小信号ダイオードとは
小信号ダイオードとは、数百mA程度以下の比較的小さい電流で動作するダイオードのことです。
交流電流を直流電流に変換する整流やスイッチング、定電圧の生成などで使用されます。最もよく知られている用途は復調です。
復調とは、高周波の搬送波 (キャリア) 信号に低周波の音声信号を合成して発信しているラジオの電波を、ダイオードの低周波の信号のみを検出する特性を利用して、音声信号として音声出力装置に出力します。
小信号ダイオードの使用用途
小信号ダイオードは、電気機器や精密機器、ラジオの受信機などの特に高周波用途やスイッチング動作などの小信号を扱い電気的な動作を行う電子機器製品で使用されています。
選定の際には、その小信号動作ゆえに、ダイオードの最大定格や印加可能なバイアスに注意する必要があります。また、過大な電流が流れる可能性がある場合は、保護回路などを設置しダイオードに過大な電流が流れない様に回路を組まなければなりません。
小信号ダイオードの原理
小信号ダイオードの原理は、半導体ダイオードのPN接合界面や、金属と半導体の接合界面で生じる物理現象を用い、I-V特性の順方向と逆方向に発生する整流作用を利用した特徴的な回路動作にあります。
小電気的な回路の動作を、その代表的な機能であるスイッチング動作、整流回路、定電圧生成に分けて説明します。
1. スイッチング動作
ダイオードに電圧を印加すると、一定方向のみに電流が流れるという機能を用いて、スイッチとして利用します。順方向に電圧を印加すると電流が流れることをオン状態といい、逆方向は電圧を印加しても電流が流れないのでオフ状態の動作です。
ショットキーバリアダイオードやPINダイオードは小さな電流で高速のスイッチングが可能なので、比較的動作周波数の高いスイッチの機能のダイオードとして利用されます。
2. 整流回路
整流とは、ダイオードの一定方向にのみ電流が流れる性質を利用し、交流電流を直流電流に変換する回路動作のことです。通常は、マイナス方向を通さない半周波の電流になりますが、ダイオードをブリッジ回路で接続した場合は、交流電流のマイナス部分をプラスに変換し通電するので、全周波の直流電流に変換することが可能です。
3. 定電圧生成
ツェナーダイオードが良く用いられる回路動作です。ツェナーダイオードは、逆方向電流によらずある一定の範囲の定電圧を生み出すことのできるダイオードです。このダイオードにより定電圧を生成する回路用途や、また保護回路としても利用されています。
小信号ダイオードのその他情報
1. 小信号ダイオードの構造事例
小信号ダイオードの構造は、大きく分けて、プレーナー型とメサ型に分類できます。
プレーナー型
プレーナー型とは最もよく用いられている半導体構造で、シリコン半導体表面の酸化膜近傍に不純物の拡散層を形成し、ダイオード用のPN接合を作ります。回路的にICの様々な箇所に必要なダイオードを作りこむことが可能であり、小信号ダイオードのディスクリート用途以外にもICの内部の回路ブロックとして広く活用できる構造です。
メサ型
メサ型はPN接合を山のような縦型に形成する特徴を有し、特に構造上N型の箇所の面積を広くできるために逆方向耐圧を比較的大きくすることが可能です。その特徴を活かして、整流用の小信号ダイオードなどに多く用いられている構造です。
2. アレイ型の小信号ダイオード
小信号ダイオードをさまざまな回路で活用する場合には、複数のダイオードを用いることがあります。このような場合に適した製品が、アレイ型の小信号ダイオードです。
複数の小信号ダイオードを1つのパッケージに集積したものや、例えばツェナーダイオードとショットキーバリアダイオードを複合アレイ化した製品なども取り扱われています。回路面でダイオードのVf電圧を分けて用いたいときになどに便利な製品です。
参考文献
http://www.picfun.com/partdio.html
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/diodes/di_what4
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/diodes/di_what3
http://www.watacchi.com/denpa/vol-7.html