育苗マットとは
育苗マットとは、育苗培土の代わりに用いるマットのことです。
育苗マットの上に種を播いて使用します。苗の根張りがよく均一な培養台を作れるので、品質の安定化を図れます。
育苗マットの使用用途
育苗マットは、主に水稲の苗を育てるのに使用されます。そのため、水稲育苗マットや水稲マットと呼ぶこともあります。
そのほか、寒さや根の弱い野菜や園芸植物などを育てる際にも最適です。
育苗マットの特徴
育苗マットの素材は、木材繊維をはじめとし、ビニロン繊維製不織布、ケイ酸とカルシウムを主成分とした人造鉱物繊維など、各メーカーで素材が異なります。
いずれも軽量性・通気性・保湿性・透水性に優れているのが特徴です。また、育苗マットの表面に、チッソ・リン酸・カリの肥料成分が塗布されているタイプもあります。
長所
育苗マットを使用した場合、育苗培土使用時よりも全体の重量が数割軽くなるので、育苗箱運搬労力を格段に軽減できるほか、床土がない分だけ洗浄作業が楽になります。
育苗培土使用時と比べ、かん水作業の頻度が少ない点も長所の一つです。さらに、育苗ハウスの床面にシートを張って簡易なプールを作る「プール育苗」にすると、日々のかん水作業が軽減されます。
また、育苗マットは数年間の使用に耐久性があり、継続利用による経費削減にもつながります。
短所
育苗マットの短所は、苗の生育が若干遅れ気味になるケースや、使用中の機械では十分なかん水ができないことです。また、根張りが良くなりすぎる場合があるため、苗が育った育苗マットを育苗箱から剥がす際の作業性が若干低下したり、田植え機の爪の摩耗が早まったりする可能性もあります。
育苗マットの種類
育苗マットは、1枚または1シートと称します。育苗マットの色は白系で、形状は幅279mm×長さ579mmx厚さ13mmが一般的です。重量は140g前後が多くみられます。
見た目は平らなフラット型と、種が転がらないようなクリヌキ型があり、水稲栽培ではフラット型が多く用いられています。また、「十字」「X字」形状の切れ込みが入っているタイプや切れ込みがないタイプがあるので、作物の種類によって最適な形状を選定することが大切です。
育苗マットの使い方
- 育苗箱に1枚ずつ育苗マットをセットしたら、シャワーでムラなくたっぷりと水をかけます。
- 次に、準備しておいた種もみを慣行通りムラなく播きます。
- 床土に培土を使用する場合よりも、若干多めに覆土してください。
- 緑化期は、乾燥しないようにかん水します。硬化期は、天候や苗の生育状況を観察しながら、1~2日に1回、しっかりとかん水します。
- 移植時には根が張っているため、かん水して苗の滑りを良くしておきます。
- 育苗箱から育苗マットごと取り出し、田植え機にセットして田植えをします。
実際に使用する際は、育苗マットのメーカーによっては表裏があるので、間違えないようにセットする必要があります。また、育苗マットをセットする育苗箱は中苗用ではなく、穴が少ない稚苗用の方が向いています。
育苗マットのその他情報
1. ヒータータイプの育苗マット
育苗マットには、電源ヒーター付きで保温できる室内使用タイプもあります。野菜・植物・ハーブ・花の種や苗などを寒さから守り、安定した発芽や成長をサポートできるのが特徴です。
ヒーター付き育苗マットは、根の部分を室温プラス10~15度ほど温めることができ、若芽の凍死防止や寒さに弱い園芸植物を育てる際にも役立ちます。防水性があるので水に濡れても大丈夫ですが、水中に浸して使用することはできません。
2. 育苗マットの価格
水稲農家用としての育苗マットの価格一例を挙げると、人造鉱物繊維製・300枚入りが約5万円弱です。一般用の育苗マットの価格一例として、同じく人造鉱物繊維で作られたタイプの30枚入りであれば、4,000円程度で購入できます。
3. 育苗マットを購入する前の注意点
育苗培土から育苗マットに切り替える際は、現在使用中の育苗箱や機械が、購入予定の育苗マットに対応しているか確認することが大切です。不明な点がある場合は、農機具屋や普及指導員、販売店などに相談することをおすすめします。