スプライン

スプラインとは

スプライン

スプラインとは、円筒形状の外径に歯車状の凹凸の溝をつけたスプライン軸と、穴部の内側にスプライン軸と組み合わせられる溝を設けたスリーブとを嵌合させることによって、2つの部品を一体化させる嵌合構造のことです。

スプラインは調芯性に優れており、大きなトルクを伝達する機構部に使用されます。また、トルクを伝達しながら軸方向の変位を吸収することも可能です。なお、スプラインより細かい歯車形状のセレーションという嵌合構造もあります。

セレーションはスプラインと比較して、細軸や薄肉に使用する場合が多いです。また、軸とスリーブを組み合わせたときの回転方向のガタ量を少なくし、軸方向を変位せずにトルク伝達する場合にも使用します。

スプラインの使用用途

スプラインは、自動車や工作機械などの変速機構部や、動力伝達部に使用されています。自動車分野の具体的な使用用途は、FR方式の車のプロペラシャフト部などです。

軸方向のすべり機能によって、サスペンションの変位に追従するように、軸方向長さを変位させながら動力を伝達しています。FF方式の車でも、トランスアクスルとドライブシャフトとの嵌合に用いられています。

スプラインの軸とスリーブは、お互いに固定して使用する場合と、軸方向に摺動させながら使用する場合があります。摺動させる場合は、スプライン部に潤滑用のグリースを塗布して使用するケースが多いです。

そのほか、グリースの注入口を設けて、定期的に給脂して使用する場合もあります。

スプラインの原理

スプラインは、円周方向に対して直交する歯面によってトルクを伝達します。歯車の場合は、異なる中心軸を持つ2つの部品同士が、お互いの歯面を押し合うことによってトルクを伝達します。

また、回転方向はお互いに逆方向になり、回転数も歯車の数によって変化するのが特徴です。それに対して、スプラインの場合は、同じ中心軸を持つ軸とスリーブ部品がスプラインの歯面を介してトルクを伝達することによって、同じ回転軸上で同じ方向に回転動作をさせることが可能です。

スプラインの種類

スプラインは、歯形形状の中で中心軸を合わせる場所と鋼球を使ってトルクを伝達する構造によって、3つの種類に分類できます。

1. 角形スプライン

角形スプラインは、左右の歯面が平行な歯形のスプラインです。2つの部品の中心合わせ (センタリング) はスプライン形状の小径部分で行います。ただし、角形スプラインは製造が難しいことから、現在ではあまり使用されていません。

2. インボリュートスプライン

インボリュートスプライン は、左右の歯面がインボリュート曲線によって形成されたスプラインです。2つの部品の中心合わせは、歯面で行われます。なお、インボリュート曲線とは、ある円に巻きつけられた糸が弛まないように張りながらほどいた時、糸の端点が描く軌跡です。

この形状は歯車の噛み合いにおいて、歯車の位置に誤差があっても動力伝達への影響が少ないことや製造面でも優れていることから、工業製品には広く取り入れられています。インボリュートスプラインは、トルク伝達時に自動調心される、製造がしやすい、歯元部分の強度が高い、高いトルクも伝達可能などのメリットも多く、広く用いられています。

3. ボールスプライン

ボールスプラインは、特に軸方向の摺動性が求められる場合に使われるスプライン形状です。組み合わさる軸とスリーブの側面に3本程度の半月円溝を設け、できた空間に多数の鋼球を配置します。トルク伝達をしながら、同時に軸方向の変位も滑らかに摺動させることができます。

スプラインのその他情報

スプライン設計の注意点

スプライン軸の軸端形状やスリーブの相手取付け部の形状は、取り付けられる機械装置の形状にあわせて設計します。伝達すべきトルクが作用しても、スプライン形状が破損しないように、強度を考慮して設計します。

また、使用環境によっては、スリーブのスプライン軸挿入部にダストシールなどの設計が必要です。ダストシールによって一定期間、充満されたグリースを保持し、外部より異物が入り込まないようにすることで、スプラインの摩耗を抑制したり、スプラインがトルクを伝達する際に発生する異音などの発生を抑制したりすることができます。

参考文献
https://gijyutsu-keisan.com/mech/engineer/element/spline/spline_1.php
https://www.thk.com/?q=jp/node/6713

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