磁選機とは
磁選機 (磁力選別機) とは、磁石によって対象物の中に含まれる金属類を取り除くための機器です。
磁石などを使用し、磁性物質を取り除きます。磁選機によって除去できる金属はスチール、ステンレスさらにはアルミニウムなど軽金属も含まれます。
数10ミリメートルから数マイクロメートル程度の微少な金属も除去可能です。
磁選機の使用用途
磁選機は、さまざまな産業分野において利用されます。代表的な使用用途は、鉄鋼業や鉱業における原料の選別です。
1. 鉄鋼業
鉄鋼業では、鉄鉱石やスクラップから鉄を分離するために使用されます。鉄鋼の製造プロセスでは純粋な鉄が必要なので、他の不純物を取り除く磁選機が重要な役割を果たします。
廃棄物やリサイクル素材中の磁性物質を取り除くためにも使用され、リサイクルプロセスの効率化や材料回収に寄与します。
2. 鉱業
鉱業では、鉱石や鉱砂中の磁性物質を分離するために使用されます。具体的には、鉄鉱石中の鉄分を取り除くときです。銅などの精錬業ではステンレスやアルミが有害な不純物となる場合があるため、磁選機によって排除します。
3. 食品・製菓・製紙・パルプ産業
食品・製菓・製紙・パルプ産業などでは、原材料内に混入した金属類を除去するために使用します。製造工程で微少金属が混入することもあるため、それらを除去して安全に製造するために必要不可欠な機器です。
4. セメント・飼料・肥料業
セメント・飼料・肥料業などでも、金属部品の除去を目的に使用されます。
磁選機の原理
磁選機の原理は比較的簡単で、磁性物質を引き寄せる磁力の作用を利用して非磁性物質との分離を行います。磁選機には、磁力を発生する磁石などが使用されます。
磁石は強力な磁場を生成し、磁性物質が引き寄せられます。磁性物質は磁力線に従って磁石に引き寄せられるため、磁選機の近くにある磁性物質は磁石に吸着します。
磁石の近くにある非磁性物質は、磁力に引き寄せられません。したがって、非磁性物質は磁選機内を通過することが可能です。このようにして、磁性物質と非磁性物質を分離することができます。
磁選機において磁力で引き寄せられた磁性物質は、回収や取り除くのための機構が用意されます。磁選機の回転ドラムやベルト上に付着した磁性物質は、圧縮空気などで取り除かれます。
磁選機の種類
磁選機には大きく分けてベルトコンベア式・吊り下げ式・ドラム式・湿式などの種類があります。
1. ベルトコンベア式
ベルトコンベア上に磁力体を配置し、物質を運搬しながら磁性物質を分離する装置です。ベルトコンベアは磁力体の上を通過するため、磁性物質は磁力体に付着して非磁性物質はベルトコンベア上を通過します。
ベルトコンベア式は、大量の物質を処理することができます。そのため、リサイクル産業や鉄鋼業などの高い生産性が要求される場面に適しています。
2. 吊り下げ式
吊り下げられた磁力体を使用して磁性物質を分離する装置です。磁力体はフレームや支持構造に取り付けられ、物質が通過する通路の近くに配置されます。磁性物質は磁力体に引き寄せられ、非磁性物質は通過します。
吊り下げ式はコンベアやパイプラインに組み込むことが可能です。そのため、既存のシステムに簡単に組み込んで利用することができます。
3. ドラム式
回転するドラム状の磁力体を使用して磁性物質を分離する装置です。物質はドラムに沿って通過し、磁性物質はドラムの表面に吸着します。一方、非磁性物質はドラムを通過して分離されます。ドラムの回転によって磁性物質は別の領域に移動し、回収または分離が行われます。
ドラムの表面に磁性物質が吸着するため、分離効果と効率が高い点が特徴です。
4. 湿式
液体環境中で使用される磁選機です。液体中に浮遊する磁性物質を分離するため、湿式の環境で運転されます。一般的には液体中に浮遊する磁性粒子をドラム状磁力体によって引き寄せて回収・分離します。
湿式環境では磁性物質が液体に沈降しやすく、回収率が高い場合があります。
参考文献
https://kenki-corporation.jp/2018/06/15/hanging-type-magnetic-separator/