出庫警報システム

監修:オプテックス株式会社

出庫警報システムとは

出庫警報システムとは、駐車場などから車両が道路に出ることを周囲に知らせるシステムのことです。

例えば駐車場から車両が道路へ出ようとする場合、一般道路であれば歩道を横切らなければなりません。歩行者の安全を守るため、出庫警報システムによって車両が歩道を通過しようとしていることを伝えることによって、事故の発生を予防することができます。交通量の多い道路であれば、車両同士の接触事故を防ぐ役割も担います。

出庫警報システムは駐車場を管理する、車路管理システムの一つです。車路管理システムには出庫警報システム以外に、駐車場が満車になったことを知らせる満車管理システムや、駐車場を利用している車の台数を知らせる在車管理システム、車を駐車場の空きスペースなどに誘導する場内誘導システムなどがあります。

出庫警報システムの使用用途

出庫警報システムは、主に駐車場から車両が出ようとしていることを、周囲の人や通行中の車両に知らせるために設置されます。設置される場所の多くは駐車場ですが、駐車場が設置されている場所は店舗や商業施設、マンション、病院、公共施設、地下駐車場などです。工場で大型トレーラーが多く入出庫するゲートにおいても、出庫警報システムが設置されることがあります。

道路への出入りが多い施設においては、周囲の通行人や他の車との接触事故を減らすためにも、出庫警報システムを設置しておくことが安全上有効な手段の一つです。一方で大規模な土木、建築工事現場では出庫警報システムの設置は時間とコストの面から不向きと考えられます。多くは誘導員による安全管理が行われています。

出庫警報システムの原理

出庫警報システムは、大きく3つの要素で構成されています。まず車両の接近を検知するセンサー、センサーが検知した信号から警報を発するか否かを判断する制御装置やシステムの電源装置、そして車両の出庫を知らせる表示として出庫注意灯や回転灯があります。

出庫警報システムはセンサーの種類や出入り口の幅、車線数などによって種類がありますが、いずれの場合でも3つの構成要素によって成り立っているシステムです。

出庫管理システムの種類

出庫管理システムの種類として、車両の接近や通過を検知するセンサーの種類で説明します。

ループコイル

ループコイルは車両を検知するセンサーとして、多く使われています。ループコイルは車両の金属を検知するセンサーであり、道路にコイルを埋め込んで設置するものです。道路の表面から5~10cmほどの深さに、1~4周ほどの電線をコイル状に埋め込み、電流を流します。するとコイルに磁界が発生し、車両が近づくことによってインダクタンスが変化するため、インダクタンスの変化量にある閾値を設けておくことによって、車両の通過が検知できます。

ループコイルは人や動物を検知することはなく、雨や雪などによる環境変化に対しても信頼性や耐久性が高いセンサーです。ループコイルが発生する磁界は微弱なため、人体への影響もありません。

赤外線ビームセンサー

赤外線ビームセンサーは、赤外線の投光器と受光器を設置しておき、車両が赤外線ビームを遮断することによって検知が行われます。車両の進行方向に2列の赤外線ビームセンサーを設置しておけば、遮断順によって車両の進行方向が分かり、出庫する場合に警報を発することができます。

マイクロ波センサー

マイクロ波センサーはマイクロ波を送信し、対象物によって反射された電波との周波数の差分を取ることによって、物体の検知や移動速度が検出できるセンサーです。マイクロ波センサーにも検知方式による違いがあり、出庫警報システムにおいてはマイクロ波FMCWセンサーや、マイクロ波ドップラーセンサーなどが用いられています。

本記事は出庫警報システムを製造・販売するオプテックス株式会社様に監修を頂きました。

オプテックス株式会社の会社概要はこちら

硬爪

硬爪とは

硬爪とは、主に旋盤で被削材となるワークを旋盤のチャックに固定するための治工具の一つです。硬爪と同じ役割を果たすものに生爪がありますが、目的に応じて使い分けられるものです。

硬爪も生爪も旋盤のチャックに取り付けられるものであり、多くは3つセットで使われます。旋盤のチャックには油圧や空気圧を利用するパワーチャックと、手動のスクロールチャックがありますが、硬爪も生爪もどちらにも利用されます。

硬爪は生爪に比べて硬いのが特徴です。硬さが高いために摩耗しにくく、繰り返しの使用に対しても高い耐久性があります。一方で生爪は被削材の形状に合わせて、成形加工を施してから使用するものです。事前に成形することによって被削材をより確実に固定できるようになるため、精度の高い加工に向いています。逆に硬爪はあまり精度を必要としない、粗加工に用いられる爪です。

硬爪は、オニ爪やハードジョーという名称で呼ばれることもあります。

硬爪の使用用途

硬爪は主に汎用旋盤などの工作機械で加工をする際に、ワークをチャックに固定するために使用されます。爪がワークと接してねじ締結などによって固定されることによって、ワークが加工できるようになります。旋盤のようにワークが回転する場合、硬爪は円周上120°間隔で3つセットで使用されるのが一般的です。

また硬爪は、加工精度をあまり必要としない粗加工時に使用されます。硬爪は硬くて耐久性がある一方で、生爪のようなワーク形状に合わせた成形加工を施すことを前提にはしていません。そのためワークを点接触で固定する場合が多く、固定力の強さにおいては成形された生爪に劣ります。また爪が硬いため、ワークとの接点に傷や凹みなどを生じさせてしまう可能性もあるので注意が必要です。

硬爪は汎用旋盤で多く用いられますが、NC旋盤、マシニングセンタ、ボール盤、フライス加工において使用されることもあります。

硬爪の特徴

硬爪の特徴は頑丈であることから、何度でも繰り返し使用できることです。通常は靱性のある合金鋼を熱処理することによって、硬さを高くしています。

硬爪は表面が加工されていない黒皮付きのワークを旋盤などで切削加工する際にも適しています。また生爪のようにワークに合わせた事前の成形をすることもありません。

逆に硬爪ではワークと点接触になることが多く、高い加工精度を要求される加工には向いていません。硬爪は硬さが高いことから、ワークを固定する際に強い力でクランプしてしまうと、ワークに傷や凹みを生じさせてしまう可能性もあります。

硬爪の選び方

硬爪は汎用旋盤などには、標準で付属していることが多い治工具です。また硬爪は生爪同様に旋盤に使用されているチェックに合わせた製品から選ぶことができます。チェックメーカーに合わせて、寸法が異なる複数の製品から選べるようになっているのが一般的です。また多くは1セット3つで販売されています。

硬爪は同じチェックメーカーのものでも、形状によってチェック把握範囲が設定されており、チェックできる外径や内径の寸法が定められています。また最高使用回転数にも注意が必要です。硬爪は旋盤で用いられる際には、硬爪自体も回転するため遠心力が発生します。遠心力によってワークの把握力も低下するため、定められた最高使用回転数以下で使用することが安全上、とても重要です。最高回転数以外には、最大静的把握力、ハンドルトルクも定められています。ハンドルトルクは硬爪の把握力を発生させるものであり、適切なトルクで締め付ける必要があります。

また同じチェックメーカーであっても使用できるチェックが指定されている場合もあるので、事前に確認してから選ぶことが大切です。

沈砂槽

監修:日本エンヂニヤ株式会社

沈砂槽とは

沈砂槽とは、河川からの取水や汚水処理において、水の中に含まれる砂などの異物を除去することを目的とした水槽のことです。大規模な下水処理施設や公共施設に設置される下水処理においては、複数の池や水槽を組み合わせた工程が組まれていますが、沈砂池や沈砂槽という工程が組み込まれています。いずれの場合においても、処理工程の比較的早い段階で行われる処理です。

本稿で扱う沈砂槽も同様の役割を担うものであり、それぞれの用途に適したサイズや形状のものが製品化されています。

沈砂槽の使用用途

沈砂槽が用いられるのは、主に以下の3つの場面です。

1 つ目に河川や湖沼から取水する際に、砂や小石などを除去するために用いられます。山間部などの河川から取水したい場合で、かつ取水場所に沈砂池のような施設が設置できない状況は、沈砂槽が用いられるケースの一つです。

2 つ目に下水処理です。私たちのまちに整備されている上下水道では地域ごとに集合した下水処理施設で処理されますが、特に下水から異物を除去する必要がある場合に使用されます。

3 つ目に、工場などで用いられる工業用水で処理が必要な場合に、沈砂槽が設置されます。工業用水に異物が多く含まれることによって他の設備に悪影響を及ぼしたり環境を汚染する恐れがある場合に、沈砂槽を適切に設置することが大切です。

また特殊な事例に特化した製品として、マンホールから地下クロージャーを開けて作業する際に溜まっている水をポンプで汲み上げ、異物を除去して水のみを下水道に流すことができる製品もあります。

沈砂槽の原理

沈砂槽で異物を除去できるのは、液体中において液体よりも比重の大きいものが下に沈むという自然現象によるものです。逆にいうと沈砂槽で除去できるのは、水よりも比重が大きいものに限られます。

比重が水に近く僅かに大きい場合には、水の流れによって異物もなかなか沈まずに水中に漂うことがあります。そこで沈砂槽では水の流速を少なくし、異物を沈みやすくしているのも沈砂槽の特徴の一つです。

水と異物の分離を確実にするために、水槽内に仕切りを設けた製品もあります。水面よりも低い高さの仕切り板を設けることによって、水面から離れた異物を沈砂槽の排水口に流れないようにしたり、V字形状のノッチを設けた仕切り板を設置できる製品もあります。

仕切り板の設置は垂直だけでなく、傾斜板にすることによって、より微細な異物が除去できる製品も販売されています。

沈砂槽の構造

沈砂槽は概ね水を蓄える本体となる水槽に、処理水が入る取水口、異物が除去された処理水が排水される排水口、水槽内に設置される仕切り板やノッチ板で構成されているのが一般的です。

取水口は製品によっては特に設けられておらず、ホースなどで流入させるタイプもあります。取水口がある場合、多くは水槽の高い位置に設置されています。

一方で排水口は水槽の低い位置に設けられています。排水口は低い位置に設定されていることによって、水槽内の水が少なくなっても排水することが可能です。製品によってはゴム栓によって塞ぐことができる製品もあります。

沈砂槽のその他情報

本稿で扱っている沈砂槽は定常的に設置して使用するものではなく、移動して使用できることを特徴とした製品を対象にしています。そこで持ち運びできることを特徴とした製品においては、本体をポリカーボネートなどの樹脂にすることで軽量化を図ったり、トラックなどの荷台に乗せやすいサイズで設計されているのも移動を前提とした沈砂槽の特徴の一つです。沈砂槽では本体となる水槽の容積によって処理能力も変わるため、複数のサイズの製品を用意しているメーカーもあります。

沈砂槽は複雑な構造や機構を用いることなく、比重の大きいものが沈むという物理現象のみを利用することで、異物が除去できる信頼性の高い製品です。

本記事は沈砂槽を製造・販売する日本エンヂニヤ株式会社様に監修を頂きました。

日本エンヂニヤ株式会社の会社概要はこちら

緊急遮断弁

監修:日本エンヂニヤ株式会社

緊急遮断弁とは

緊急遮断弁とは、水道水や工業用水、液体の燃料やガスなどを貯蔵するタンクに、保安装備として取り付けられる安全装置の一つです。

タンクの供給先にある配管などが事故や災害などによって損傷した場合、タンク内の流体が意図せず大量に流出してしまう事故につながりかねません。緊急遮断弁は供給先の配管などに異常が発生したり、異常が生じる可能性があると判断された際に流体の配管への供給を遮断することによって、事故や災害の二次被害が発生するのを防ぐ装置です。

緊急遮断弁は政省令などによって、特に交官庁や公共施設などには設置の基準や性能などの要求が定められています。また民間の商業施設や共同住宅などにも設置が拡大している製品です。

緊急遮断弁の使用用途

緊急遮断弁は大きく、水を貯蔵するタンクに取り付けられるもの、液体燃料を扱うタンクに取り付けられるもの、ガスを貯蔵するタンクに取り付けられるものがあります。

水を扱う場合には貯水槽に取り付けられます。地震などの災害や事故などによって給水配管などが損傷すると、貯水槽に蓄えられた水が大量に流出するのを防止するのが目的です。なお緊急遮断弁が設置される貯水槽にはいくつかの種類がありますが、受水槽はタンクが地下に設置されるもの、高置水槽は建物の屋上などに設置されるタンク、貯湯槽は水を加熱する機能を有したものを言います。

液体燃料を扱う場合には、燃料供給ラインやガソリンスタンドのガソリンや軽油タンクなどに取り付けられ、ガスを扱う場合には、ガスタンクや供給ラインなどに設置されます。いずれも燃料が予期せず流出し、火災が発生するのを防ぐ役割を果たすものです。

緊急遮断弁の原理

緊急遮断弁の原理として、緊急を検知する仕組みと作動する動力源について説明します。

緊急を検知する仕組みにはいくつかありますが、例えば自ら加速度センサーを備え、設定された加速度が検出された際に作動するもの、パイロット圧を発生させておき、異常によって流量が増大し、異常な差圧が生じた際に遮断が作動するものなどが主流です。他には流量をモニターしながら異常な流量が生じたことを検知するもの、複数の方式を用いてかつ、それらをすべて満たした際に作動させるもの、いずれかの条件で作動させる場合などの判定条件を設定できる製品もあります。

弁の遮断動作には電気を用いるもの以外に、機械式のものは例えばゼンマイによる弾性力を利用することで、電源がなくても作動できるものもあります。

緊急遮断弁の選び方

緊急遮断弁を選ぶ際には、まず扱う流体の種類で選ぶことから始めるのが一般的です。生活用水や工業用水などの水を扱うもの、ガソリンや軽油といった液体燃料を扱うもの、ガスを扱うものによって選ぶべき製品が変わってきます。

次に上述の原理でも挙げた、緊急の検知方法と遮断弁動作の動力源について確認が必要です。地震による災害を防ぐ目的の製品であれば、揺れを検知する加速度センサーが緊急遮断弁の本体についているものもあれば、本体とは別に制御盤などに感震器が内蔵されているものもあります。

機械的に揺れを検知するタイプでは、緊急遮断弁本体に異常を検知する機構が設けられていることが一般的です。圧力やバネの弾性を利用した機械式は電源が不要なだけでなく、信頼性の面からも安心して用いることができます。

また緊急遮断弁を選ぶ上で、緊急遮断が行われた後の復帰方法についても確認しておくことが大切です。せっかく異常を検出して遮断できたとしても、復帰時に意図せずに弁が解放されてしまっては、二次災害につながりません。十分に安全が確認された上で復帰できるよう、用途に応じて製品の仕様を確認することが重要です。

 

本記事は緊急遮断弁を製造・販売する日本エンヂニヤ株式会社様に監修を頂きました。

日本エンヂニヤ株式会社の会社概要はこちら