士が接触する部分でもノコギリの刃が嚙み合います。この面の角度は、ボルトの心棒に刻まれているネジ山の角度よりも大きく作られており、ボルトが逆方向に回転するとこの2つのワッシャーの内側の面が滑って締め付け力が増加します。これにより、ボルトやナットは緩まなくなります。

2. リブドロックワッシャー

リブドロックワッシャーも、ボルトやナットの逆方向への回転によって発生する締め付けの緩みを防ぐためのワッシャーです。

リブドロックワッシャーは、両面にテーパー形状のリブ (うねり) を成形したワッシャーで、ボルトやナットの緩みを防ぐために使われます。リブがボルト座面と母材の被締結部に食い込むことで、ワッシャー自体が非常に硬くなり、反発作用で締め付け力を長時間維持します。

ばね座金は一巻きのばねのような形状をした金具です。ばねの反発力により、ボルトとナットが逆方向に回転するのを防ぐほか、部材の縮みから発生する緩みをある程度、防止する効果があり、平ワッシャとの組み合わせで使用されます。構造が簡単で安価ですが、効果は限定的です。

ギザ付き皿ばね座金はバネ作用に加えて、座金の表面に刻まれたリブが、ボルトや部材に食い込むことで、ばね座金よりも高い効果が期待できます。

木材などの、経時変化で部材が細ることによって発生するボルトとナットの緩みを防ぐためには、スプリングワッシャが使われます。スプリングワッシャには簡単な構造のものから、ボルトとナットの逆回転による緩みを防ぐ複合的なものまで、様々なものがあります。

ゆるみ止めワッシャーの選び方

ゆるみ止めワッシャーにも様々なタイプがあります。ゆるみ止めワッシャーの選択に際しては、想定されるゆるみの原因を、振動、部材の腐食、部材の縮みなどに分けて、それぞれの原因に対応できるタイプのものを選択します。

また、一般的には使用するねじや母材のサイズや種類に合わせて、ゆるみ止めワッシャーの内径や外径、材質や厚さを選びます。

さらに使用する環境や条件に合わせて、ゆるみ止めワッシャーの耐熱性や耐腐食性、耐振動性や耐久性を考慮して選択します。

ゆるみ止めワッシャーのその他情報

マジックリングについて

マジックリングとは、高機能ワッシャーのタイトニックに備わっている特殊効果でクサビ原理を応用したものです。

振動や木材の木痩せによって起こる緩みに対し、タイトニックのダンパースプリングがボルトを引寄せます。テーパー形状の特殊機構である「マジックリング」がクサビの原理でボルト締め付け、クサビ効果を維持したまま緩みや木痩せに追従し、強力な緩み止め効果を発揮します。

地震や車の振動、台風の風による揺れなどに対してはマッジクリングが振動や揺れを押し込む力に変え、増し締め効果を発揮します。タイトニックを木造構造物の接合物に使用することで、経年劣化による強度低下を抑えることが可能です。

本記事はゆるみ止めワッシャーを製造・販売する株式会社ティ・カトウ様に監修を頂きました。

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