かさ歯車

かさ歯車とは

かさ歯車

かさ歯車(英語:bevel gear)とは、円錐面上に歯を刻んだ歯車で、それぞれの軸が平行でなく角度がついている歯車を言います。回転軸の方向を変えて動力を伝達する場合に使用されます。

見た目が傘に見えることからかさ歯車と呼ばれています。歯の形により、すぐば(ストレート)かさ歯車、まがりば(スパイラル)かさ歯車、はすば(ヘリカル)かさ歯車、ゼロールかさ歯車、ハイポイドギアなどに分類されます。

かさ歯車に使用される材料は、S45Cなどの機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、SS400などの一般構造用圧延鋼材、及び鋳鉄、ステンレス鋼、非鉄金属、MCナイロン、ジュラコンなどです。

かさ歯車の使用用途

かさ歯車は、回転軸の方向を変えて動力を伝達するのに使用されます。すぐば、まがりば、はすばなどを使うかさ歯車は、両歯車の回転軸が交差します。交差する角度は、90°が一般的ですが、鋭角や鈍角の場合もあります。軸が交差しない歯車は、ハイポイドギアと呼ばれています。

身近な使用例は、手回しのコーヒーミルや手回しのハンドミキサー、ハンドドリルなどです。自動車分野ではディファレンシャルギヤ、また工作機械や印刷機械などでも用いられています。特に差動装置などでは非常に有用です。

ハイポイドギアは、複数の歯が同時にかみ合い、歯の滑りがある点がまがりばかさ歯車と異なっています。このため大トルクに耐え、騒音が小さい特徴があります。自動車や電車の駆動に多く使われます。

かさ歯車の原理

かさ歯車は互いに滑る事無く接する、ピッチ円錐面を持った歯車です。歯車はモジュール・歯数・減速比・材質・表面処理・軸穴形状・軸穴径・精度などで決まります。

すぐばかさ歯車は歯すじがまっすぐな形をしており、製作が比較的簡単です。減速比は1:5程度まで可能となっています。特に歯車の指定がない場合は、動力を伝達するかさ歯車として、一般的に使用されます。

まがりばかさ歯車は歯すじが曲線状になっていることが特徴です。歯に対する当たりの面積が大きいことから強度が高く、静かに回転し、効率も高い利点があります。ゼロールかさ歯車は、軸の交差ねじれが概ね0であるまがりばかさ歯車で、すぐばとまがりばの特徴を合わせ持つ歯車です。

歯車は動力や運動を正確に伝えることが可能ですが、原理上、騒音が発生します。騒音を小さくするためには、バックラッシュを適切にする・歯車の噛み合い率を増加させる・歯形を小型化させる・プラスチック製の歯車を使用する・潤滑を適正にするなどの対策が必要です。

歯の当たりをよくするために歯すじの方向に適当なふくらみを設けることがあります。これをクラウニングと呼びます。

かさ歯車の選び方

かさ歯車の選定時には、歯の強度及び歯面許容荷重を特に考慮します。歯の曲げ強さは、かみ合い伝達時に、歯元の強度から計算された歯の許容円周力を言います。歯のモジュールを大きくすることで大きくなります。

歯面許容荷重は、進行性ピッチングが発生しないように規定された円周力を言います。歯の接触面積で変わります。2つの円周力の内、小さい方の値に歯車のピッチ円半径を乗じて歯車の許容トルクとします。この値が実際に使用する設計トルクよりも大きくなるように選定します。メーカー技術資料に各歯車の特性が記載されています。

また、メーカーによっては、ホームページ上で使用条件を入力することで、条件に合った歯車をリストアップしてくれるものもあります。大まかな条件から仕様を絞り込む時に便利です。

かさ歯車のその他情報

かさ歯車の設計

かさ歯車を設計する際には、平歯車と違ってかみ合う歯車の歯数の組み合わせに制限があり、傘の角度などの寸法も異なるため、減速比や軸角度を仮決定し、歯車諸元を確認することが大切です。

形状と取付姿勢を仮決定した後、強度計算を行い、条件を満足しない場合は、モジュールを大きくして再度寸法計算からやり直します。歯車強度などのかみ合い計算は平歯車と近似することができます。負荷荷重が大きい時や、繰り返し荷重がかかる場合、長時間連続運転する場合などは、安全率を大きくとることで衝撃荷重や疲労に対するマージンを取ることができます。

材質選定では一般的に炭素鋼を使用し、焼き入れにより表面硬度を上げて使用しますが、用途によっては合金鋼などを使用し、焼き入れ硬度を上げているものもあります。焼き入れは一般的に歯面のみを高周波焼き入れし、それ以外の部分は調質します。

歯車の設計では、寸法、強度の計算以外にも、潤滑を考慮する必要があります。潤滑方式、給油方式を決定し、メンテナンスが容易に行えるように設計します。

参考文献
https://www.khkgears.co.jp/khk_products/Bevel.html
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/basic_guide/KHK372.html
https://www.khkgears.co.jp/khk_products/stock_gears_how_to_select.html

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