高周波ウェルダ

高周波ウェルダとは

高周波ウェルダとは、高周波誘電加熱で溶接するための装置です。

塩化ビニルナイロンなどの熱可塑性樹脂に適用します。高周波ウェルダを用いた溶接を溶着と呼び、他の外部加熱溶接法よりも溶着強度が高く仕上がりも美しいことが特徴です。

マイクロ波加熱と比較して高周波ウェルダでは一対の電極板で挟んで加熱を行うため、部分的かつ深い加熱を行うことができます。

高周波ウェルダの使用用途

高周波ウェルダは、シート状の素材をつなぎ合わせるために使用されます。高周波ウェルダの具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • テントやライフジャケット
  • 名刺ケースやブックカバー
  • 人工皮革によるバッグ
  • 調味料や歯磨き粉の外装

高周波ウェルダで使用できる素材は、その原理上限られています。ただし、縫い目や縫い代が無いため接着部の仕上がりが非常に美しい点から、美観を要求される製品で使用されます。

また、高い強度と均一な品質を達成できることから、テントのような気密性や防水性を確保するために縫製できない製品の製作に最適です。

高周波ウェルダの原理

高周波ウェルダは誘電加熱を行うことで、熱を発生させます。誘電加熱は誘電体材料を加熱する方法で、周波数が高い電圧を印可することで分子を揺さぶり摩擦熱を発生させます。

摩擦熱は分子内部で発生するため、素材の内部から均一に加熱可能な点が特徴です。ただし、上記原理の関係から塩化ビニルやポリエチレンなどの誘電体材料のみに適用可能な加熱方法です。

なお、高周波ウェルダに用いられる電圧周波数は3MHzの短波から30GHzのセンチ波に相当する周波数帯となっています高周波ウェルダは素材の凹凸による影響がでないように一定の圧力を加えつつ、溶着する素材を電極で挟んで高周波電圧を印可します。

素材は数秒間で120~130度の高温に達し、半液相状態になります。この状態で加熱をとめて圧力をかけたまま冷却すると、素材同士が混ざり合って接着される仕組みです。

高周波ウェルダのその他情報

1. 高周波ウェルダ加工

高周波ウェルダ加工は熱を外部から印加しないため、焦げ付きや溶けた樹脂の糸引きなどによる外観不具合が発生しないことが最大の特徴です。そのほか、溶着したい部分を電極となる金型で挟んで局所的に誘電加熱を行うため、周辺部分の変形・変色が起きないこともメリットとして挙げられます。。

溶接加工時に発煙せず、VCからの有害成分が発散しません。そのため、安全で環境に配慮した加工が可能です。

2. 高周波ウェルダで溶着する材料

高周波ウェルダでの加工に使用される主な材料は以下の通りです。

  • PVC (塩化ビニール)
    ビニールシートや人工皮革の材料として使用されます。柔らかく熱加工しやすいため、高周波ウェルダ加工では最も多く使用されている材料です。
  • TPU (熱可塑性ポリウレタン)
    ホースや台車のタイヤなど弾力を持たせる用途に広く使用されます。スマホのソフトケースでは高周波ウェルダ加工によって本体バンパーとカバーが溶着されています。
  • POF (ポリオレフィン)
    ポリエチレンやポリプロピレンなどがポリオレフィンの仲間です。高周波ウェルダによって袋状に成形され、マヨネーズなどの調味料や、歯磨き粉のチューブケースなどに活用されています。

3. 高周波ウェルダの周波数

加工する対象物の厚みや材質により印加する電力や周波数選定が必要です。一般には、ビニルのようなプラスチックシートの場合は40MHz~200MHz、熱硬化プラスチックの溶着には10MHz~50MHz付近の高周波磁界が使用されます。

さらに、電子レンジのマグネトロンで使われている2.45GHzも、高周波ウェルダや加熱用の高周波発信機で多く使用される周波数帯です。

4. 高周波ウェルダの価格

高周波ウェルダは一般的に頑丈な架台などに設置して使用します。したがって、大型の機器が多く、産業用途のでの利用がほとんどです。価格帯はサイズや出力容量によって幅広く、小型の製品は1,000,000円程度で購入可能な場合もあります。ブルーシートやテントシートのような大型シート用の設備になると、5,000,000~10,000,000円程度の製品も販売されています。

参考文献
http://www.vinita.co.jp/institute/radiofrequency/020080.html
https://www.honda-el.co.jp/hb/3_1.html

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