トリエチルシラン

トリエチルシランとは

トリエチルシランとは、化学式(C2H5)3SiHであらわされる有機ケイ素化合物です。

外観は無色透明の液体であり、室温で液体のもっとも単純なトリアルキルシランの1つとして、有機合成用途に頻繁に用いられます。トリエチルシランの合成方法としては、Rochow法として知られる金属ケイ素と銅触媒を用いる反応によって、得られたクロロシランを原料とする方法が一般的です。

トリエチルシランは、消防法において第4類第一石非水に、安衛法において引火性の物に指定されています。

トリエチルシランの使用用途

トリエチルシランは、ヒドロシリル化やシリルエーテルの出発物質としての用途が挙げられますが、還元剤としての用途が最も知られています。トリエチルシランは他の還元剤と比較して安定性が高く安全であり、さまざまな官能基に対して用いることが可能です。

また、重金属を含まないため環境負荷が小さいという点も利点として挙げられます。トリエチルシランを用いた還元反応は、イオン機構、ラジカル機構のいずれの機構でも進行することが知られています。

さらに、酸性条件下でも安定なことから、アセタール、アルケン、アルデヒドやケトンなど、さまざまな化合物の還元剤として使用可能です。

トリエチルシランの性質

トリエチルシランは、分子量116.28g/mol、CAS番号617-86-7で表わされる無色透明の液体です。引火点−3℃、沸点108℃、自然発火温度250℃、密度0.73、適切な状況下においては安定であり、特別な反応性は報告されていません。

火花、裸火、静電放電を避け、酸化剤、酸、塩基、水、金属と接触させないように注意します。

トリエチルシランの使用用途

1. 安全性

GHSにおいて、物理化学的危険性の引火性液体 (区分2) 、健康に対する有害性の皮膚腐食性/刺激性 (区分2) 、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 (区分2A) に分類されます。環境に対する有害性は該当しません。

非常に引火性の高い液体および蒸気の発生、皮膚刺激および、強い眼刺激に特に注意が必要です。

2. 応急措置

吸引した場合は、空気の新鮮な場所に移動させ、呼吸しやすい姿勢で休息させます。皮膚に付着した場合は、直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぎ、多量の水と石鹸で洗います。

目に入った場合は、水で数分間注意深く洗い、コンタクトレンズを容易にはずせる場合は外し洗浄を続け、いずれも症状が続く場合は、医師の診断、手当てが必要です。

飲み込んだ場合は、直ちに口をすすぎ、気分が悪い場合は医師の診断、手当てを受けます。救助者はゴム手袋、密閉ゴーグルなどの保護具を着用します。

3. 取扱方法

作業場所は、密閉化した設備、または局所排気装置を設けます。また、取扱い場所の近くに洗眼、身体洗浄用シャワー等の設備を設ける必要があります。作業者は、防毒マスク、または簡易防毒マスク、保護手袋、保護眼鏡 (状況に応じて保護面) 、保護衣 (状況に応じて保護長靴) の着用が必要です。

熱、火花、裸火、高温体などの着火源から遠ざけ、作業場所は禁煙です。設備は必ず静電気対策を行い、防爆型を用います。取扱い後は、手や顔などをよく洗います。

4. 火災時の措置

消火時は、火災を拡大し危険な場合があるため、水を使用してはいけません。粉末、泡、二酸化炭素消火剤を使用して消火を行います。

トリエチルシランは、燃焼や高温により分解し、有毒なヒュームを発生する恐れがあるため、注意が必要です。特有の危険有害性物質として、炭素酸化物、ケイ素酸化物を発生させる危険性があります。

消火作業は、風上から行い、周囲の状況に応じた適切な消火方法を用い、消火活動を行う者は、必ず保護具を着用します。

5. 保管

保管容器は、不活性ガスを充填し、密栓して換気の良い冷暗所に保管します。また保管場所は、湿気、および酸化剤などの混触危険物質と離れた場所が適切です。

廃棄時は、地方条例や国内規制に従い、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に委託して処分を行います。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/sds/aldrich/467448

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