ヘリウム再凝縮装置とは
ヘリウム再凝縮装置とは、寒剤として利用される液体ヘリウムが気化したものを再度液体へ凝縮して再利用するための装置です。
液体ヘリウムは沸点-269℃であり、高い熱冷却性能と、非常に高い化学的安定性をもちます。低温を必要とする様々な理化学装置や産業装置の稼働の上で、不可欠の超低温寒剤です。一方で、国内消費のすべてを輸入に頼っているため、供給不安や価格高騰の問題が頻発しています。
ヘリウム再凝縮装置は、装置内などで気化した液体ヘリウムをGM冷凍機などの極低温冷凍機で冷却し、再度液化・回収する仕組みです。回収したヘリウムは利用中の機器へ自動的に再投入される仕組みとなっており、ロスなく再利用することができます。低温装置の安定稼働とランニングコストの削減に有効です。製品によって液化能力は様々ですが、概ね1日あたり1L~20Lの再凝縮能力を持ちます。
ヘリウム再凝縮装置の使用用途
1. NMR
NMR (核磁気共鳴装置) とは、磁場の中で原子の化学的環境 (近傍に存在する元素の種類、結合状態) を明らかにする分析装置です。超電導磁石を液体ヘリウムで冷却して稼働しており、有機化学・無機化学・物理化学の広い分野において無くてはならない装置です。
NMRは研究開発の非常に広い分野で利用されているため、ヘリウム再凝縮装置もNMRに対して最も多く利用されます。NMR専用のヘリウム再凝縮装置も様々なメーカーから販売されており、高効率で回収液体ヘリウムをNMRへ戻すことが可能です。NMRの安定稼働とランニングコスト削減に貢献します。
2. MRI
医療用MRIはNMRと同様の原理で超電導磁石を液体ヘリウムで冷却し、体内の水素原子の共鳴を画像化する画像診断装置です。筋肉、骨、内臓、血管など、様々な組織の画像を撮影することができ、腫瘍や炎症、脊髄疾患などの発見に役立ちます。
MRIの場合、外付け形のヘリウム再凝縮装置を利用する場合もありますが、MRIの装置自体にヘリウム再凝縮装置が組み込まれている場合も多いです。再凝縮装置によるヘリウム回収により、一度の液体ヘリウム補充で最長10年ほど装置の利用が可能になる場合もあります。
3. 超低温分野の研究・開発
液体ヘリウムは4K (4ケルビン) という他の寒剤にない超低温状態を作り出すことができるため、NMR以外にも様々な超低温分野の研究開発で利用されています。超電導磁石などを用いる様々な低温実験や、クライオスタット、希釈冷凍機、走査型プローブ顕微鏡 (STM) 、 ARPES などの各種低温実験装置などにヘリウム再凝縮装置を活用することが可能です。
装置から失われる液体ヘリウムを回収するだけでなく、ヘリウム保存デュワーからの回収・再投入にも用いられます。ガスボンベからの回収・再液化が可能な場合もあり、廃棄ヘリウムの削減に効果的に活用することができます。