DNAチップとは
DNAチップとは、数万から数百万のDNA断片を高密度に配置した微小な基板であり、遺伝子の発現解析や疾患の診断、個別化医療などに使用されるバイオテクノロジーのツールです。
主にガラスやシリコン基板上にDNAプローブを固定し、検体DNAとのハイブリダイゼーション反応を検出することで、遺伝子の発現パターンを解析します。
DNAチップは、遺伝子情報を短時間かつ少量の検体で取得できるため、多くの研究機関で活用されています。また、研究用途のほか、医療や食品、環境モニタリングなどの幅広い分野で活用されています。
DNAチップの使用用途
DNAチップは、短時間で遺伝子解析ができるツールとして、さまざまな分野で利用されています。以下に代表的な使用用途を紹介します。
1. 医療分野での疾患診断
DNAチップは、がんや遺伝性疾患の診断に活用されます。遺伝子の変異や発現を検出することで、病気へのかかりやすさや薬剤感受性を予測することが可能です。
例えば、乳がんや大腸がんのリスク評価では、DNAチップを用いた解析により、発症リスクを予測することが可能です。また、薬剤の効果を個人ごとに最適化するファーマコゲノミクスでは、DNAチップでの計測結果を基に適した薬剤を選定します。
2. 食品の検査
DNAチップは、食物アレルギーの検出や食品成分の評価をする際にも使用されます。食品に含まれているDNAを解析することで、食品が持つ機能性やアレルギー抑制効果などを解析することが可能です。
具体的にDNAチップは、遺伝子組換え作物の検出や、食肉の品種識別に活用されています。
3. 環境モニタリング
環境分野では、水質や土壌中の微生物の種類を特定するためにDNAチップが利用されます。DNAチップを活用すれば、迅速かつ簡単に外来種の生息調査や土壌汚染を実施できるため、環境分析の手段としても有効です。
例えば、外来種のDNAを検出できるDNAチップを利用して、河川やダムなどの環境水を調査すれば、外来種の分布状況や駆除状況を確認することができます。