WBGT

WBGTとは

WBGT (英: wet-bulb globe temperature) とは、酷暑環境下でのリスクの度合いを判断する際に使われる指標のことです。

湿球黒球温度や暑さ指数とも呼ばれます。人体の熱収支へ大きい影響を与える湿度、気温、輻射熱を考慮して、乾球温度 (Td) 、湿球温度 (Tw) 、黒球温度 (Tg) を用いて計算可能です。日射がある場合にはWBGT = 0.7Tw + 0.2Tg + 0.1Tdであり、屋内や日照していない場合にはWBGT = 0.7Tw + 0.3Tgと表されます。

乾球温度 (英: dry-bulb temperature) は、乾湿温度計の乾球側が示した温度です。湿球温度 (英: wet-bulb temperature) とは、気体と蒸気の物理的特徴を示す温度のことです。黒球温度は仮想黒体の球を使用して測定される温度で、グローブ温度 (英: globe temperature) とも呼ばれます。WBGT、Tg、Tw、Tdの単位は、すべて摂氏度 (°C) です。黒球温度や湿球温度は気流に影響するため、WBGTには気流も反映されています。

WBGTの使用用途

WBGTは熱中症の予防を目的として、アメリカで1954年に提案された指標です。WBGTの効果が認められて、米軍の訓練施設で導入されました。現在WBGTは運動環境や労働環境の指針として有効だと認められており、国際的にISOで規格化されています。

日本でもスポーツを中心として、活動環境での基準の一つとして採用されました。そしてスポーツだけでなく、職場や日常生活でも無理せず活動する指標として、広く公表されています。

毎年職場や日常生活の暑熱環境は問題視され、労働環境の改善や見直しが必要です。個人がこまめに塩分や水分を補給し、日頃から十分な睡眠や換気を心掛けることが重要です。このような現状把握のための指標として、WBGTが用いられています。WBGTの計算式に使用されている要素を理解しておけば、誰でもWBGT値を確認でき、最悪の事態を防いで、労働環境の現状把握に役立ちます。

WBGTの原理

日本スポーツ協会では熱中症予防運動指針を公表しています。

  • WBGTが21未満:熱中症の危険性は少ないです。ただし市民マラソンなどでは、熱中症が発生する可能性があります。
  • WBGTが21~25:熱中症が原因で死亡事故が起きる可能性が出てきます。熱中症の兆候に注意して、運動の合間に塩分や水分の補給が重要です。
  • WBGTが25~28:積極的に休憩を取り、とくに激しい運動では30分ごとに休憩を取る必要があります。
  • WBGTが28~31:熱中症の危険性が高く、体温が上昇する激しい運動は避けるべきです。10~20分ごとに休憩を取り、暑さに弱い人は運動の中止が推奨されています。
  • WBGTが31以上:運動は特別な場合を除いて原則中止し、子どもの場合には中止すべきです。

日本生気象学会では日常生活に関する指針を公表しています。

  • WBGTが25未満:危険性は少ないですが、激しい運動や重労働をした際には注意が必要です。
  • WBGTが25~28:激しい作業や運動で定期的に休息を取り入れることが推奨されています。
  • WBGTが28~31:室温に注意しながら、外出時に炎天下を避ける必要があります。
  • WBGTが31以上:高齢者は安静状態でも熱中症が発生する危険性が大きいです。涼しい室内に移動し、外出は避けるべきです。

WBGTの種類

WBGTは測定装置を用いて、乾球温度、湿球温度、黒球温度の、3種類の測定値に基づいて算出可能です。

1. 乾球温度

乾球温度は一般的な温度計を使用して、気温をそのまま観測します。

2. 湿球温度

湿球温度は、温度計の球部に水で湿ったガーゼを巻いて測定します。温度計の表面の水が蒸発する際の冷却熱が平衡に達したときの温度です。空気が乾いていると乾球温度との差が大きく、体から出る汗が蒸発するときに涼しさを感じます。

3. 黒球温度

黒球温度は、光の反射がほとんどない塗料を表面に塗った黒くて薄い銅板の球の中央に入れた温度計で観測します。直射日光に当たった状態で球の中の平衡温度を測定し、風が弱いときの日向の体感温度に近いです。

WBGTの選び方

WBGT値を知るためには、いくつかの方法があります。具体的には、環境省が公表している暑さ指数の実況を、WEB上で確認可能です。ただし日本地図をベースにして現在のWBGT値がわかりますが、現在地の正確な数値をピンポイントで知ることは困難です。

それに対してWBGTの計測器を使用すれば、WBGT値を自動換算でき、より正確な値を確認できます。手軽に使用できるハンディタイプだけでなく、予防指針に基づいたパネル付きタイプや値が見やすい大型表示付きタイプなどもあります。ただし黒球が付いていなければ、日射や輻射熱が計測できず、正確なWBGT値の計測ができません。

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