スプリンクラーとは
スプリンクラーとは、水源からホースやパイプで接続し、水圧で飛沫にした水を、広範囲に散布するための装置です。
肥料や農薬などを混合した溶液を散布できるタイプもあります。また、 一般的に屋外の地面に設置しますが、ビニルハウスや建物内では、天井に取り付けたり、吊り下げたりする製品など種類はさまざまです。
スプリンクラーの使用用途
スプリンクラーは、農作物や果樹、芝生、植栽、グリーンカーテンへの潅水、農薬散布、ビニルハウスや畜舎、建物や畜舎屋根への散水による冷却など幅広く利用されています。そのほか、スプリンクラーの起源である消防の分野、各種競技場や作業現場の粉塵防止、線路の融雪、漁業の撒き餌代わりなども使用用途の1つです。
スプリンクラーの特徴
長所
スプリンクラーの長所は、広い面積や斜面など移動が困難な場所でも、手間をかけずに散水をできることです。また、点滴灌漑には劣るとはいえ、雨や霧のような水滴にして、少量の水を効果的に潅水可能です。スプリンクラーを使用することによって、植物は水分を吸収しやすくなります。
短所
スプリンクラーの短所は、特に屋外だと風の影響を受けてしまうことです。また、場所によって散水量にムラが出てしまうことも短所として挙げられます。
スプリンクラーの種類
1. 散水方式による分類
回転式
360度回転して散水する全円型と、その一部のみに散水できる扇型があります。インパクト式は地上に設置し、水圧でアームがバタバタと動くタイプです。最も一般的で用途も広く、種類も豊富です。
ポップアップ式は芝生や道路の緑地帯、植栽などで使用され、土中に埋め込み設置します。稼働時のみ、水圧で持ち上がり散水し、低圧でも使えて、軽く小型、構造的にも単純で、故障が少ないという長所があります。レインガン式は大型競技場や工場など、広大な面積をカバーできる散水距離が特徴です。
その他、スプリンクラー内のボールが水流で動くボールドライブ式や、本体の中に組み込まれたピストンが回転し、インパクト式に比べ、均一に散水できる、ピストン式もあります。
首振り式
前後 (左右) に直線的に反復運動し、長方形に均一に散水できます。
噴水 (ミスト) 式
霧状の水を噴射し、芝生への散水や、涼しいミストシャワーに利用されます。
チューブ式
ホース全体に開いた等間隔の穴から、均一に散水するタイプの製品で、散水 (ドリップ) チューブとも呼ばれます。地面に直接置いて使います。
農業分野などで広く使用されています。散水範囲は幅1~3mですが、チューブがねじれていると、散水できないだけでなく、破損の原因にもなるため注意が必要です。また、耐久性が良いとは言えず、散水穴が劣化で広がってしまうこともあります。
2. 機能面・素材・付属品による分類
散水距離は、散水チューブの1メートル程度から大型レインガンでは25メートル以上と多岐に渡ります。圧力は0.3MPa以下の低圧から、0.4~0.7Mpaの高圧まであります。
地面と散水ノズルの角度は仰角と呼ばれ、農業分野で最も多様されるのは、23~27度です。樹木や屋根への散水では10度以下、逆に斜面に向かっての散水や、各種作業現場の粉塵防止では、40度以上の高仰角にすることもあります。また、可変仰角タイプもあります。
素材としては、耐久性に優れた金属と小型タイプに多い樹脂製が一般的です。樹脂製は金属よりも耐久面で劣りますが、エンジニアリングプラスチック製は金属製にも劣らない強度や耐久性があります。農業では、作物の高さに対応するため、ライザー管 (立ち上がり管) を接続することもあります。
スプリンクラーの選び方
スプリンクラーは、以下の手順で選ぶことが大切です。
- 散水場所の広さから何メートル水を飛ばすのかを算定します。
- スプリンクラーの散水距離に合った品を選び、適切な設置間隔を検討します。
- 散水に必要な水圧と毎分の水吐出し量、スプリンクラーの口径サイズを性能表を見て確認します。
- ポンプや配管、水源からの距離、予算などから、希望に合う設備を選びます。
スプリンクラーのカタログには性能表が表記されていますが、大型の設備を設置する場合は、業者に見積もり相談をすることも可能です。必要な水の量は、作物によって異なります。例えば苗栽培での場合、余り水勢の強い大量の水散布では、苗を痛めてしまうため注意が必要です。
何ヘクタールもあるような広い場所では、回転するインパクト式やポップアップ式で、散水距離20m以上の広範囲に散水できるものが便利です。家庭の花壇や小さな菜園では、散水距離5m以下の小型種か噴射式、あるいはチューブ式でも十分と言えます。また、ビニルハウスなど天井がある場合、天井に当たらないよう工夫したうえで使用します。
スプリンクラーは固定設置だけでなく、ワンタッチで取り外しができるタイプや、手で持つまたは車両などに設置して、移動しながら散水するタイプもあります。手動の要素が増えれば予算は少なくて済みますが、その分手間や時間はかかります。目的と予算に合うスプリンクラーを選ぶことが大切です。
スプリンクラーの使い方
スプリンクラーは設置の前に、破損やノズルの目詰まりは無いかを確認します。広範囲に設置する場合は、配置図を作成すると良いです。プリンクラーの目詰まりを防ぐため、水源とスプリンクラーの間に、フィルターを設置することが推奨されます。
また、水源に開栓をタイマー設定することで、自動散水が可能です。水に肥料などを混ぜる場合、液肥混入機をスプリンクラーと水源の間に設置します。さらに、水源からの水圧が高すぎる場合、減圧弁を挟んでスプリンクラーに接続することもあります。
水源からの水圧が十分強ければ、多くのスプリンクラーを一度に稼働できますが、水圧が低ければ部分的なスプリンクラー稼働で順次散水することになります。飛距離範囲内であっても、場所によって散水量には多少ムラがあることが多く、均一な散水量になるよう、配置には注意が必要です。
さらに、スプリンクラーは風の影響を受けるので、散水距離の約60-80%を有効散水距離として、スプリンクラーの配置間隔を決めます。使用後の閉栓では、水撃作用による破損を防ぐために、ゆっくりと栓を閉じることも重要です。