硬度測定器とは
硬度測定器とは、物質の硬さを測定するための装置です。
他の物体によって加えられる力が、曲げなのか、伸びなのか、ねじりなのか等、目的に応じて異なるため、硬さ (硬度) という一律の単位はありません。そのため、目的や用途に応じて硬度測定器を使い分けます。
違う硬度測定器の数値をそのまま比較はできませんが、硬度換算表を用いることで、ある程度は相対的に比較できるものもあります。
硬度測定器の使用用途
硬度測定器は、新製品の開発や、工業製品の品質管理に用いられます。試験対象ごとに管理すべき硬度が違うため、試験対象物に適した硬度測定器を用いる必要があります。
1. 製品の品質確認
製品が設計上の要件を満たす硬度があるかを確認するために使用されます。
2. 研究開発
新しい材料や処理方法を開発する際に、その効果を評価するために硬度測定器が使用されます。また、同種や異種の材料の比較を行い、測定された硬度から、特定の用途に最適な材料の選択が可能になります。
3. 不具合の原因解明
工業製品の故障原因の分析の一環として、故障部品の硬度測定を行い、硬度に起因する故障でないかの特定に使用されます。
硬度測定器の原理
それぞれの硬度測定器の測定原理は以下の通りです。
1. ブリネル硬度測定
球状の圧子を10~15秒サンプルに押しつけ、試験荷重F (N) 、圧子直径D (mm) 、くぼみの直径d (mm) から表面積S (mm2) を算出し、硬度を求めます。
ブリネル硬度 (HBS)
= 0.102 × (試験荷重F/くぼみ表面積S)
= (0.102 × 2F)/[πD(D-{(D2-d2)}0.5]
JIS Z 2243では圧子として超硬合金球を用いることが定められています。
2. ビッカース硬度測定
対面角136°のダイヤモンド四角錐圧子をサンプルに押しつけ、試験荷重F (N) 、くぼみの対角線長さd (mm) から表面積S (mm2) を算出し、硬度を求めます。
ビッカース硬度 (HV)
= 試験荷重F/くぼみ表面積S
= 2Fsin68°/d2 = 1.854 F/d2
試験方法はISO 6507およびJIS Z 2244にて定義されています。
3. ロックウェル硬度測定
試験片にダイヤモンド圧子を押し当てて、その際にできるくぼみの深さから硬度を算出する方式です。頂点角が120°の圧子を用いるものをHRC、薄板等をより弱い試験力で測定するHRA、ダイヤモンド圧子の代わりに鋼球を用いるHRBなどに分類されます。
くぼみの深さがサンプルの厚さの1/10以下となる荷重を選択する必要があります。なお、測定方法はJIS Z 2245によって定義されています。
4. ヌープ硬度測定
対稜角が172°30′と130°のダイヤモンド四角錘圧子をサンプルに押しつけ、試験荷重F (N) 、くぼみの長辺対角線d (mm) から求めた表面積S (mm2) から算出します。ビッカース硬度測定と同じ試験機を用います。
ヌープ硬度 (HK) = 14229F/d2
なお、測定方法はJISZ2251によって定義されています。
硬度測定器の種類
代表的な硬度測定器は、以下の通りです。
1. ブリネル硬度測定器
顕微鏡などの光学装置により測定します。他の測定器よりも高い荷重に対応しており (~3,000kg) 、表面が粗い大きなサンプルに適しています。
2. ビッカース硬度測定器
顕微鏡などの光学装置により測定します。ブリネル硬度測定では、同じ圧子を用いても試験荷重によって得られる硬度の値にバラツキがあるのに対し、ビッカース硬度測定では試験荷重の違いによる影響をほとんど無視できる点が優れています。
柔らかいサンプルから硬いサンプルまで幅広く測定可能で、特に歯科分野などの臨床検査に使用される場合が多いです。
3. ロックウェル硬度測定器
ブリネル測定器やビッカース測定器と異なり、光学装置なしで素早く測定できます。ダイヤモンド製の円錐圧子を主に使用しますが、軟質鋼や可鍛鋳鉄、銅合金やアルミニウム合金などの比較的柔らかいサンプルを測定する際には、鋼球または超硬合金球を使用します。主に、鉄鋼材料の測定に用いられています。
4. ヌープ硬度測定器
数g程度の軽い負荷の測定に適しており、セラミックなどの亀裂、コーティングの測定に用いられます。
硬度測定器のその他情報
1. 硬度測定のJIS規格
硬度試験は以下のJIS規格で規定されています。
- ブリネル硬さ試験: JIS B 7724
- ビッカース硬さ試験: JIS B 7725
- ロックウェル硬さ試験: JIS B 7726
また、被検体の材質によって、別途JIS規格が有ります。以下に記する材質は、独立したJIS規格があります。
- 自動車様ブレーキライニング
- チタン及びチタン合金
- 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム
- ガラス繊維強化プラスチック
- ファインセラミックス
2. ポータブル硬度測定器
スポンジ、ゴム、プラスチックの硬度測定にはハンディ (手持ち) タイプの物があります。また、簡易的な卓上型に比べて簡易的な測定となりますが、金属用のポータブル硬度測定器も有ります。測定方式は1種類で圧子も同じものを使い、換算で複数の硬度単位を表示します。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/44/10/44_10_722/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/75/10/75_10_1183/_pdf
https://www.struers.com/ja-JP/Knowledge/