赤外線サーモグラフィーとは
赤外線サーモグラフィーは、赤外線量を熱エネルギーに換算して温度分布を可視化することができる赤外線カメラです。
温度計は基本的に点で温度を計測するのに対し、赤外線サーモグラフィーは面で温度測定ができるのが特徴です。そのため高速かつリアルタイムの可視化も可能です。
また物体から放出される赤外線を感知しているので、非接触で離れたところから測定を行えるというメリットがあります。
赤外線サーモグラフィーの使用用途
赤外線サーモグラフィーは、医療・産業分野で広く使用されます。
医療分野では、皮膚の表面温度を測定し、それをもとに血流の良し悪しを判断する目的で使われることがあります。近年では、イベント会場などで体温測定に使用されることも一般的です。
また、建築分野で欠陥部位の検出などに使われることもあります。例えば、ひび割れなどの欠陥部分に水がたまり、周囲よりも温度が低いことがあります。これを赤外線サーモグラフィーで検出すれば、建物の老朽化や欠陥部位を調べることが可能です。
赤外線サーモグラフィ―の原理
赤外線は熱を発するものからは必ず放出されます。このとき放射される赤外線量は、温度の四乗に比例しています。したがって、赤外線量をカメラによって検出すれば、赤外線源の温度を逆算的に求めることが可能です。
しかし、これはいわゆる黒体輻射のような理想的な赤外線の放射体の場合です。実際にはカメラ測定時の損失や画像センサーの量子収率によって誤差があるため、その補正を行う必要があります。
赤外線サーモグラフィーは赤外線を光として検出する方式と、熱線として検出する方式があります。
光として検出する場合は一般的なデジタルカメラと同様です。ただし、赤外線領域に感度を持つセンサーを用いています。
熱線として検出する場合、センサーが赤外線受光時における温度上昇に伴った抵抗値の変化から、それを電流値の変化として検出しています。
赤外線サーモグラフィ―のその他情報
1. 赤外線サーモグラフィーでの検温
2019年末の中国・武漢市で初めて確認された新型コロナウイルスが世界中で広がりました。その際は、感染症防止対策としてサーモグラフィーによる検温が重要な役割を果たしました。企業や店舗、公共施設、イベント会場の入館ゲートなどあらゆる箇所で検温が行われるようになりました。
赤外線サーモグラフィーでは熱画像ピクセルごとに合計で数千の温度変化を把握可能です。このため、赤外線サーモグラフィー1台で、数万個のスポット放射温度計での同時測定と同じ効果を発揮します。精度も高く、検査スピードを短縮することも可能です。
高度な顔認証や管理ソフトウェアを併用することで、高度な入館管理をサポートするAI認証端末の導入も進んでいます。
AI認証端末の特長は、ウォークスルーで検温し、異常体温を発見するとアラーム音で知らせることが可能です。体温測定は、非接触で0.4秒以内に体温を認識し、体温検出における測定精度は±0.3度程度です。また認証精度は30~50 cmの距離で顔や手の平を高速認証するほか、マスクを着用しているときでも可能です。
2. 赤外線サーモグラフィーのアプリ
スマートフォンに装着できる赤外線サーモグラフィーと専用アプリを連携させることで、簡単に熱を可視化させることができます。
AndroidのmicroUSBやiPhoneのLightningアダプターで装着します。業務用機器というイメージが強い赤外線サーモグラフィーが、アプリによって一般ユーザーも手軽に利用できます。
フリアーシステムズでは、無料の専用アプリFLIR ONE(フリアー ワン)を起動して熱画像を撮影可能です。特殊なカメラで読み込んだ長波赤外線情報と標準カメラの写真を組み合わせることにより、従来の業務用サーモグラフィーより鮮明な赤外線画像を撮ることができます。
このダブルカメラ構造によって、「温度」という情報をスマートフォン画面で確認できるようになりました。
参考文献
http://www.avio.co.jp/products/infrared/what-thermo.html
https://viewohre.co.jp/Views/Theory/AboutThermo.aspx
https://time-space.kddi.com/digicul-column/suguyaru/20170816/2075