精密減速機

精密減速機とは

精密減速機とは、モーターの回転速度を減速させて高精度な位置決めを可能にする機械部品です。

モーターは高速で回転する一方で、回転力であるトルクは小さいという特性を有します。そのため、大きな力が必要な場面では、モーターの回転数を落としてトルクを増幅させるための減速機が必要不可欠です。一般的な減速機は動力を伝達することが主目的ですが、精密減速機はそれに加えて正確に止まることを追求した製品です。

歯車と歯車の間の隙間であるバックラッシを極小に抑える設計がなされており、指令通りの角度でピタリと停止できる点が特徴です。バックラッシが大きいと、停止時に狙った位置から微妙にズレます。精密減速機はこの遊びを物理的に排除する機構を有するため、ミクロン単位の制御が求められる場合に有利です。 

精密減速機の使用用途

精密減速機は以下のような用途で使用します。

1. 産業用ロボット

代表的な用途は工場などで稼働する産業用ロボットの関節部分です。アーム型ロボットが重い部品を持ち上げ、指定された場所に正確に配置するためには強靭な力と繊細な動きの両立が求められます。ロボットの関節である軸部分に精密減速機を組み込むことで、狙った座標で正確に停止させます。

2. 工作機械

金属を加工するマシニングセンタなどの工作機械でも、精密減速機は多用されます。加工物を載せて回転させるテーブルや、自動で切削工具を交換する装置の駆動源として利用されるケースが多く見られます。精密減速機を採用することで切削時の負荷がかかっても位置がズレず、複雑な形状の部品も高精度に削り出します。

3. 半導体製造装置・医療機器

半導体の材料であるウエハを搬送するロボットや、患者の体内を検査するCTスキャナーの旋回駆動部などで活用されます。半導体製造装置では微細な回路パターンのズレを防ぐために振動を極限まで抑える必要があります。また、手術支援ロボットなどの医療機器では、医師の操作通りに器具が滑らかに動く必要があります。こうした高度な技術領域において、動きの正確さと静粛性を担保するために精密減速機が選定されます。