コレステロール

コレステロールとは

コレステロール (英: cholesterol) とは、ステロイド構造を持つ有機化合物です。

動物細胞の細胞膜の成分として不可欠です。また、ステロイドホルモン・性ホルモンの原料や、脂肪の吸収を促す胆汁酸の原料にもなります。血液に不溶であるため、リポタンパク質という粒子に含まれた形で運ばれる必要があります。リポタンパク質にはLDL (低密度リポタンパク質) とHDL (高密度リポタンパク質) があり、対応するコレステロールをそれぞれLDLコレステロール、HDLコレステロールと呼びます。

コレステロールの使用用途

コレステロールの主な使用用途は、化粧品・医薬品・工業品などの原料です。

化粧品や医薬品用途として安全な成分とされており、化粧品においてはクリームや乳液に、医薬品においては経口剤や外用剤 (抗炎症用の軟膏など) に使用されています。

コレステロールと脂肪酸のエステルは、液晶性を有します。これを工業品に応用したものが「コレステリック液晶」と呼ばれる液晶材料です。コレステリック液晶は、電子ペーパーの表示技術や温度センサーなどに利用されています。

コレステロールの性質

コレステロールはC27H46O (分子量: 386.65) で表される白色から淡黄色の結晶です。親油性を有し、水にほぼ不溶で融点は149℃です。呈色反応はサルコフスキー反応とリーベルマン-ブルヒァルト反応を見ることができます。

サルコフスキー反応は、コレステロールをクロロホルムに溶解し、濃硫酸を加えて混合します。するとクロロホルム層が赤色に変化し、硫酸層が黄色になって緑色の蛍光を発します。

リーベルマンブルヒァルト反応は、コレステロールをクロロホルムに溶解し、無水酢酸を数滴加えたのちに、濃硫酸数滴を加えて混合します。するとクロロホルム層がバラ色に変化し、最終的に緑色になります。

コレステロールの構造

コレステロールは、3つの六員環と1つの五員環が結合したステロイド骨格を有します。

ステロイド骨格の3位にヒドロキシ基をもつため、コレステロールはステロール (ステロイドアルコール) の一種です。

コレステロールのその他情報

1. 体内での合成経路

コレステロールは主に肝臓で、三大栄養素 (糖質、タンパク質、脂質) を原料として合成されます。三大栄養素が分解されてまず生成されるものがアセチルコエンザイムA (アセチルCoA) です。アセチルCoAは複数の酵素の働きで、メバロン酸に変わります。メバロン酸がいくつかの化学反応を経て生成するのが、ステロイド骨格を有するスクワレンです。スクワレンはさらに複数の化学反応を経て、最終的にコレステロールとなります。

2. 体内での吸収

食品から摂取したコレステロールは、小腸で吸収されます。小腸での吸収に関わるのは「コレステロールトランスポーター」と呼ばれるタンパク質です。

3. 体内での作用 (LDLコレステロール)

LDLコレステロールは、体の細胞や組織にコレステロールを運びます。何らかの異常によって血液中のLDLコレステロールが増加すると、血管壁にLDLコレステロールがたまり、酸化します。その結果引き起こされるのが、動脈硬化です。動脈硬化を促進することから、LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも呼ばれます。

4. 体内での作用 (HDLコレステロール)

HDLコレステロールの働きは、細胞で不要となったコレステロールや血管壁に沈着したコレステロールを回収し、肝臓へ戻すことです。動脈硬化を抑制することから、HDLコレステロールは「善玉コレステロール」とも呼ばれます。

5. 血中コレステロール値の基準

LDLコレステロールとHDLコレステロールの値が以下の基準を満たす場合には、脂質異常症の疑いがあるとされています。 (日本動脈硬化学会による)

  • LDLコレステロール: 140mg/dl以上
  • HDLコレステロール: 40mg/dl未満

参考文献
https://www.j-athero.org/jp/general/5_colqa/
https://cosmetic-ingredients.org/emulsion-stabilizer/531/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1996/49/10/49_10_1041/_pdf
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0103-0300.html
http://www.jmi.or.jp/qanda/bunrui3/q_045.html

キシロース

キシロースとは

キシロースの基本情報

図1. キシロースの基本情報

キシロース (英: Xylose) とは、ペントース (五炭糖) 及びアルドースに分類され、分子式C5H10O5で表される有機化合物です。

木糖とも呼ばれます。天然にはD体のみが存在しており、L体、DL体は有機化学合成によって作られる物質です。CAS登録番号は、D体が58-86-6、L体が609-06-3、DL体が41247-05-6です。

分子量150.13、融点144-145℃であり、常温では結晶性の白色固体です。強い甘味を呈するという特徴があります。水溶性が高く、水への溶解度は568 g/L (25°C) です。また、エタノール及びアセトンにはほとんど溶けません。密度は1.53g/mLです。

ヘミセルロースの構成成分として、植物界に多く存在しています。トウモロコシの芯や藁などの加水分解によって得ることができます。

キシロースの使用用途

キシロースは、甘味料として食品添加物に用いられたり、キシリトールの原料として利用されたりする物質です。

食品添加物としては、メイラード反応による着色性がD-グルコースなどに比べて高いという特徴があります。メイラード反応とは、タンパク質やアミノ酸と糖類が反応して褐色になる反応です。この特徴により、キシロースはかまぼこなどの発色やフレーバーの強化・矯臭などの目的で加工食品に利用されています。

また、消化管機能検査に利用されることもあります。キシロースは、ヒトでは小腸上部で促進拡散によって吸収された後、尿中に排泄されます。そのため、キシロースを経口投与した後に尿中のキシロース濃度を測定することで、小腸の吸収試験を行うことができます。 糖尿病患者の甘味料に利用される物質でもあります。

キシロースの性質

キシロースに関連する物質

図2. キシロースに関連する物質

キシロースは、還元反応によってキシリトールとなるほか、分解によってフルフラールを生じます。また、生体内ではキシロースイソメラーゼの働きによってキシルロースに変化する物質です。

通常の保管条件では安定ですが、高温と直射日光は避けるべきとされます。強酸化剤とは反応するため、混触危険物質となっています。

キシロースの構造

キシロースのエナンチオマー

図3. キシロースのエナンチオマー

ペントースには3つの不斉炭素原子が存在し、そこに結合するヒドロキシ基の向きによって糖の種類が区別されます。アルデヒド基の炭素原子を1番、その隣を2番というように番号をつけると、2番、3番、4番が不斉炭素原子です。2番と4番に結合したヒドロキシ基が同じ向き、3番のヒドロキシ基が逆の向きであるペントースが、キシロースです。 

キシロースの中には、2、4番ともに右向きのものと、左向きのものの2種類があります。糖質のD, L型表記の規則に従い、キシロースもカルボニル基を上方に書いたとき、下から2番目の炭素のヒドロキシ基が右方についたものをD型、左方についたものをL型と区別して定義されます。一般に天然に存在する糖類と同様、天然のキシロースもD型です。

キシロースの種類

キシロースは、食品添加物原料や研究開発用試薬製品として販売されています。食品添加物原料としてのキシロースは、D-キシロースです。

研究開発用試薬製品には、D-(+)-キシロース、L-(-)-キシロース、DL-キシロースなどの種類があります。10mg、25g、500g、1kgなど、様々な容量で提供されています。通常、室温で取り扱い可能な試薬製品です。

キシロースのその他情報

自然界におけるキシロース

自然界においては、キシロースは多糖類であるキシランや、糖タンパク質の構成分子として植物に含まれます。カエデ、サクラなどの木材や、竹、とうもろこしの外皮で特に顕著です。

動物ではプロテオグリカンの構成成分として、コンドロイチン硫酸類、ヘパリンなどの糖鎖の還元末端に結合しており、タンパク質中のセリンやスレオニンと結合しています。

生体内での多糖類への取込みは、まずUDPグルクロン酸の脱炭酸によってUDPキシロースが生成し、このUDPキシロースがキシロシルトランスフェラーゼによって糖鎖や多糖に組み込まれることで起きています。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/sds/sial/x1500/