駆動チェーンとは
駆動チェーンとは、距離が離れた回転軸に動力を伝達するために用いられるためのチェーンです。
駆動チェーンの多くは、金属製のローラチェーンが使われています。ローラチェーンではスプロケットと呼ばれる薄型の歯車と組み合わせることにより、入力軸からの動力を出力軸へと伝達する働きがあります。
駆動側と駆動される側のスプロケットの歯数を変えることによって、回転数を増やしたり減らしたりすることも可能です。なお、駆動チェーン以外には、工場などの生産ラインで製品を運ぶ搬送用チェーンなどがあります。
駆動チェーンの使用用途
駆動チェーンは、自転車やオートバイの車輪の駆動、自動車用エンジンやトランスファ、産業用機械などに用いられています。自転車用の駆動チェーンは、私たちの日常生活で最も身近な使用例です。
ロードバイクやマウンテンバイクといったスポーツ用自転車に使われる駆動チェーンは、単に動力伝達だけでなく、さまざまな変速に対応しなければなりません。私たちがペダルを漕いで駆動させるチェーンリングや、後輪には複数の歯数が異なるスプロケットが並んでおり、それぞれを掛け替えることによって複数の変速比を作り出します。
駆動チェーンは、掛け替えられえるスプロケットの位置によって左右に位置がズレるため、ガタが大きくなるように設計されているのが特徴です。自動車ではエンジンのタイミングチェーン・4輪駆動車のトランスファ (前後輪に駆動力を伝達するもの) ・バイクのトランスミッションー駆動輪間の動力伝達・チェンソーやフォークリフトのフォーク上昇時等に用いられています。
駆動チェーンの原理
駆動チェーンは、駆動するスプロケットの歯が駆動チェーンのローラを押してチェーンを引っ張ることによって、駆動される側のスプロケットに動力を伝達します。ローラはブッシュを介してピンで固定されており、ピンの両側に取り付けられているのがプレートです。
プレートにはもう1つのピン、ブッシュ、ローラがリンクしており、連続して動力を伝えています。このように駆動チェーンではチェーンを引っ張りながら、動力を伝達しています。
駆動チェーンの構造
駆動チェーンは大きくピン、ブッシュ、ローラ、プレートの4つの部品で構成されています。
1. ピン
ピンはスプロケットから動力を直接受けるローラを支え、プレート同士を連結しています。動力伝達時にはローラーとプレートとの間で大きなせん断応力に耐える強度が必要です。
2. ブッシュ
ブッシュはピンとローラとの摺動を滑らかにします。ローラがスプロケットと噛み合う際には、ローラとピンは強く押し付けられながら摺動しなければなりません。ブッシュはピンとローラの摩擦と摩耗を低減させる役割をになっています。
3. プレート
プレートはピンによって連結しており、動力伝達時には引っ張り荷重を受けながら動力を伝達する部品です。プレートには2種類あり、内プレートと外プレートが交互に並んでいます。チェーンを接続する際には、同じ種類のプレート同士は接続できず、必ず内プレートと外プレートで接続しなければなりません。
4. シールリング
一部の駆動チェーンにはシールリングがあり、ブッシュの潤滑を行うグリスを保持しているものがあります。
駆動チェーンのその他情報
1. 駆動チェーンの規格
駆動チェーンは、国内外の工業規格によって規格化されています。日本産業規格ではJIS B1801:2020 「伝達用ローラチェーン及びブシュチェーン」です。
サイズ表記にはインチ表式が用いられ、呼び番号では3桁の数字で表記されます。例えば、「1コマ間のピッチが5/8インチ・内側ピン幅が2.0/8インチ」の場合、チェーンサイズは「520」となります。
2. 駆動チェーン以外の動力伝達要素
駆動チェーン以外に動力を伝達するものとして、ゴムベルトや歯車、シャフトを用いたものがあります。しかし、駆動チェーンはこの中でも「信頼性」と「コスト」のバランスが比較的優れているため、自動車やオートバイのような日常生活で使用される製品に多く用いられる傾向にあります。
また、自動車用のCVT (無段変速機) で多く用いられているのは金属製ベルトですが、一部に金属製チェーンが採用されています。しかし、CVTに用いられるチェーンはローラチェーンではありません。
スプロケットの代わりにプーリーが組み合わされており、プーリーでピンを挟み込んで摩擦力で動力を伝達します。金属ベルトに比べて大きなトルクでも効率よく伝達できるのが特徴です。ただし、比較的ノイズが大きい傾向があるため、採用はごく一部に限られています。
参考文献
http://didmc.com/basic/
http://ns.did-daido.co.jp/documents/jp/catalog/dendou11.pdf
https://www.juntsu.co.jp/qa/qa2177.php